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【15歳 冬】
34、【15歳 冬】感謝の気持ちを贈り物に
「また、浮かない顔をしていますね」
「えっ!」
「気になることでもありますか?」
「あっ……えっと……」
さすがに妄想が過ぎたため、言葉にすることはできない。
「モヤモヤしてしまう前に言ってくださいね。あなたを悲しませるほうが嫌ですから」
わたしの変化をいち早く気づける人だ。
今ここで考えてしまったことは間違いだったとさえ思わせられる。
彼にとっては余計なお世話だろう。
「……あなたには、感謝をしています」
「えっ、あっ! はい……」
「何をしたら喜んでくれるかとずっと考えていて」
「あなたとのことならなんでも喜びしか……」
「………」
テンプレートなのだろうか。
毎度毎度同じことを言われてしまうとさすがに白々しく感じられる。
「あなたの言う通り、口づけをしたら喜んでくれるのかとも考えました」
「!! ……ええ!?」
どうせばれてしまうだろうし、正直に告げると後ろにひっくり返ってしまうのではないかと思うほど、彼は驚きの声を上げる。
「ちょっと待って、い、いきなり何を……」
珍しく動揺した様子が見られて思わず見入ってしまった。
「口づけるのは難しくないかもしれません。でも、それではなんだか違うなと思って、それで……あの……」
「い、いえ、いえいえいえ、違わなくないです。気持ちが変わっても困りますからね。ぜひとも、お願いします!」
あろうことかそのまま席を立ち、こちらに回り込んでくる。
「ちょっ、違います! するとは言っていません!」
自然な動作で頬に手を添えられたため、今度はこちらが動揺させられることとなる。
ここは街のカフェである。
周りの視線も一気に集めた気がするし、そもそもこの場所ではあるまじき距離感で飛び上がる。
「ち、近い! 近いです!」
「……あっ、あなたも人が悪い。俺をどうしたいんですか!」
「こ、これ……」
「えっ?」
「これを……」
先ほど購入した包み紙を手に取り、彼の前に差し出す。
「こ、こんなことしかできませんが……こ、これをあなたに渡したくて……」
「ええっ! えええええっ!」
初めてのお給金で何かしたいと思っていた。
「えっ、あっ……これ、俺の……」
「ええ。その柄を選ぶとは思いませんでしたが」
赤と白が基調の大きな花柄のエプロンを取り出し、彼が動きを止める。
なんでも持っていて望めば手に入れる彼に何が必要か、いつも考えていた。
「俺の……だったんですね……」
「お、お気に召しましたか?」
お茶に誘うときよりも胸が高鳴っている。
覚悟はしていたはずなのに、いらないと言われたらどうしようなどと脳裏の奥で考える。でも、
「も、もちろん! もちろんもちろん! 喜んで使用いたします!」
彼の反応は予想とは違い、温かなもので心から安堵した。
「そ、それならよかったです」
彼と過ごして半年が過ぎた。
彼はいつも新しい可能性を運んできてくれる。
まるで夢のような人だった。
わたしにもまだ前を向いていいのだと言ってくれている気がして嬉しくなることが増えた。
「感謝しています。本当に」
圧倒的な魅力を持つ人だ。
わたしの側にいてくれることがもったいないくらいに。
でも、もう一度、もう一度すべてのことを信じてみたくなった。
「……罪な方だ」
「え?」
彼の本当の気持ちも事情もなにもかも知ることもなく、今日のわたしは久しぶりに心の底から弾むような気持ちだった。
「えっ!」
「気になることでもありますか?」
「あっ……えっと……」
さすがに妄想が過ぎたため、言葉にすることはできない。
「モヤモヤしてしまう前に言ってくださいね。あなたを悲しませるほうが嫌ですから」
わたしの変化をいち早く気づける人だ。
今ここで考えてしまったことは間違いだったとさえ思わせられる。
彼にとっては余計なお世話だろう。
「……あなたには、感謝をしています」
「えっ、あっ! はい……」
「何をしたら喜んでくれるかとずっと考えていて」
「あなたとのことならなんでも喜びしか……」
「………」
テンプレートなのだろうか。
毎度毎度同じことを言われてしまうとさすがに白々しく感じられる。
「あなたの言う通り、口づけをしたら喜んでくれるのかとも考えました」
「!! ……ええ!?」
どうせばれてしまうだろうし、正直に告げると後ろにひっくり返ってしまうのではないかと思うほど、彼は驚きの声を上げる。
「ちょっと待って、い、いきなり何を……」
珍しく動揺した様子が見られて思わず見入ってしまった。
「口づけるのは難しくないかもしれません。でも、それではなんだか違うなと思って、それで……あの……」
「い、いえ、いえいえいえ、違わなくないです。気持ちが変わっても困りますからね。ぜひとも、お願いします!」
あろうことかそのまま席を立ち、こちらに回り込んでくる。
「ちょっ、違います! するとは言っていません!」
自然な動作で頬に手を添えられたため、今度はこちらが動揺させられることとなる。
ここは街のカフェである。
周りの視線も一気に集めた気がするし、そもそもこの場所ではあるまじき距離感で飛び上がる。
「ち、近い! 近いです!」
「……あっ、あなたも人が悪い。俺をどうしたいんですか!」
「こ、これ……」
「えっ?」
「これを……」
先ほど購入した包み紙を手に取り、彼の前に差し出す。
「こ、こんなことしかできませんが……こ、これをあなたに渡したくて……」
「ええっ! えええええっ!」
初めてのお給金で何かしたいと思っていた。
「えっ、あっ……これ、俺の……」
「ええ。その柄を選ぶとは思いませんでしたが」
赤と白が基調の大きな花柄のエプロンを取り出し、彼が動きを止める。
なんでも持っていて望めば手に入れる彼に何が必要か、いつも考えていた。
「俺の……だったんですね……」
「お、お気に召しましたか?」
お茶に誘うときよりも胸が高鳴っている。
覚悟はしていたはずなのに、いらないと言われたらどうしようなどと脳裏の奥で考える。でも、
「も、もちろん! もちろんもちろん! 喜んで使用いたします!」
彼の反応は予想とは違い、温かなもので心から安堵した。
「そ、それならよかったです」
彼と過ごして半年が過ぎた。
彼はいつも新しい可能性を運んできてくれる。
まるで夢のような人だった。
わたしにもまだ前を向いていいのだと言ってくれている気がして嬉しくなることが増えた。
「感謝しています。本当に」
圧倒的な魅力を持つ人だ。
わたしの側にいてくれることがもったいないくらいに。
でも、もう一度、もう一度すべてのことを信じてみたくなった。
「……罪な方だ」
「え?」
彼の本当の気持ちも事情もなにもかも知ることもなく、今日のわたしは久しぶりに心の底から弾むような気持ちだった。
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