Go to the Frontier(new)

鼓太朗

文字の大きさ
51 / 57
第三章 ラプラドル島 前編

魔素

しおりを挟む
カルバンの歴史の教室を出ると、護身術の授業に向かうダンやパブロたちと別れ、魔法原理の授業を受けるために屋上庭園を通り過ぎてアルカマウラの4階の教室に向かった。
階段を登っていると、背後から不意に声をかけられた。
「あなた、新しくここに来た人だよね?」
振り返ると赤銅色のソバージュをひとまとめにした勝ち気そうな少女。
プリシラだ。
「今から魔法原理の授業に行くんだけど、あなたたちも?」
プリシラは物怖じすることなくレオンや周りのアンナたちを見る。
「うん。僕はレオン。最近ここに来たばかりの新入り。君は…プリシラだったよね?」
レオンも最近は新しい人と話すことに抵抗はなくなってきている。
元々は人見知りの激しい性格だったが、ここ最近は滝のように新しい出会いがあるのでそんなこともいってられなくなってきているのだ。
人って変わるものだなぁと、レオンはしみじみと感じている。
「どうも。プリシラです。私、ルーヴェ王国から来たの。よろしくね」
そう言ってにっこり笑う。
ルーヴェ王国はレオンのふるさと、アラベスクの南西側にある小さな国だ。
アラベスクと接する国境線以外は三方海に囲まれた南国の国だ。
領土として近隣の島々もたくさん領土に持っている。
ルーヴェの人は基本的に色黒で大柄な体格の人が多い。
色白で小柄なプリシラとはちょっとイメージに差異があった。
恐らくレオンやアンナと同年代か少し下という印象。
「私、ルーヴェで生まれ育ったけれど、両親ともにアラベスク人なの。私の両親は普通の"人"なのね。魔法使いになれるなんて嘘みたいだわ」
なるほど、そう言うことかとレオンは思った。
「故郷では私は異端児扱い。余所者の血が入ってる上に魔法使い。よくよく考えれば気味の悪いものよね。最近までよくそれを理解できなかったけど…」
プリシラは明るくそういうと、レオンを含む周りの人間を見回す。
「あなたたちは?」
そういうプリシラに慌てて自己紹介をする。
サラとアンナを紹介し、レオンは今までの経緯を手短に話した。
「そう。それは大変だったわね。この国のやり方ってちょっと強引すぎるから。でも、ここ、たぶんあなたが思ってるよりも良いところよ。ライモンダ先生の魔法の力は本当に凄い。たぶんあなたたちをカルバンの兵隊にするっていう言い方をしてると思うけど本当は…」
そう言いかけた時、教室に砂を巻き上げたようにライモンダ先生が現れた。
「さぁ、皆さん。魔法原理の授業を始めますよ」
そう言ったライモンダ先生。
移動中からのべつまくなし喋り続けたプリシラが思わずいいかけた言葉を飲み込むほどの威圧感。
有無を言わせない雰囲気にプリシラは口を開けたまま固まってしまった。

