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【番外編】デネブの英雄伝説
4、彦星の親友たち【完】
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「そんなの二度とないだろうな。俺も見たかった」
後輩たちからことのすべてを聞いて楽しそうに笑うアヤちゃんに、見てないからそんなことが言えるんだとブツブツ言いつつ、俺は机に突っ伏した。
「すっごい状況だったんだから」
放課後の教室に俺の声だけが響く。
今日はいろいろあった次の日なので、久しぶりに三人で帰ろうと委員会が長引いているホッシーをアヤちゃんとふたりで待っている間、昨日の悪夢について話したところだった。
「勢い余って下関弁で愛をぶちまけたの、面白すぎる」
「今まで見たことないくらい動揺してたよ」
やっぱり見たかったとアヤちゃんは心底残念そうにしながら、器用にペンを回す。
いきなり走って行って、さらには大きな声で告白をして……本当にインパクトが強すぎる。
「で、進展ないまま帰ってきたって聞いたけど」
「どんだけ広がってんだよ、その噂話……。そうだよ。そのまま引きずって帰ってきたよ。見世物じゃあるまいし」
あのあと、まわりで練習していた他校生たちも一気に集まってきてしまって軽い騒ぎになってしまったため、引かざるを得なかったのは事実だ。というよりも、ホッシーが何を思ったのか突然冷静になり、『自分の片思いなので彼女は関係ありません。お騒がせしてすみませんでした』とびしっと頭を下げて、自ら身を引いたのだった。
「ホッシ―らしいな」
「めちゃくちゃ潔くてかっこよかったんだけど、美女の学校では誇張されて話題になってそうだなぁ」
美女に迷惑をかけたくなくてホッシーは身を引いたのは俺だってわかる。
あの後もずっと、なんであんな大勢の前で言っちゃったんだろうと嘆いていたし。
「ムロさんがそのあとヒーローみたいに叫んでみんなを黙らせたって話も聞いてる」
「ヒーローなものか……」
親友として何かしてやれないかと思ったけど、肝心な時に何もしてやれず、ただただそこに立っているだけしかできなかった俺は、大声で『俺の名前は根室清人。文句があるやつは俺に言いに来い!』とだけ叫んで、背を向けて歩き出したホッシーを追っかけた。
確かにみんな黙ったけど、ドン引きしただけだろう。
うっせぇ、誰だよ、おまえ!くらいのヤジを覚悟したのに、それさえもなかった。
「あはは、かっこよすぎだろ。去り際にフルネーム名乗って立ち去るのとか、強すぎる」
「本当に、嫌になるよ……」
結局だっさい役回りだ。
珍しく顔を覆って大笑いするアヤちゃんに、彼だったらどうやって切り抜けたんだろうかとひっそり思うけど、きっとスマートに切り抜けるんだろうと思うとげんなりだ。
「そのわりには嬉しそうだけど」
「……ま、まぁな」
口角が緩むのを隠しきれずに笑うとアヤちゃんも同じように口元をほころばせた。
ホッシーは背を向けていたため聞こえていなかったと思うけど、その背を目で追い、『わたしも会いたかった』と美女が小さく呟いたのを俺は確かにこの耳で聞いた。
「あとはご本人から聞いてくれ」
脇役の出番はここまでだ。
もうすぐ気まずそうな表情で、本日散々いじられたであろう親友様が現れるだろうから。
「マミちゃんとはどちらさまで、どのような経緯でお知り合いになったか、今度こそ聞かせてもらおうぜ」
そして、しっかり青春というものを見せてもらおうじゃないか。
「あー、俺も恋がしてぇぇぇ」
俺の悲痛の叫びは、『おい、声がでかすぎる』というアヤちゃんのお叱りにかき消されることになったのだけど、そう言わずにはいられない。
目の前であんなにも全力疾走を見せられたのだ。言いたくもなる。
俺も負けてはいられない。
根室くんの時代は、まだ来ていないのだから。
