Go to the Frontier(new)

鼓太朗

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第二章 アラベスク王国

クラウド国王とレオンの部屋

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迷路のような城内を迷いなく歩くクルトに何とかついていくレオンたち。
立派な扉の前までやって来た。
ここはクラウド国王の執務室。
先に部屋に入ったクルトだったがほどなくして部屋の中に招き入れられた。
部屋に通されたレオンは、びっしりと壁を埋め尽くす大量の本と、奥の大きな仕事机に向かって大量の書類に目を通すをクラウド国王に見とれてしまった。
やや白髪交じりの濃い茶髪。
目尻に若干の歳を感じさせるが、肌艶はよく体格もがっしりとしている。
王を目の前にして、町の人たちの噂が頭をよぎる。
確かに詐欺だ。

「で、クルトが見つけてきた新しい従者というのは君か?」
ゆったりとした口調で書類から視線を上げたのクラウド王と対峙するレオンたち。
立ち上がると長身で俳優のように整った端正な顔立ちをレオンたちは真正面で見た。
レオンはおずおずと頷く。
街に到着して早々に国の最高権力者との対面。
我に返ったレオンはワンテンポ遅れたがサッと跪いて君主への礼を示す。
クラウドは「顔をあげて立ちなさい」といってレオンたちを立たせるとしげしげとレオンの顔を見た。
「確かにクルトに瓜二つだ。君の名前と出身は?」
にこやかに問うクラウド王にレオンは緊張する。
「アラベラから来ました。レオンと申します。」
少し足が震えた。
王の威厳というやつなのか。
直視するのも憚られるような、
それからレオンはアラベラでの出来事とこれからの話をした。 
王は黙って聞いていたが、やはり穏やかな笑顔で頷くと、
「よろしい。クルトは多少無茶なところがある。顔はそっくりだが君は穏やかで賢く信頼できる人間かと思う。クルトを頼むぞ。」
やはり威厳たっぷりにそう言った。
えっ!?
即採用?!
呆気にとられるレオンたち。
「なんだそれ。父上、信頼ないなぁ俺に。」
クルトは苦笑して言う。
「当たり前だ。不用意に街に出るなといつもいっていると言うのに少しも言うことを聞かない。お前は一国の王子なんだぞ?」
クラウドはため息をついて言った。
もう怒る気力はなく呆れたような表情でクルトを見ると視線をレオンに移した。
「また無理に引きずってきたんだろう。突然無礼なことをした息子の行動は謝る。クルトよ。お前には賢く芯のしっかりした従者が必要だと常々思っていたところだ。レオンはその点では適任かもしれない。そちらのダンもかなり筋骨粒々として頼りになりそうだ。よろしく頼むよ。」
ダンにも笑顔で頷きかけた。
ダンも恐縮して言葉がない。
しっかりしているのか?
レオンにクルトの従者が勤まるのか甚だ疑問だ。
それはダンも同じようで二人して放心状態で立ち尽くす。
「おい、行こうぜ」
クルトにそう言われるまで息をするのも忘れていた気がする。
執務室を出たレオンたちは、その時やっと地に足がついている感覚に。
そんなレオンたちをクルトはクスクス笑う。
「父上はそんな肩っ苦しくないだろ。それより、このあとレオンたちの部屋に案内するから。」
そう言うと階段をいくつか下り、また迷路のような城内を歩いた。

しばらく歩くと立派な扉の部屋の前に通された。
「ここが二人の部屋。中は四つ部屋があるから。」
そう言って扉を開けると中はやはり立派な装飾の扉が左右に2つずつ。
右手の奥がレオン、左手の奥がダンの部屋で、中にはすでに荷物がきれいにセッティングされている。
とは言えレオンの荷物は麻の大きな袋が1つだけだが。
「服はそっちにかけてあるのを好きなだけ着れば良い。サイズは問題ないと思う。俺の古着も混じってるけどごめんな。」
何と王子の服が入っているのか?
部屋に入ったところにあるチェストにはぎっしりと服が並んでいる。
「好きなのを選んでくれ。一応王子の従者ってことだから派手じゃなくても良いけれど小綺麗にしといてくれたら誰も文句は言わないと思う。落ち着いたら早速町に出ようぜ。二人を案内するって言ったら父上も文句は言わないだろうしな。」
いたずらっぽくクルトは笑うと部屋から出ていった。
一人になると急に緊張が解けて手近な椅子にしなだれこんだ。
何だかおかしなことになってきたな…。
これからどうなるんだ?
レオンは訳がわからなくなりながら高い天井を見上げた。