*****

ライモンダ先生は涼しい顔で受講者たちを見回した。
「それでは魔法原理の授業を始めます。私はこの授業を担当します。ライモンダです。さて、あなたたちにはこれから様々な魔法を伝授していきます。まぁ実際の魔法の習得は攻撃魔法などの授業にまわすとして、そもそも、魔法はどのような原理で発動されるかご存じですか?」
ライモンダはそう言うと30人ほどいる生徒たちを見回す。
魔法の原理。
授業の冠にもなっていることだが、そもそもレオンは魔法が使えない(今のところ)。
レオンは見当もつかない。
「身体を流れる魔素の放出によって発動されます」
一番前に座る分厚い眼鏡をかけた小さな男の子がピンと手を挙げるとそのままの姿勢でそう言った。
サラよりも更に小柄だが、よく見ると彼は耳がとんがっている。
エルフ族の少年だ。
肌の色が濃いので、ダークエルフなのだろうか?
エルフはとてつもなく長生きする生き物だと聞いている。
小柄で幼い印象だが、歳はレオンたちとあまり変わらないのかもしれない。
ダークエルフはそのエルフの中でもかなり特殊な種族で、人とはあまり交わらない気難しい種族だと言われている。
それぞれの国にダークエルフの集落は点在しているが、国との関わりはほとんど持たず、孤高の天才を気取る高等種族という自他共に認識がある。
今発言した少年もあまり周囲を気にしたり気を遣ったりするタイプではなく、ずけずけと物を言うタイプなのだろう。
レオンだったら知っていたとしてもこの場で発言はしないだろう。
レオンはそんな風に考えていた。
そんな間にライモンダの説明は続く。
「その通りですよヤクジン。良くできましたね」
口の端だけを少し上げてライモンダは頷いた。
「人間の身体には血液と共に魔素という物質が流れています。魔法を使うためにはこの魔素の存在が不可欠になります。この魔素。生まれつき持っている者と持っていない者がいます。あなたがたがここに来た時に、分け石を握らせましたね? あの分け石には身体を流れる魔素に反応するように特殊な加工がされています。ここにいる人は多少の差はあれ、身体に魔素が多く流れている者、ということになります。」
レオンもその時のことを思い出していた。
確かみんな赤や緑に分け石が光を放った。
あれは身体の魔素に反応していたのか。
じゃあダンやパブロたちには魔素が流れていないということか。
でも…。
レオンはふと思う。
自分の分け石は青に光ったような…。
そんな前のことでもないのになぜか記憶が曖昧だった。
はっきりと覚えている気がするのに、大事なところで記憶にもやがかかる。

怪訝けげんな顔をするレオンを横目でちらっと見たライモンダだったが、気にしないことにしているような様子で話を続けた。
「それでは実際に魔素を感じてもらいましょう。皆さん。利き手の手のひらを上に向けてごらんなさいな」
そう言うと自分の手のひらを胸の辺りに挙げると手のひらを天井に向ける。
ライモンダの言う通りにレオンもサラもアンナも手のひらを上に向けた。
「それではちょっと特殊な魔法をかけますね」
そう言うと、懐から出した魔法の杖をくるっと回した。
…特に何も起こっていない気がする。
「この部屋は明るいので少し分かりにくいですね。では明かりを消してみましょう」
ライモンダはそう言うと、もう一度杖をふった。
すると、壁際の松明たいまつが一斉に消え、遮光カーテンに遮られた部屋は真っ暗になった。

「!?」
レオンたちはギョッとする。
なんと、手が…。
「光ってる!?」
サラが小声で呟いた。
サラだけではなく、レオンの手のひらは血が流れるように隅々まで光の点線が広がっていた。
周りを見るとみんなそれぞれ驚きの表情をしている。
みんな初めて見るのは共通なようだ。

光の色は人それぞれ違う。
隣に座っているアンナは鮮やかな赤色。
斜め前のサラは黄色。
その隣のプリシラは青みの強い緑色。
先程手を挙げたヤクジンというエルフの男の子は水色の光を放っている。
周囲を見回すと光の強さは人によって差があるが、それぞれの違った色が見られる。
手のひらを流れる魔素は幻想的な光を放ちながら各々の身体を流れているのだ。

そしてレオンは…。

と、自分の手のひらを見る。
「白…だよね」
レオンは自分の手を見て独り言のように呟く。
みんなそれぞれ鮮やかな色が出たが、レオンだけなぜか普通の白。
まぁ特別な人間でもないのだからそんなもんか、とも思った。
なにせ、自分が魔法使いであることすら最近まで知らなかったのだから。
でも…。
「レオン!」
幻想的な光に見とれている間にいつの間にか照明が元に戻っていて、目の前に長身のライモンダがいて、大きな声で呼ばれたのでレオンは飛び上がるかと思うほど驚いた!
ただ、驚いていたのはレオンだけではないらしい。
ライモンダも驚いた表情でレオンを見ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...