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第五章 南洋大橋計画
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日曜日。
海人と洋平は車で大阪に向かっていた。
店から高速をとばして2時間半。
大阪市内にある三波の会社の1階にあるカフェで待ち合わせだ。
普段着なれない白いカッターシャツに黒のパンツ姿の海人。
関西で一番高いビルが遠くに見えはじめた。
あのビルのとなり、16階建てのオフィスビルの13階が、三波の働くオフィスだと聞いている。
大阪に到着すると洋平と海人は車を停めると三波の働くオフィスビルに入った。
大通りに面したおしゃれなカフェ。
全面ガラス張りで外の光が全面に入ってくる。
海人の住む地域にはない雰囲気に少し尻込みしそうになる。
そんなカフェの窓際の席に久々に会う弟の姿はあった。
*****
「久しぶり。元気にしてた?」
海人よりも頭ひとつ小さい三波は立ち上がると海人たちに声をかける。
パリッとしたスーツ姿で、海人たちと同じようにくっきりとした顔立ち。
髪も嫌みではない程度にワックスできちんとセットされていていつの間にそうなったのか「都会の子」といったいでたちだ。
三波も30手前だが元々実年齢よりもかなり若く見える。
学生の頃は吹き出物や目立つ不健康そうな感じだったが今はそうでもない。
「三波も元気そうやな。」
洋平の言葉には少しトゲがある。
洋平のそんな態度にも気づいてか気づかずか、三波は気にする風もなく二人に席を薦める。
「早速だけれど、橋の件だよね。今はこんな感じで計画が進んでるよ。」
三波は目の前に資料を広げた。
カラーのイメージ画像はコンピューターで作り出したなんとも人工的な図だった。
「サンセットオーシャンライン。西側から最南端の岬の先っぽまで、一気に橋でわたる計画。これで岬までの時間はかなり短縮される。夕焼けの沈む海は絶景。地元の新名所ができるよ。」
三波はそう言うとペラペラと資料をめくって海人たちに説明した。
「海洋資源に影響があるやろ。」
洋平は不機嫌に反論する。
「海洋調査は済んでるよ。珊瑚群生にはひっかからずに進むルートを僕が考案したから珊瑚には影響はないはず。」
そう言うと計画経路の地図を見せた。
湾の真ん中にある中瀬崎の西側を迂回し、緩やかな弧を描くライン。
確かにこの辺りに珊瑚はいない。
ただ、この辺りは海人の好きなクラスアーチや憲章と泳ぎの練習に励んだ千畳丘などのポイントをまたぐ。
海の影響が全くないとは言いがたい。
洋平も自分のスマートフォンを出して内海のダイビングポイントの書かれた地図を出した。
「ここやここ(グラスアーチや千畳丘をさす)にはダイビングポイントがある。ここの生態系も全く安全とは言われへんやろ。」
他にもドンピシャではないがクマノミ王国やキンメモドキの大群が群れる「太陽が丘」と呼ばれるポイントがある場所もルートの線上近くにあった。
「国土交通省とも相談の上でこのルートを出したんやから問題はないと思う。海流まで考慮してのこのルートやから。」
三波はもちろん大丈夫という姿勢を崩さない。
「そやかって、ダイバーにとっての大切な場所か破壊されるのにはかわりないやろ。」
洋平がだんだんと熱くなるのを感じて海人も気が気ではない。
洋平は元々カッとなりやすい。
「じゃあそのダイバーとあの町に観光で来る人。どっちが需要があると思う?」
きっと周到な三波のことだ。
統計まで取って入念な調査をしているのだろう。
海人はため息をつく。
だがそんなもの言いが完全に洋平を切れさせた。
「お前な! 親父の遺した店がちょっとは心配やないんか?!」
洋平の語気が鋭く大きくなる。
しかし三波は臆することはなかった。
なんなら落ち着き払って笑顔を崩すともない。
「あの店がそんなに大事?」
