俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中

油淋丼

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悪魔誕生

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後ろを振り返ると、何の変哲もない窓が見える。
今の時刻は昼間なのに、窓の外は真っ暗だった。

『みっけ』

その声は子供のようなのに、恐ろしい声に聞こえた。
俺の脳内に響く声は、判断能力を鈍らせて逃げるのに遅れた。
無数の瞳が俺を見て、ガラスに大きなヒビが入った。

ガラスの破片と衝撃により、俺の身体は吹き飛んでクレイドの前まで投げられた。
クレイドが俺を呼ぶ声をボーッとした頭で聞いていた。

なにが起きたんだろう、視界がぼやけていて分からない。

クレイドは魔術で糸が切れるのを待つ事なく俺に腕を伸ばしていた。
俺の傷がクレイドに移ったとかどうでもよくなるほど、腕は血だらけになっていた。

それでも、腕を伸ばす事を止める事はなかった。
吹き飛んで、あちこちが痛いけどクレイドに近付く事は出来る。

腕に力を入れて、ゆっくりと身体を起こした。
俺は大丈夫だから、これ以上動くとクレイドの腕が大変な事になってしまう。

クレイドに腕を伸ばそうとしたが、俺の身体は横に転がった。
誰かに腹部を蹴られて、一瞬息が止まった。

「へぇ、これが使えない魔王候補?」

「げほっ、はぁ…はぁ」

「こんなの持って帰ってどうするの?」

「こうして人間の国に入れる、人間にしか出来ない利用方法はいくらでもある」

「一度は捨てたくせに…まぁ、新しい人間を召喚するのも楽じゃないしね」

何の話をしているんだ、意味が分からない。
二人の声がする、一人は聞いた事がない声だ。
もう一人は魔物の骸骨と同じ声だ。

まさか、俺を迎えにきたのか?食料以外の使い物にならないのに何のために…

顔を上げると、ショートパンツにお腹を出した格好の少年がクレイドを見つめていた。
羽根が悪魔の羽根のようだから、見た目は人間に近いが悪魔なのだろう。

クレイドを見て「お前…」となにか言おうとしていた。
その声はクレイドの炎がまとった拳により声にならなかった。
重い一撃により、少年の魔物は部屋の外まで吹き飛んだ。

少年には目もくれず、俺のところに駆け寄り抱き起こしてくれた。

「今すぐ治療するから大丈夫だ」

「だ、め…クレイドに…傷を、負わせたく…な…」

「俺の事は気にするな」

気にするなって、気にしないわけないだろ。
クレイドだって、俺を放っておいて魔物を倒しに行けばいいのにこっちに来てくれた。

クレイドが俺の傷口に触れようとしたから、力を振り絞ってクレイドの肩を押した。
首を横に振って、治療を拒絶した。

手を怪我したり指先を怪我するのはわけが違う。
既に負傷しているクレイドに新しい傷を作りたくない。

魔物の狙いは俺だ、俺さえいなくなればクレイドはこれ以上傷付かない。
俺の腕を掴むクレイドに、首を横に振った。
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