そう思いながら、俺は親友がどんな表情で現れるのか楽しみにしながら、彼の訪れを待ったのであった。
後輩たちからことのすべてを聞いて楽しそうに笑うアヤちゃんに、見てないからそんなことが言えるんだとブツブツ言いつつ、俺は机に突っ伏した。
「すっごい状況だったんだから」
放課後の教室に俺の声だけが響く。
今日はいろいろあった次の日なので、久しぶりに三人で帰ろうと委員会が長引いているホッシーをアヤちゃんとふたりで待っている間、昨日の悪夢について話したところだった。
「勢い余って下関弁で愛をぶちまけたの、面白すぎる」
「今まで見たことないくらい動揺してたよ」
やっぱり見たかったとアヤちゃんは心底残念そうにしながら、器用にペンを回す。
いきなり走って行って、さらには大きな声で告白をして……本当にインパクトが強すぎる。
「で、進展ないまま帰ってきたって聞いたけど」
「どんだけ広がってんだよ、その噂話……。そうだよ。そのまま引きずって帰ってきたよ。見世物じゃあるまいし」
あのあと、まわりで練習していた他校生たちも一気に集まってきてしまって軽い騒ぎになってしまったため、引かざるを得なかったのは事実だ。というよりも、ホッシーが何を思ったのか突然冷静になり、『自分の片思いなので彼女は関係ありません。お騒がせしてすみませんでした』とびしっと頭を下げて、自ら身を引いたのだった。
「ホッシ―らしいな」
「めちゃくちゃ潔くてかっこよかったんだけど、美女の学校では誇張されて話題になってそうだなぁ」
美女に迷惑をかけたくなくてホッシーは身を引いたのは俺だってわかる。
あの後もずっと、なんであんな大勢の前で言っちゃったんだろうと嘆いていたし。
「ムロさんがそのあとヒーローみたいに叫んでみんなを黙らせたって話も聞いてる」
「ヒーローなものか……」
親友として何かしてやれないかと思ったけど、肝心な時に何もしてやれず、ただただそこに立っているだけしかできなかった俺は、大声で『俺の名前は根室清人。文句があるやつは俺に言いに来い!』とだけ叫んで、背を向けて歩き出したホッシーを追っかけた。
確かにみんな黙ったけど、ドン引きしただけだろう。
うっせぇ、誰だよ、おまえ!くらいのヤジを覚悟したのに、それさえもなかった。
「あはは、かっこよすぎだろ。去り際にフルネーム名乗って立ち去るのとか、強すぎる」
「本当に、嫌になるよ……」
結局だっさい役回りだ。
珍しく顔を覆って大笑いするアヤちゃんに、彼だったらどうやって切り抜けたんだろうかとひっそり思うけど、きっとスマートに切り抜けるんだろうと思うとげんなりだ。
「そのわりには嬉しそうだけど」
「……ま、まぁな」
口角が緩むのを隠しきれずに笑うとアヤちゃんも同じように口元をほころばせた。
ホッシーは背を向けていたため聞こえていなかったと思うけど、その背を目で追い、『わたしも会いたかった』と美女が小さく呟いたのを俺は確かにこの耳で聞いた。
「あとはご本人から聞いてくれ」
脇役の出番はここまでだ。
もうすぐ気まずそうな表情で、本日散々いじられたであろう親友様が現れるだろうから。
「マミちゃんとはどちらさまで、どのような経緯でお知り合いになったか、今度こそ聞かせてもらおうぜ」
そして、しっかり青春というものを見せてもらおうじゃないか。
「あー、俺も恋がしてぇぇぇ」
俺の悲痛の叫びは、『おい、声がでかすぎる』というアヤちゃんのお叱りにかき消されることになったのだけど、そう言わずにはいられない。
目の前であんなにも全力疾走を見せられたのだ。言いたくもなる。
俺も負けてはいられない。
根室くんの時代は、まだ来ていないのだから。
そう思いながら、俺は親友がどんな表情で現れるのか楽しみにしながら、彼の訪れを待ったのであった。
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