俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中

油淋丼

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魔物と魔導士

大窯の中からチラチラ見える白いものは考えたくないが、骨?
俺以外に既に中に落ちた人か何かがいたのだろうか。
不思議と大窯の中から悲鳴のような声が聞こえてくる。

俺もああなると言われているみたいで背筋が冷たくなった。

俺の命は太い縄一本で繋がっているだけでしかない。

その時、急に足を拘束していた紐が大窯に向かって落ちた。
縄で引っ張られている感覚から、身体が浮く感覚に変わる。

スローモーションのように大窯が迫ってきていた。

「わぁぁぁっっ!!!!…ぐぇっ!」

茹で海老を覚悟していたが、俺の身体は羽根が生えた悪魔によって救出された。

ガクガク身体を震わせながら、骸骨の前に落とされた。
重力によって、潰れたような情けない声が出た。

こんなに床が温かくてありがたく思うとは思わなかった…実際は冷たいけど。

18歳にもなって泣きそうになっていたら、骸骨にあるものを見せられた。

それは写真のようにリアルに描かれている絵だった。

魔王とか異界人とか言ってるし、写真がない世界なのかもしれない。
でも、この絵は誰なんだろう…見た目人間のおじさんのようだ。
赤い髪をオールバックにしていて、顔だけで屈強な男だと分かる。

この人がどうかしたのか?もしかして、俺みたいに人間なのに魔王候補になった人とか?

そう思っていたのに、ぐしゃぐしゃに絵を握りつぶして手を開いた。
そこにあったのは丸まった絵ではなく、真っ黒な灰だった。

俺の未来がそうなると言いたげに見せつけていた。
まるで手品のように風に乗せて灰がバラバラに散っていく。

「この男は魔導士、我々悪魔の同胞だ」

「同胞って事は…仲間?」

「笑止!人間に寝返った腰抜け共と同じにするな!」

骸骨が大声を出すから心臓が止まりそうになって、少し離れる。
後ろに他の魔物がいるからこれ以上は逃げられない。

同胞って言ったのに一緒にするなって意味が分からない。
それを言うと、今にも飛びかかってきそうな魔物達が怖くて言えない。

骸骨は俺に魔導士という人と魔物の関係を教えてくれた。
親切心ではなく、話をしないと先に進まないからだと分かる。
知らないままでいいから、全然ありがたくはない。

魔物は人間とは違い、体内に魔力を巡らせていて放出する事が出来る。
いくら生まれもっていたとしても、魔力が魔物にとって無害というわけではない。

魔力の使いすぎで皮膚が変化したり、姿が醜く変わったり身体のなにかを失ったりする。
だいたいの魔物は姿なんて気にしないから、そのまま使い続けるが理性が失われ凶悪な魔物に変わってしまう。

「凶悪な魔物は特に悪いものではないが、こちらでもコントロール出来ない魔物は困る」

魔物思考なのか、凶悪な魔物もダメだと思う気持ちはないらしい。
他人の気持ちより自分がどう思うかが重要らしい。

人間を食おうとしていたんだし、人間相手だけなら気にしないんだろうな。
でも、自分達にまで危害が加わるというなら話は別だ。

じゃあ骸骨も本当は別の姿だったりしたんだろうか、骨からは想像出来ない。

魔導士も身体に魔力を宿らせた魔物という存在だ。
でも、魔導士は他の魔物とは違い容姿は人間そっくりで人間から生まれる。
だからほとんどの魔導士は人と偽って過ごしている。

魔導士は直接魔術を使う魔物とは違い、魔力を武器に注いで戦う。
そうする事で、魔力の使いすぎという状態にはならない。

魔物も同じ事をすればいいとは思うが、人間と共に過ごしている魔導士のように賢くない。
どうやって魔力を注げばいいのか分からない、ほとんどの魔物は知能がとても低い…教えられても理解する頭はない。
それに人間に近い存在の魔導士だからこそ出来たのかもしれない、そうだとしたら無駄な努力で終わる。

魔物は魔物のやり方で魔力の暴走を抑える方法を思い付いた。

「それが魔王だ」

「魔力を抑えるのが魔王ってどういう事?」

「魔導士とは逆に、暴走した時の魔力を吸い取る器が必要だ」

「どうやってやるのか聞いても…」

「それを知ったら楽しみがなくなるだろ」

カタカタと骸骨は骨を鳴らして大笑いのような事をしていた。
絶対楽しくない事は分かる、魔力なんか吸い取ったら絶対に無事じゃない。
吸いすぎて身体が破裂してしまうのかもしれない。

俺が死ぬ嫌な事を想像をしてしまい、冷や汗が流れる。

魔王の役目は他にもあるが、大きな役目としては受け入れる器だろう。
他の魔王候補者達はなんでそんなものになりたいのか分からない。

さっき知能が低いと言っていたから、理解していないのかもしれない。
他の魔物達は利用するためにあえて何も言わないんだろうな。

でも、俺も魔王候補者だし…別の世界から来たとしてもヤバい事だけは理解出来た。

「そんな事、俺に話していいんですか?」

「あぁ、別に構わない…お前は特別な魔王候補者だからな」

ここまで言われて嬉しくない特別はなかなかないだろう。  

俺と魔物の違いは魔力なしと人間という事だけだ。
まさかと思い付いて、骸骨の顔をジッと見つめていた。

さっきまで笑っていたのに、そんな真顔で見られたら怖い。

骸骨は人間の味方をして魔物達を倒す魔導士達を腰抜け野郎共だと言っていた。
ただ食事をしようと街に降りただけなのにと、全く悪びれる様子もなく首をかしげていた。

絶対にそれが原因なんだろうな、という気持ちは心の奥にしまっておく。

骸骨の話によると、前の魔王はさっきの絵に描かれていた魔導士の男に殺された。
魔物達の恨みは強く、魔導騎士団という魔導士のみを集めて国を守る彼らを壊滅させるために動いている。

その中でも騎士団長である彼は他の魔導騎士とは比べ物にならない力がある。
魔王を倒したんだから、当然だが魔物は早く代わりの魔王を探すんだと手当たり次第呼んでいた。
俺は運がなく、何番目かに召喚されたんだな…魔物のために。

「俺、力ないけどどうするつもりなんだ?」

「他に利用価値があるから、今夜はおあずけになっただけだ」

今夜はという不穏な言葉が気になるが、俺になにが出来るんだ。
運動神経も平凡だし、戦いの戦略なんて俺が分かるわけない。

そう思っていたら骸骨は骨の杖を俺に向けて、今度は俺が首をかしげる番だ。

骸骨はこの場では俺しか出来ない仕事があると言った。
もし成功を積み重ねたら魔王になれるかもと誘うような事を言っていた。
俺の心には一ミリもどうしようかと揺れ動く事はなかった。

「人間であるお前は人間の国に入っても違和感がない、使えないと思われていたお前が我々の鉄砲玉にもなれるぞ、感謝しろ!」

よし、早く帰る別の方法を探そうと俺の心はますますやる気に満ちている。
俺だって人間だ、魔物の言いなりになんて動かないからな。

魔物達から目を逸らして、足に絡まった縄を外している俺は骸骨の企む顔に気付いていなかった。
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