*****

「とりあえずマクベスには来たが…」
「まさかいきなり総元締めとの謁見が叶うとはね」
レオンの部屋にやって来たダンは手近にあった椅子に腰かける。
レオンもため息をついてダンの反対側に座った。
「クルト王子の近くにいれば色々と情報が入ってきそうだな」
ダンはいつもポジティブで前向きだ。
「ただ王子のいきなり従者なんて、話が飛躍しすぎて頭が追い付かないよ」
レオンは弱々しく笑い、ダンもそれに同意する。
「マクベスはまだアラベラやエスカみたいなことにはなってなさそうだな」
ダンがそう言ってぎこちない仕草でお茶を入れる。
大きな手でポットとティーカップを並べてお茶をできるだけ静かに注ぐ。
慣れない感じがなんだか面白い。
代われば良いのだがなんだか面白いのでそのまま見ているレオンも相当意地が悪い。
「にしても、クルト王子にそっくりだな。俺も本物を見るまで信じられなかったけど、ホントに背格好から声までそっくりだ」
甘い花の香りのするフレーバーティー。
その匂いを堪能しながら小さなティーカップでお茶を飲むダン。
何だかサイズ感がアンバランスでいちいち面白い。
そしてダンはたぶん気づいていないだろうが、このお茶、ルコルの紅茶だ。
気持ちが落ち着くから自由に飲んでOKだ、とクルトからは言われた。
レオンは匂いですぐに気づいた。
「そうだね」と言ってレオンも一口、口にふくむ。
砂糖とは違う甘味が口の中に広がり、気持ちが落ち着く。
「クルト王子にはこれからこの国のことを色々と聞かないとね。僕らはアラベスク王国の国民だけどまだまだこの国のことを知らなさすぎる」
レオンがそう言うと、ダンは頷きいた。
そして真剣な表情のまま、
「それにしてもこのお茶、うまいな。何杯でも行ける」
と言っておかわりをする。
レオンはずっこけそうになった。
ダンはまだこのお茶がルコルのお茶だと気づいていないようだ。
それはそうだろう。
植物の知識がちょっと無いときっとわからない。
そこで、レオンはちょっと意地悪く言ってみた。
「ちなみにさ。ダン。」
「ん?」
ハイペースでおかわりを繰り返し、ルコルのお茶を美味しそうに飲んでいたダンが何だ?と視線を上げた。
「これ、ルコルだよ?気づいてた?」
レオンがティーカップを掲げてそう言うと、ダンは盛大に吹き出した。
「うわっ!もぅ!汚いなぁ」
そう言って笑うレオン。
服についていないか一応確認して、テーブルを布で拭く。
ダンは口元を拭うとしげしげとティーカップを見た。
「これが、ルコル?」
匂いを嗅いでみたりもう一口飲んでみたり。
「そう、奴隷商人が使っていたやつ。何だかフワッとする感覚になるでしょ?お茶に入れて飲むと美味しくて身体にも良い薬だけれど、これを煮詰めると眠り薬、強烈な毒になる。薬草ってそう言うもんなんだよね」
レオンはティーカップをくるくると回しながら琥珀色の液体をぼんやり眺める。
「そぅなんだ」
ダンはそれ以上飲む気が失せてしまったのか、カップをソーサーに置く。
何だか悪いことしたかな。
レオンはそう思ったが、「そうそう、そう言えば」と話を続けた。
「これからのこと。どうしたもんなんだろうね。気になるところは奴隷商人の行方とルカの行方。」
レオンはこれからすることをまとめる。
「それからこの国がどういう状況なのかも」
ダンが付け加える。
そうだ。
アラベラやエスカがどういう状況かはクルトには簡単に伝えた。
さっきクルトとの別れ際に兵を派遣して調査に向かわせるという旨のことを言っていた。
そういえば、今からクルト王子について、街に出るんだった。
レオンは手早くティーセットを片付けると、着替えることにする。
チェストを開けると豪華な衣装。
着たこともないような高級品であろう服が所狭しと並んでいる。
「これから選べと…?」
着るものに無頓着なレオンは途方にくれた。
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