【完結】てんかん患者の嗚咽

【5】毎晩が波乱

バタンッバタバタ…バタバタ

「…なんだ、ルナか」
「あ、またルナ暴れてんの?」

 退院してから数日後。ルナは寝ている間、頻繁に痙攣を起こすようになった。毎晩毎晩ほぼ確実に寝ている間は、いや、正確には意識が無い時に限ってルナは痙攣を起こす。両足をバタバタと駄々をこねる子供のように激しく床に叩きつけているように痙攣するのだ。それに加え、白目を向き、唇を震わせながら口から泡を吹くのだ。泡と言うよりただの唾なのかもしれないが、苦しそうにもがくルナの姿を見ると、"唾を出している"よりも"泡を吹いている"という表現の方が周りからするとしっくりくるのかもしれない。

「どうする?コイツ」

 ルナの実の兄であるルナ兄が面倒くさそうな顔でルナ父に問う。ルナ父も表情こそあまり出してはいないが普段と比べると少々顔が引きつっているように見える。見慣れていない息子の悲惨な姿に苦悩の表情を浮かべているのか、それとも単純に迷惑そうに思っているのか。はたまたその両方なのか。

「ほうっておくしか無いな…今はまだ」

 ルナ父の言葉を最後に、夜中に響く物音の正体が分かったルナの家族一同は、それぞれがそれぞれの寝床へ戻っていった。

バタンッバタバタ…バタンバタンッ

 ルナの痙攣も日が無い夜も
 まだまだ終わりそうには無かった。

「Zzz…」

 ちなみにルナ母は寝ていた。