DEEP BLUE OCEAN

鼓太朗

文字の大きさ
26 / 28
第五章 南洋大橋計画

大阪へ

しおりを挟む
日曜日。
海人と洋平は車で大阪に向かっていた。
店から高速をとばして2時間半。
大阪市内にある三波の会社の1階にあるカフェで待ち合わせだ。
普段着なれない白いカッターシャツに黒のパンツ姿の海人。
関西で一番高いビルが遠くに見えはじめた。
あのビルのとなり、16階建てのオフィスビルの13階が、三波の働くオフィスだと聞いている。
大阪に到着すると洋平と海人は車を停めると三波の働くオフィスビルに入った。
大通りに面したおしゃれなカフェ。
全面ガラス張りで外の光が全面に入ってくる。
海人の住む地域にはない雰囲気に少し尻込みしそうになる。
そんなカフェの窓際の席に久々に会う弟の姿はあった。

*****

「久しぶり。元気にしてた?」
海人よりも頭ひとつ小さい三波は立ち上がると海人たちに声をかける。
パリッとしたスーツ姿で、海人たちと同じようにくっきりとした顔立ち。
髪も嫌みではない程度にワックスできちんとセットされていていつの間にそうなったのか「都会の子」といったいでたちだ。
三波も30手前だが元々実年齢よりもかなり若く見える。
学生の頃は吹き出物や目立つ不健康そうな感じだったが今はそうでもない。

「三波も元気そうやな。」
洋平の言葉には少しトゲがある。
洋平のそんな態度にも気づいてか気づかずか、三波は気にする風もなく二人に席を薦める。
「早速だけれど、橋の件だよね。今はこんな感じで計画が進んでるよ。」
三波は目の前に資料を広げた。
カラーのイメージ画像はコンピューターで作り出したなんとも人工的な図だった。
「サンセットオーシャンライン。西側から最南端の岬の先っぽまで、一気に橋でわたる計画。これで岬までの時間はかなり短縮される。夕焼けの沈む海は絶景。地元の新名所ができるよ。」
三波はそう言うとペラペラと資料をめくって海人たちに説明した。
「海洋資源に影響があるやろ。」
洋平は不機嫌に反論する。
「海洋調査は済んでるよ。珊瑚群生にはひっかからずに進むルートを僕が考案したから珊瑚には影響はないはず。」
そう言うと計画経路の地図を見せた。
湾の真ん中にある中瀬崎の西側を迂回し、緩やかな弧を描くライン。
確かにこの辺りに珊瑚はいない。
ただ、この辺りは海人の好きなクラスアーチや憲章と泳ぎの練習に励んだ千畳丘などのポイントをまたぐ。
海の影響が全くないとは言いがたい。
洋平も自分のスマートフォンを出して内海のダイビングポイントの書かれた地図を出した。
「ここやここ(グラスアーチや千畳丘をさす)にはダイビングポイントがある。ここの生態系も全く安全とは言われへんやろ。」
他にもドンピシャではないがクマノミ王国やキンメモドキの大群が群れる「太陽が丘」と呼ばれるポイントがある場所もルートの線上近くにあった。
「国土交通省とも相談の上でこのルートを出したんやから問題はないと思う。海流まで考慮してのこのルートやから。」
三波はもちろん大丈夫という姿勢を崩さない。
「そやかって、ダイバーにとっての大切な場所か破壊されるのにはかわりないやろ。」
洋平がだんだんと熱くなるのを感じて海人も気が気ではない。
洋平は元々カッとなりやすい。
「じゃあそのダイバーとあの町に観光で来る人。どっちが需要があると思う?」
きっと周到な三波のことだ。
統計まで取って入念な調査をしているのだろう。
海人はため息をつく。
だがそんなもの言いが完全に洋平を切れさせた。
「お前な! 親父の遺した店がちょっとは心配やないんか?!」
洋平の語気が鋭く大きくなる。
しかし三波は臆することはなかった。
なんなら落ち着き払って笑顔を崩すともない。
「あの店がそんなに大事?」
仮面のような三波の笑顔は鋭い光を放って海人と洋平を見据えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

25年目の真実

yuzu
ミステリー
結婚して25年。娘1人、夫婦2人の3人家族で幸せ……の筈だった。 明かされた真実に戸惑いながらも、愛を取り戻す夫婦の話。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...