リーンカーネーション 小学4年に戻ったおれ

Seabolt

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天野さんと山田さん

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夏休みのある日のことだった。本当は青木たちと近くのプールに行く予定だったのだが、青木の家の都合ですることが無くなった。当然、夏休みの宿題ということで、一杯やることがあるんだけど、47歳の脳を持っている俺にしてみれば、難しい問題はなく、鉛筆で文字を書かないといけない量の多さに困っていたのだった。しかたなく、現代だったら考えられないような暑さの中、扇風機1台という非効率な部屋で俺は、妹たちの宿題を見ながら、自分のをやっていた。すると玄関から声がしてきた

「こんにちは~佐藤君いますか?」

3人の女子の声がしてきたのだった。直ぐに玄関に行くとソフトボールのユニフォームを着た3人の女の子がいた。山田さんと立川さんと天野さんの3人だった。そして、意外な言葉を放ってきたのだった。

「お願いします。バッティングを教えてください」


***

彼女達は、近々、市民大会に出ることになっている。市民大会とは、ソフト―ボールの各学区ごとの優勝校が代表となって戦うのだが、残念なことに、俺が所属していたチームは地区大会で敗北して出場できなかった。しかし、彼女達の池上フレンズは、女子の部で優勝していたのだ、しかも、エース山田さんが全ての試合を0点に抑えていたのだった。エースを中心とした守りのチーム、去年から課題である打力は、上がっていないと彼女達は言う。市民大会は去年1回戦で敗退、ちょっといいピッチャーに完封され負けた悔しさがあったのだ。そんな彼女たちからしてみれば、例えランニングホームランでもホームランを打った実績がある俺でさえ貴重な人材に見えていたに違いない。こうしてある秘密の条件で俺がコーチをすることになった。
まずは、キャッチボール・・・これは、問題ない。そして、彼女たちの素振りを見て、愕然となった。3人とも手の力のみで打とうとしているのだった。そう手でバットを回すだけだから大回りになって、スイングのスピードが全然ない。確かに、まぐれの一発はあるかもしれないが、これだと俺が見た感じヒットは打てそうになかった。これまでは、5,6年のバッターが主役で打ってきたらしいのだが、このままではいけないと思った、山田さんと天野さんが俺に聞いてみようと言う話になったらしい。

 さてと、さっきの秘密の約束というのは、一緒に市民プールに行くということであった。山田さんにとっては、清水の舞台から飛び降りる覚悟で言ったみたいだったのだ。そのことに対して何故かいち早く反応したのは、他ならぬ立川さんだった。

「麗美ちゃんとプールに行きたいですって!!あんた見たいなの麗美ちゃんが相手にする訳がありません!!」

 俺からは一切、一緒にプールに行こうなんて誘っていない。それまでの会話はこうだった。玄関で3人と話をしている俺、その後ろには、妹達が、見たことがないお姉ちゃん達を見て、妄想を始めていた。

「おにーちゃんの彼女?」

「ちがう!!あーもう!!話がややこしくなる。ただの同級生!!」

「あ・・そう・・・」

妹達はなんやかんや二人で話し込んでいる。そんな光景を彼女らは目の当たりにしている。

「わかったと思う、俺・・今・・・妹たちの面倒を見ているから、今日はちょっと無理なんだけど」

 現実的に、午前中は妹の宿題を手伝わないといけないと親からも言われてたのは事実で、青木達も宿題をやっていないことが親にばれて行けなくなったということだった。俺は、ちゃんと宿題をやっていたので、今日は行ける予定だったが、青木達の情報をどうやって共有していたのか、現代みたいに携帯がない昭和において精神年齢47歳の俺にとって、この当時の親たちの連絡網に恐怖を感じた。という訳で、俺は、妹たちの世話係をしている。

