Go to the Frontier(new)

鼓太朗

文字の大きさ
52 / 57
第三章 ラプラドル島 前編

レオンの魔力

しおりを挟む
ライモンダはモスグリーンの瞳を見開き、レオンを呆然と見ていた。
「レオン…あなたはいったい…」
それだけ言って周りの生徒たちが注目していることに気づいたライモンダはさっと驚きの表情を引っ込めた。
「さぁ、みなさん。何色が見えましたか?」
多少ぎこちない笑顔だがもう元の「ライモンダ先生」だ。

そして授業が再開された。
「魔素は属性によって色が違います」
そう言うとライモンダは杖でもやのかかったスクリーンのようなものを造り出した。
「魔属性三原色と言って、炎の赤、水の青、風の緑という基本属性があります。この三色だった人はそれぞれがあなたの属性となります。」
炎の赤、水の青、風の緑とそれぞれアニメーションがついて映像が現れた。
どういう仕掛けなんだ?
レオンは不思議に思ったが分からないものは分からないのでとりあえず置いておくことにする。

なるほど。アンナの魔素は鮮やかな赤色だった。
アンナは炎の属性があるのか。
しかも光の量が威力に比例するならかなり強力な火属性ということになる。
ちらりと隣のアンナを見るとアンナは真剣な表情で聴いていた。
「これが基本型。想像にかたくないと思いますが、光が強いほどその魔力が強いのです(「やっぱり」とレオンは思う)。そしてここからは複合型。複合型には二種類のタイプがあります。単純に二つの属性をあわせ持つタイプ。これは単純に色を混ぜ合わせたタイプです。青と緑が合わさると水と風の二つの属性を持つことになりますので魔素の色は青緑色になります。なお、あまりいませんが、赤と青の赤紫で水と火の属性をあわせ持つ者もいます。」
ライモンダが杖をひとふりすると青と緑が混じりあって青緑色になった。
プリシラがこのタイプだ。
「そして、複合型のもうひとつのタイプ。それが二つの属性から新たな属性を産み出す三属性を持つタイプです。緑と赤、風と炎を合わせると第三の属性、雷属性の黄色を持つ者がこの中にいました。他に緑と赤で土の属性をもつオレンジ色の魔素を持つ者もいます。緑と青、風と水で水色の氷属性もこのグループです」
サラやヤクジンがこのグループ。
複合の進んだ上級色とでも言おうか。
さすがサラ。
レオンは激しい緑色に光った分け石を思い出す。

「先生、質問してもいいですか?」
その時、ひょろっと背の高い青年が手を挙げて質問した。
碧眼で金髪。
話すと八重歯がキラッと光る男前だ。
「どうぞ。フィエロ」
ライモンダが続きを促す。
フィエロと呼ばれた青年は立ち上がると、
「僕はオレンジ色の魔素を持っていました。これは先程話だと土属性ってことですよね? では、僕は風と炎と土の三属性を持っているということなんですか? それとも土属性だけを持っているんですか?」
ウェーブなびく前髪をかきあげながらそう言うと再び腰を下ろした。
「なかなかおもしろい、いい質問ですね」
ライモンダはなんだか楽しそうだ。
「これはどちらのタイプも存在します。土属性だけを持っている者もいれば、元になる二つの属性を持つ人や、人によっては三つ全てを持っている者もいます。また、最初は一つしか持っていなかった者が成長過程で属性の数が増えていく者、あるいは三つ持っていた者が一つの属性に特化していくことで他が弱まっていく者もいます。あなた方はまだ成長過程なのでこれからどうなっていくかは分かりません。これから変わっていくこともあるので、現段階での魔素の色と思っておけばいいでしょう」

なるほど。
人はそれぞれ変わっていくのか。
いずれは自分も色がついてくるのだろうか。
これからどんな属性をもつことになるのか。
なんだか楽しみになってきた。
レオンはもう何も見えてこない自分の手のひらをしげしげと眺めてそんなことを考えた。

が…。

「そして…。」
ライモンダは話を続ける。
ちらっとレオンの方を見た気がした。
「赤、青、緑の全ての魔素を持つ者は色が合わさって光属性の白になります。」

…えっ?!
レオンがギョッとしたのとほぼ同時にアンナ、サラ、プリシラが一斉にレオンを見た。

自分のことを言われてる?
レオンはよくわからないまま硬直した。
ポカーンと口を開けたままで。

「光属性?」
レオンは自分の手のひらを呆然と眺めたまま呟いた。
確か自分は白…だったはず…。
ここに来てから新しい発見が多すぎてレオンの思考は追い付いていないのが実情だった。
何だか思考がついていかず、頭がショートしそうだ。
「レオン」
ライモンダが近寄って声をかける。
「指先に意識を集中してみなさい。そして小さな火を出すイメージを持ってごらんなさい。」
そう言うとライモンダは人差し指をたててくるっと指を回すと蝋燭ろうそくほどの小さな火が指先に灯った。
「えっ…」
そんなこと…できるのか? とレオンは少し躊躇したが、息を大きく吐き出すと、見よう見まねで同じようにやってみる。

