Go to the Frontier(new)

鼓太朗

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第二章 アラベスク王国

クルトの誘い

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「はい?」
思わず声が裏返る。
レオンはクルトの言っていることの半分も理解できなかった。
そんな驚くレオンをクルトはおかしそうに見る。
「ホントに、見れば見るほどそっくりだ。なんなら俺の代わりに王子にならないか?」
そう言ってカラカラと笑う。
冗談なのは分かるが、宿屋のおばさんは「またそんなことを!」と呆れている。
にこにこ笑っている王子を見て、確かに目鼻立ちは似ているかもしれない。
レオンはぼんやりとそう思ったが、クルトの言葉を思い出してハッと我にかえる。
「いやいやいや。おっしゃってる意味がよくわからないのですが…」
レオンはちぎれるくらい手を振る。
王子?
従者?
影武者???
たくさんのワードが飛び出したが、何一つしっくりと来る答えはなくて混乱するレオン。
そんなレオンを面白そうにみながらクルトは続けた。
「言葉通りの意味。俺は5番目の王子。王位継承権もほぼ無いに等しいのに王宮に縛り付けられて飽き飽きしてるお気楽王子だ。なんなら町に出てのんびり暮らしたいんだ。君が王宮にいてくれたら、俺、町に出放題♪」
かなり軽いノリでクルトはとんでもないことを言っている。
「王子、また王様からお目玉をちょうだいなさいますわ」
宿屋のおばさんも笑ってたしなめるが、目の奥が笑っていない。
クルト王子なら本気でやりかねない。
そんな目をしている。
「いえ…あの…恐れながら王子様。僕たちはこういう事情で…」
レオンはアラベラでの出来事、さらに旅の目的を説明した。
アラベラを出た辺りではクルトはにやけた表情を引っ込めて真剣に聞いてくれた。
トクラの町での出来事の話になると、もう目は為政者の目になっていた。
顎に手を当てて真剣に思案している様子だった。
「そういうわけで、王子のお力には…」
レオンが恐縮するとクルトは、
「城の中にいれば宿やらなんやらの心配はいらなくなる。レオンたちに必要なのは情報だろ? この世界でどんなことが起こっているのか。ここは国の中心だ。どこより多くの情報を得られる。俺が町に出るときに何度か一緒に出ればなにか有力な情報を得られるかもしれない。それ以外は王宮で俺の代わりに留守番。そっちの大きい彼は兵士として雇う。そうすれば王宮内の兵士たちからなにか情報を得られるかも知れないし、俺たちの護衛として兵士に紛れ込めば、自然に街の内外を詮索できる。お互い悪い話じゃ無いと思うけど。」
クルトは勝手にどんどん話を進めていく。
ダンも呆気にとられて何も言えない。
もうさっきまでの軽い感じの王子に戻っている。
「どうせ街にいても仕事があるわけでもないだろうし、どこか当てがある訳じゃないんだろ?」
首をかしげるクルト王子にレオンたちは何も言えない。
た…確かに。
と、おずおずと頷くのが精一杯だった。
「父上だけにホントのこと話してさ。二人くらいなら紛れ込んでも全然問題ないし。どうかな?」
無邪気に笑うクルトに対してもはやレオンたちに拒否権はないようだった。
もちろん冗談で言っているわけでもないらしい。
「とりあえず父上にあってくれ。今から特に用事でもあるのか?」
有無も言わさないクルトに二人は首を振るしかない。
「よし!決まり!」
いざ、王宮へ!と、鼻息荒く二人の背を押すように宿を出た。
「荷物はあとで城の者に取りに来させるから! じゃ!」
クルトはおばさんに軽く挨拶をするとそのまま半ば連行するようにレオンとダンをアラベスク城へといざなった。
残されたおばさんは、嵐のように去っていく一団を最後まで見送ったが、一人になり静かになると、一人ため息をついた。
「やれやれ、またクルト王子は厄介事をしょいこんだもんだ」
そう呟いたが、そんなことレオンたちはおろか、クルトだって知らない。

*****

アラベスク王国の現国王はクラウド国王。
御歳55歳だが、どう見ても30歳過ぎにしか見えない。
父王であるグランベス国王が早世した関係で若くして王位を継承した。
兄王子はたくさんいたが皆早くにこの世を去り、繰り上げ当選のような形で王位に着いた。
聡明な良王として有名なクラウドは、斬新で進歩的な政治体制のもと、近隣の国との外交も含めて安定した国造りを実現した。
華王朝との和睦をはじめ、近隣諸国との様々な問題を解決に尽力たその功績は大きい。
若々しく端正な顔立ち、あれで13人の子持ちと来たらもはや詐欺ではないだろうかとも思える。
これはレオンもあとから聞いた国民の間に流れる噂だ。
王様は玉座でふんぞり返っているのが何となくイメージだが、クラウドは執務室を持ち、そこでまつりごとを行う。
「眠らない王」
これがクラウドの二つ名となっている。