「そう・・・残念ね・・・でも、ちょっとだけでいいんだけど、お願い」

「お願いといわれても・・・」

そして、俺の耳元で山田さんが

「試合が終わったら、今度一緒にプールに行くから」

だけの話がさっきの立川さんがプールに行くっていったものだから、大騒ぎになったのは言うまでもない。当然、妹たちは、怒り出す。

「おにーちゃんだけずるい!!」

「お父さんにいいつけてやる!!」

そうだろう・・・そうだろう・・・立川さんも妹たちが騒ぎ出すことを予想だにしていなかったようで、早々に、

「私関係ありませんから」

そう言って、玄関から逃走していった。妹達が猛抗議の中、意外に冷静だったのは、山田さんと天野さんだった。何故か二人は、妹達に話しかけた。

「じゃあ、おねーさん達とあなた達、そして、佐藤君と5人で一緒に行こうか」

天野さんの言葉に、妹達が”わーい”と喜んだのは間違いなく、そこへ山田さんが

「私達3人で妹さんを見ると言えば、両親も納得すると思うんだけど」

その言葉が妹達を納得させたようだった。

「じゃぁ、お兄さん借りて行っていいかしら」

「「どうぞ、どうぞ、どうぞ」」

という訳で、俺は、学校のグラウンドにいる。しかも、問題を起こした立川さんは平然とその場にいたのだった。というより、彼女がいないと3人だと練習が出来ない。という訳で話はバッティングの練習にまで話が戻る。俺の目の前で、足を大きく開いて、手の力だけでバットを振っているスイングを終えた山田さんが

「どう?」

そう聞いてきたので、

「まず歩幅は肩幅くらいにする。そして、腰を回してからバットをだすんだ」

俺が言ったことが全く理解が出来ない山田さん。そこへ、立川さんが、

「何偉そうに言っているのよ、これでも麗美ちゃんはヒットは打っているのよ」

うるさいぞ!!帰ってやろうかと思っているとその事に気付いたのか山田さんが

「それより歩幅はこのくらい?」

そう言って歩幅を調整している。そんなちゃんと話を聞いてくれるという真摯な姿勢に俺自身としても帰る訳にも行かなかった。しかしだ。構えを教えるが上手く伝わらない。結局バットを持って構えて見本を見せようとした時だった。内股になった足を見て立川さんが笑った。

「男の癖に内股なんて、本当に打てるのかしら?私でも3振取れそうよ」

山田さんと天野さんは困惑している表情を浮かべていた。この時点で帰るという選択肢もあったけど、こいつ鬱陶しい、俺はバットで立川さんを指した。

「じゃ・・・お前が投げてみろよ」

俺の言葉に立川さんはムッとした表情で、マウンドへ向かった。山田さん曰く、彼女もピッチャーが出来るそうで、自分たちのチームでは3番手くらい、”じゃ2番は?”と聞くと天野さんだそうだ。3番手と言っても、他のチームだとエース級の実力だと山田さんは言っていた。

「投げるわよ」

彼女のフォームはウィンドミルで腕をグルリと回してボールを投げるフォームだ。シュット投げてきたボールは1,2,3のタイミングでバンとキャッチャーミットに収まった。

「手も足も出ないみたいね」

「まだ、1球目だろう」

すると2球目が投げられた1,2のタイミングでバットを振るとタイミングはドンピシャだ。後は、ボールの中心の少し下を叩くだけだ。

キン!!

バットに当たったボールは、ショートとサードの間くらいの位置を抜け、三塁線上にワンバウンドして転がって行った。

「うそ?」

俺の打球に驚いた立川はシュンとなっていた。

「あんなチビに打たれるなんて」

という訳で俺のバッティングコーチは続く、3人を構えさせるとまだ個人特有のフォームが残っていた。とりあえず、俺は、山田さんの指導から始めた。歩幅を肩幅くらいにしたけど、スイングはまだ、腕力に頼っている。仕方がないから、おれよりも大きい山田さんの背中から、手をまわして、バットの位置を押してるが、”何かがおかしい?”と思っていると腰より腕が先に言っているのだ。これを教えるには、まずバットの位置を決めて、俺は、山田さんの腰に手を当てた。そして、腰をまわし始めた。

