【選択小説】枯男は生還したい。〜旧校舎の神隠し〜

ルナ

文字の大きさ
4 / 47
エピソード0【月神】

【誰かの記憶④】打ち止め

しおりを挟む
 二月下旬。もうすぐ卒業する三年生には特別として、二代目の新校舎の具合を確かめてもらう事にした。卒業までの残りの日数を新校舎で過ごしてもらう。

「やっぱり綺麗ね~、新校舎」
「くぅー!新入生が羨ましいぜ!」

 そんな声が教室のあちこちから上がる。彼らも満足してくれているようだ。既に初代校舎はあちこちが割れていたり、ヒビいっている。落ちない汚れも増えてきた。
 何より、ツクヨミが眠っている場所にいつまでも生徒を置いておく訳にはいかない。封印は上手くいってヤツについての研究も進んでいる。大丈夫だとは思うが万が一があっては困る。安全性を高めるに越した事は無い。

「それでは三年生諸君、残りの数日はここの校舎を使ってくれ。明日、間違えて隣の校舎に登校しないように」
『はーい!』





☆●◇■△▼翌日▽▲□◆○★





 さて、今日から新校舎で三年生の授業だ。一度ヤツの事は忘れて仕事に専念しなければ。私はいつもより早めに学校に行き、朝の仕事をある程度こなしてから新校舎の様子を見に行った。
 が、いない。
 生徒が一人もいない。
 時刻は始業の十分前を切っていたというのに、人の気配が全くしない。
 生徒だけでは無い、彼らの担任である一部の教師達も見当たらない。教員用の駐車場に車が止まっているので、来ているのは間違いないのだが。
 嫌な予感がして、私は二代目校舎の地下研究所へ向かった。やはり誰もいない。

「どういう…事だ…」

 二代目校舎にいた人間が全員消えてしまった。
 こんな異常事態、ヤツが絡んでいるに間違いない。私は走って初代校舎の方の地下研究所へ向かった。研究室の扉を開けた時、私はその場で凍りついた。
 そこで見たのは、あの日と同じ光景。研究員達が大量の血を流して倒れている。そして床に散乱したその血は、部屋の中心に吸い込まれるよう独りでに動いている。部屋の中心にあるのはツクヨミが封印された骸骨だ。

「まだ…だ…。まだ足りぬぅ…!」

 部屋のどこからか乾ききったヤツの声が聞こえる。召喚直後の頃と比べてかなり衰弱しているようだ。

「貴様…何をしている」
「おぉ?これはこれは、コイツの弟では無いか。見て分かるだろう?こやつらの生き血を吸っているのじゃ。私の復活のために、な」

 封印は解かれていた。いや、効力が切れたというのが正しいのかもしれない。ツクヨミが自我を取り戻し、また惨状を作ってしまった。

「あそこの…新校舎の子達はどうした!お前がやったんだろう!」
「あぁ?…あー、あのガキ共か」



「喰った」



「ツクヨミ…貴様ああああああああああ!!」
「貴様らが悪い。貴様らが間抜けすぎたのじゃ。私の事を嘗めすぎた。この校舎のすぐ隣なんて、私の射程内じゃ」

 迂闊。油断。ツクヨミの活動可能範囲をろくに把握しないまま、新校舎を建てたせいで罪なき生徒達がコイツの毒牙に…。
 私の周囲の空気が重くなり、ヤツが攻撃をしてくる事が何となくだが察知した。しかし私にはそれをかわす術が分からない。責任を負って、このまま彼らと同じ末路を辿るのも悪くない。そう思っていたその時だった。

「ぅ…あああああああああああああああ!!」
「!?…探偵!?」

 気がつくと私の背後にはあの探偵、枯男が来ていた。そして枯男の両手には大きな鉄製のハンマーが。一体どこから持って来たのやら。
 枯男は重量のあるハンマーをツクヨミ目掛けて思い切り振り下ろした。ツクヨミが憑依していた頭蓋骨は細かく砕け散った。

「ハァ…ハァ…最初から…最初から、こうしてりゃ良かったんだ」

 骸骨が砕けた途端、床の血の動きが止まり、どこかよどんでいた空気も元に戻った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...