彼には4人の王妃がいる。
クルトは第2王妃イライザの3番目の子として生まれた。
同じ母をもつ兄弟は姉が2人と妹が1人。13人兄弟全体では7番目の王子だ。
クラウド国王と第1王妃クララ女王との間にはクルトより年上の王子が3人の王子いるので、第2王妃から生まれたクルト自身に王位継承権はほぼないに等しい。

王位継承順で言うとまずは長男ヘンリー王子、25歳。
第1王妃クララ女王の長男で王位継承権は堂々の第1位。
聡明で武術にも秀でた文武両道のエリート王子。
色白で容姿端麗。
肩にかかるほどの濃紺の髪は緩くウェーブがかかり、瞳は髪と同じ濃紺、キリッとした目と見上げるような長身という、非の打ち所のないような完璧なイケメン王子だ。

その次が次男のフリード王子、24歳。
背丈はヘンリー王子とあまり変わらないが、こちらは筋肉質な武闘派で、将来は将軍志望。
黒髪短髪で、本当に同じ母親から生まれてきたのかがにわかには信じがたい容姿と体格をしているが、目はヘンリー王子によく似ていて瞳の色もヘンリーと同じ濃紺。
見た目の通り、がさつで優雅さはないが、裏表はなく、さっぱりした性格なのでこちらもヘンリー王子に負けないくらい民からは慕われている。

三男はジェームズ王子、19歳。
焦げ茶色の髪と瞳をした色白で小柄な病弱な王子。
1年のほとんどを自室で過ごしている。
生まれつき肺に障がいがあるようで、運動はおろか、王宮内の移動も困難なこともあるという。
読書家で頭がよく、穏やかな性格をしている。

第3王妃エストリア王妃の長男であるクリス王子も20歳なので18歳のクルトよりも年上の兄になる。
クリス王子は他の王子と比べて見た目も目立つ能力もない、地味で平凡な印象の王子だ。
いつもどこかオドオドしていて自信がなさげな様子が目立つ。

クルトよりも年上の王子はこの4人。
ほとんど継承権が無いに等しいクルトだが、クルトまでの5人が次期国王の候補と言われ、帝王学を中心とした王になる教育を受けている。
「兄貴たちは何だかギスギスしちゃってさ。やな感じ。俺なんかはなから王位なんて興味ないから、家族はもちろん、従者たちの中でも俺は変わり者みたいになってる。」
そう言ってクルトは豪快に笑う。
「でもそのおかげで俺は兄貴たちと逆にうまくやれてる。姉貴たちは元々同じ母親から生まれてきたこともあって兄弟って言うより仲間って感じかな。よく悪さをしてしかられたもんさ。まっ他にも兄弟はいるし、兄貴たちのことも追い追いもっと詳しく知ってもらうことになるが、もうそろそろ我が家だ。城について父上に会ったらちゃんと兄弟も紹介するよ。」
気がつくとレオンたちはメインストリートを抜け、巨大な吊り橋も渡り、城門の前まで来ていた。
ちなみにここまで王子は徒歩。
普通、王子ってどこに行くにも馬車とかに乗らないのか?
レオンは不思議に思ったが、のべつまくなし話しまくるクルトを止める術もないので聞けずにいた。
まぁ、さっきの話からもお忍び(もはや公然の秘密)だからそんなものを使わなかったのだろうとも推測できるので、レオンは何も言わなかった。

そうこうしている間に城門までやって来る。
「うわー!」
思わずレオンは声をあげてしまった。
大きい!
近くで見るとなおのこと立派な城に思わず声が漏れた。
目の前には白鳥城と呼ばれる真っ白なアラベスク城。
大陸の中心とも言われる巨大な城にレオンは圧倒された。
目の前にある鏡のような堀と池に映る姿は圧巻だった。
レオンは今までにも何度かマクベスに来てこの城を見たことはあったが、こんなに近くまで来たのは生まれて初めてだった。
クルトは城門を警備する兵士に軽く挨拶をすると、そのままずんずんと城の中へ入っていた。
クルトはもちろん、レオンたちまで顔パス。
大丈夫なのか?と少し不安に思いつつ、レオンたちも慌ててクルトの後を追った。
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