ポッ

指先に同じように小さく火が灯った。
「では同じように氷をイメージしてみなさい」
ライモンダはそう言うと、もう一度指先をくるっと回す。
先ほどの炎がピシピシと音をたてて凍りついた。
レオンが同じようにやってみるとやはり同じように指先の炎がコインくらいの大きさの小さな氷の粒に変わった。
「では、今度は水」
ライモンダの氷の粒は水に変わって地面にバシャンと落ちた。
やはりレオンの指先の氷の粒はライモンダと同じように氷が溶けて右手全体がびしょ濡れになった。
冷たい感触は水以外の何物でもない。
ライモンダの要求は続く。
「次は風。できれば暖かい風をイメージしてみましょう」
濡れた手のひらを広げてイメージすると暖かい風に手が包まれ、水を弾き飛ばした。
「最後は光です。指を高く掲げて思いっきり強い光をイメージしてみなさい。」
そう言うとライモンダはくるっと指を回すと部屋の証明になっている壁際の松明やランプの火が一斉に消えた。
外が明るいが、遮光カーテンにより部屋全体が暗くなった。
レオンは言われる通りにすると今度は凄まじい光が指先から部屋全体を照らす勢いで広がる。
部屋にいるみんながほーっという感嘆の表情で見つめる中、レオンだけが居心地が悪い。
「…そうですか。」
何が?と思ったがライモンダはそれ以上何も言わずに魔法で明かりを元に戻すとレオンから離れた。
ちょっとちょっと!
ライモンダ先生!
今明らかにスルーしたよね?!
そんなレオンの心の声を完全に無視して他の生徒に新たな指示を出すべく教室の前方に戻っていった。
レオンは完全に置いてきぼりの状態で。

「さぁ、皆さんの属性がわかったところで自分の属性に合ったものを出してみましょう。人差し指を出して。その先にあなたの属性をイメージしてみましょう。火属性の人は蝋燭の火を。水の人はコップに注がれる水を。風属性の人はそよ風を。それぞれのイメージで指先に表現してみなさい」
皆言われる通りに人差し指を立て、イメージを集中するために目を閉じている生徒もいる。
アンナの指先にポッと火が灯った。
蝋燭ろうそくよりも一回り大きい炎がゆらゆらと揺れている。
かなり力を抑えているのだろうか。
アンナはなんでもない表情だ。
元々魔法使いという自覚があったアンナにとってはそれほど驚くことではないのだろう。
サラは小さな炎を起こした後、指に見えない風をまとわせた。
風は炎を吹き消してしまうかのように見えたが、次の瞬間、炎の隙間からパチパチと黄色い火花が散った。
これが雷属性なのだろう。
全て出せるということはサラは複合型の中でも三種類を使い分けることができるタイプみたいだ。
ヤクジンは指先の空気が凍りついて氷の粒を纏わせていた。
各々がそれぞれの魔法を発動させるのをすでに出し切ってしまっている・・・・・・・・・・・レオンは感心しつつ見回していた。
その傍らで何も起こっていない生徒もいた。
さっき質問したフィエロもその一人だ。
「???」
フィエロは何度も試してみているのだろう。
難しい表情で自分の指を見ている。
どうしたのかな?
そんな表情がフィエロの視線とかち合った。

「フィエロは何をイメージしましたか?」
ライモンダは落ち着いた声で問いかける。
「土をイメージしました」
フィエロはしょんぼりと答える。
「そのあと、火も風もイメージしたけれど…どっちも出なかった…」
フィエロはそういうと忌々しげに自分の指を見つめた。
ライモンダはフッと笑うと、
「ではこの砂を見つめて沸き上がる水のようなイメージをしてみなさい」
そう言うとライモンダは魔法でどこからともなくサラサラとした砂を出した。
フィエロは小さく息を吐くとじっとその一握り程度の砂を見つめた。
次の瞬間。
地面の砂が水が沸き上がるようにポコポコと動き始め、それが周囲に広がった。
「おー!」
周囲の生徒たちもレオンも感嘆の声をあげる。
フィエロも少し不思議な感じだが満更でもない表情を浮かべた。
「もっとしっかりとイメージする必要があるようですね。まだ魔力が弱いので砂を少し動かす程しかできませんが、これから訓練すれば砂を自由に動かすことができるようになるでしょう。砂は敵の目眩ましになったり広範囲に放つことができる攻撃手段になります。あなたはどちらかと言うと補助魔法系なのかもしれませんね」
フィエロは真剣な顔つきで頷いた。

その時、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
「では続きはまた次回。ごきげんよう」
そう言うとライモンダは砂を撒き散らすように消えてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...