「まず腰をまわすんだ・・・こうして」

それを見ていた立川は絶句して後で発狂したかのように激怒するのだが、腰を触った状態で一度腰をまわした。そして、バットを出すタイミングを言ってあげた。

「ここでバットを出すんだ」

「こう?」

すると山田さんのバットがスムーズになった。俺は、もう一度彼女の背中から手をまわして、バットを握った。そして、

「腰をまわして、この状態で、バットを出すとスイングが早くなるんだ」

これを数回繰り返して、今度は、一人でスイングさせると見違えるくらい早くなった

「本当だ!!」

喜んでいる山田さんをよそに立川さんがいきなり怒り出したのだ。

「麗美ちゃんに何してんのよ。このスケベ!!お尻触っていたでしょ!!」

怒っている立川さんをなだめる山田さんがぼそりと言った。

「いい子なんだけど、時々、変なところで切れるから大目に見てね」

そして、しばらくトスバッティングをした後、再び、立川さんが投げて数回打席に立ってもらった。体格が違うせいもあるのだろう、俺の場合とは違い。時折レフトオーバー位の打球が出ていた。そして、今度は、天野さんの番だ。山田さんのを見ていたこともあって、すんなりと教えることが出来た。

「お尻触っていいよ」

なんて、軽い冗談を言ったものだから本当に触ると軽く

「えっち・・」

そうは言っていたが楽しそうにしていた。こうして、俺のコーチが終わる頃、山田さんと天野さんは

「佐藤君、私達のボール打てる?」

「さっき打ったでしょ」

「あれは、立川さんのでしょ」

「ま・・・そうだけど、別にいいでしょ」

俺としては、そろそろ帰りたいと思っていたのだが、彼女たちはその俺の行動が自分達のボールは打てないと錯覚させてしまったようだ

「女の子のボール打てなかったら恥ずかしいからにげるの?」

「そうじゃないけど」

「じゃぁ・・・勝負しましょうよ」

こまったぞ、彼女たちは本気だ。二人とも地区予選ではヒットをほとんど打たれていないとか、それが自信に繋がっているに違いないのだが、

「やっぱ、別にいいんじゃない?無理に勝負しなくても」

「あ・・・逃げるんだ。女の子のボールが打てないと恥ずかしいから」

「そんなことないよ」

二人がニヤリと笑った。

「じゃ・・打てなかったらどうする?」

「どうするって・・・」

「私達たちの言うこと1日聞いてくれる?」

「1日は、厳しいな1回ならいいけど」

二人は顔を見合わせて頷いた。

「いいわ。じゃ・・勝負よ」

「ちょっと待ってよ。それじゃ、俺が打てたらどうする?」

「じゃあ~1回言うことを聞いてあげるわよ」

こうして、俺たちの間の契約が成立した。そして、勝負の時、ルールは簡単、彼女達が投げた3球の内1球ヒットを打った者が勝ちだ。という訳で、俺があっさりと勝ってしまった。
悔しかったのだろう、山田さんが俺のボールを打つとか言い出したが、さてどうしたものだろう。クラスから3番目にチビな俺が素直に直球を投げたところで打ち返しされる可能性が高いという訳で、これしかない。

「じゃ、投げるよ」

キャッチャーの天野さんに向かってボールを投げた。

「えっ?」

構えている山田さんはかなり驚いている。それもそうだろう、かなり山なりのボールを投げたのだ。ストライクゾーンの後ろ側をギリギリに通るくらいのボールだ。しかし、山田さんは、ボールと思ったに違いない。

「何よ、今の!!ボール球じゃない」

すると天野さんか山田さんに話をしている。

「ストライクゾーンギリで入ってるわよ」

「うそ」

「本当にストライクゾーンに入ってたわ」

釈然としない表情を浮かべていた山田さんはそのままバットを構えてた。

第2球目

同じボールを投げると辛うじて当ててきた。

第3球目

同じフォームで、ど真ん中に少し早めのボールを投げるとズバーンとボールはミットにおさまった。

「えっ?」

山田さんは驚いて叫んだ。

「騙したわね~!!」

「三振は三振だよー」

その時だった。キャッチャーをしていた天野さんが駆け寄って来た。そして、俺の手を取って

「すごい!!今の私に教えて!!ね!ね!お願い!」

こうして俺はもう少し練習に付き合うことになった。

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