仮面のような三波の笑顔は鋭い光を放って海人と洋平を見据えた。
海人と洋平は車で大阪に向かっていた。
店から高速をとばして2時間半。
大阪市内にある三波の会社の1階にあるカフェで待ち合わせだ。
普段着なれない白いカッターシャツに黒のパンツ姿の海人。
関西で一番高いビルが遠くに見えはじめた。
あのビルのとなり、16階建てのオフィスビルの13階が、三波の働くオフィスだと聞いている。
大阪に到着すると洋平と海人は車を停めると三波の働くオフィスビルに入った。
大通りに面したおしゃれなカフェ。
全面ガラス張りで外の光が全面に入ってくる。
海人の住む地域にはない雰囲気に少し尻込みしそうになる。
そんなカフェの窓際の席に久々に会う弟の姿はあった。
*****
「久しぶり。元気にしてた?」
海人よりも頭ひとつ小さい三波は立ち上がると海人たちに声をかける。
パリッとしたスーツ姿で、海人たちと同じようにくっきりとした顔立ち。
髪も嫌みではない程度にワックスできちんとセットされていていつの間にそうなったのか「都会の子」といったいでたちだ。
三波も30手前だが元々実年齢よりもかなり若く見える。
学生の頃は吹き出物や目立つ不健康そうな感じだったが今はそうでもない。
「三波も元気そうやな。」
洋平の言葉には少しトゲがある。
洋平のそんな態度にも気づいてか気づかずか、三波は気にする風もなく二人に席を薦める。
「早速だけれど、橋の件だよね。今はこんな感じで計画が進んでるよ。」
三波は目の前に資料を広げた。
カラーのイメージ画像はコンピューターで作り出したなんとも人工的な図だった。
「サンセットオーシャンライン。西側から最南端の岬の先っぽまで、一気に橋でわたる計画。これで岬までの時間はかなり短縮される。夕焼けの沈む海は絶景。地元の新名所ができるよ。」
三波はそう言うとペラペラと資料をめくって海人たちに説明した。
「海洋資源に影響があるやろ。」
洋平は不機嫌に反論する。
「海洋調査は済んでるよ。珊瑚群生にはひっかからずに進むルートを僕が考案したから珊瑚には影響はないはず。」
そう言うと計画経路の地図を見せた。
湾の真ん中にある中瀬崎の西側を迂回し、緩やかな弧を描くライン。
確かにこの辺りに珊瑚はいない。
ただ、この辺りは海人の好きなクラスアーチや憲章と泳ぎの練習に励んだ千畳丘などのポイントをまたぐ。
海の影響が全くないとは言いがたい。
洋平も自分のスマートフォンを出して内海のダイビングポイントの書かれた地図を出した。
「ここやここ(グラスアーチや千畳丘をさす)にはダイビングポイントがある。ここの生態系も全く安全とは言われへんやろ。」
他にもドンピシャではないがクマノミ王国やキンメモドキの大群が群れる「太陽が丘」と呼ばれるポイントがある場所もルートの線上近くにあった。
「国土交通省とも相談の上でこのルートを出したんやから問題はないと思う。海流まで考慮してのこのルートやから。」
三波はもちろん大丈夫という姿勢を崩さない。
「そやかって、ダイバーにとっての大切な場所か破壊されるのにはかわりないやろ。」
洋平がだんだんと熱くなるのを感じて海人も気が気ではない。
洋平は元々カッとなりやすい。
「じゃあそのダイバーとあの町に観光で来る人。どっちが需要があると思う?」
きっと周到な三波のことだ。
統計まで取って入念な調査をしているのだろう。
海人はため息をつく。
だがそんなもの言いが完全に洋平を切れさせた。
「お前な! 親父の遺した店がちょっとは心配やないんか?!」
洋平の語気が鋭く大きくなる。
しかし三波は臆することはなかった。
なんなら落ち着き払って笑顔を崩すともない。
「あの店がそんなに大事?」
仮面のような三波の笑顔は鋭い光を放って海人と洋平を見据えた。
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