同級生で美少女の巫女さんが、陰キャの俺に興味を持って追いかけてくるのは何故なのか?

波瀾 紡

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【30:ショッピングモールでお買い物】

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 エスカレーターを使って、ショッピングモール二階のレディースファッションフロアに行った。通路の左側に吹き抜けがあって、右側にはずらっとお店が並んでる。

 連休中とはいえ、オープン間もない時間だからか、ほとんど客はいなくてがらんとしてる。レディースフロアだし、これなら知り合いの男子に出くわすこともなさそうだな。少し安心した。

 でも俺にはどの店がどんな店なんだか、さっぱりだ。よく見ると店によって派手な感じの服がメインだったり、落ち着いた感じだったりするけど、やっぱりよくわからん。

「どこの店を見たいんだ?」
「えっと……天心君は可愛いのと、セクシーなのとどっちが好きですかぁ?」

 せ、セクシー?

 日和の口からそんな言葉が出るなんて、思ってもみなかった。天然でちょっと幼い感じの日和に、セクシーなファッションなんて似合わないだろ。

 そうは思ったけど、頭の中に日和がセクシーな服を着てるイメージが勝手に、ぽわんと浮かんでしまった。

 タイトなミニスカートに、豊かな胸が強調される襟付きのシャツ。前のボタンがはち切れそうで、胸の所の布が歪んでる。うわ、なんてことを想像するんだ俺は。スケベか!?
 ──うん、スケベだけど。

 あれ? なぜか手には拳銃を持ってて、俺に『ずきゅーん』とか言って撃つポーズをした。

 ん? これはミニスカポリスだな。
 なんで?

 なんで俺のセクシー妄想は、ミニスカポリスなんだよ? 他にももっとあるだろに。
 ──だけどミニスカポリスの日和も、なかなか可愛いかもな。
 ずきゅーんの銃にハートを打ち抜かれそうだ。

「どうしたんですかぁ、天心君?」
「えっ? いや、あの……」

 日和に肩を叩かれて、ようやく俺の魂は現生に戻ってきた。どうやら俺の魂は、『セクシーワールド』という異世界に転移してたようだ。ただしスキルは『眺める』だけな。

「あ、なんでもない。日和が普段着る服を買うなら、そ、そりゃ可愛い系だろ?」

 セクシーな日和なんて、俺の妄想の世界だけで充分だ。

「はーい。わっかりましたぁ! ではでは、可愛い系のお店に参るとするのじゃ」

 日和は手を大きく前後に振って、ご機嫌な感じで歩きだした。俺は慌てて後を追いかける。

「ん?」

 いくつかの店の前を通り過ぎた日和が、可愛い系の服がたくさんディスプレイされてるお店の前でぴたりと止まる。

 日和はあごに指を当てて、店頭のディスプレイと店内の様子を「ふーむ」と言いながら眺めてる。そして急に俺の方を振り向いた。

「ここがいいですぅ」
「そっか。じゃあゆっくり見てきな。俺はここで待ってる」

 女子の服屋さんなんて、恥ずかしくて入る気がしないから、通路で待つことにする。だけど日和は店に入らないで、俺の顔をじっと見てる。

「ダメですぅ。一緒に見るんです!」

 日和が急に俺の腕を両腕で抱えるように握って、店内に俺を引っ張りこもうとした。
 おい待て。俺の二の腕が、日和の柔らかい胸に当たってるんだけど?
 腕に抱きつくようなことはやめろ。いや、やめないで。違うって、やめろ。

 俺は自分で自分がどうしたいのか、よくわからない。
 ──いや違う。店内に引きずり込まれるのを避けたいんだった。

「待て、日和。恥ずかしいから、店に入るのは嫌だ」
「他にお客さんもいないし、大丈夫ですぅ」

 そういえば、店内に誰も客はいない。それならば、通路で男一人で待ってて、行き交う女性に好奇の目で見られるよりもマシか。

「わかった。一緒に入るから、手は離してくれ」
「ふわぁい。わかったのじゃ」

 せっかく一緒に店に入ると言ったのに、なぜか日和は少し不満げな顔をして、ゆっくりと手を離した。これ以上腕が日和の胸に当たってると、頭がおかしくなりそうだったから離れてくれて助かった。


 店内に入ると、日和は瞳をきらんきらんさせて、次から次へと色んな服を物色しだした。やっぱり女の子だな。服を見るのが楽しそうだ。

「うーんと、これがいいかなぁ。あっ、これ可愛い! でもこれもいいなぁ」


 俺は女の子のファッションも日和の好みもよくわからんから、とにかくこいつが服を選ぶのを待つしかない。

 手持ち無沙汰に、マネキンみたいなのにディスプレイされたコーディネートを眺める。

 おおっ。あれもこれも、可愛いじゃないか。女の子は得だな。服装やメイクで可愛らしさを三割はアップできる。

 でもいちいちこんなにたくさんの中から、選んで服を買うのは面倒だな。俺なんかいつも、母さんが買ってくれるユニシロの服ばっかだから楽だ。


 そんな取り留めもないことを考えながらディスプレイの服を眺めてたら、店の入り口の方から、他の女性客らしい声が聞こえてきた。

 うわ、最悪だ。顔を合わせるのは恥ずかしいから、そちらは見ずにディスプレイを眺め続ける。


「このお店どう?」
「うん、良さそう」
「じゃあここに入ってみよう!」

 女性の二人連れが入ってきたみたいだけど、俺は頑《かたく》なにディスプレイを眺め続ける。絶対に他の客と目を合わせるなんて嫌だ。陰キャの俺が女の子ファッションの店に入ってるなんて、きっとキモーとか思われるに違いない。

 ホントはすぐにでも店の外に出たいけど、勝手に逃げ出すのはなんだか日和に悪い。早く服を選び終わってくれないかなぁ。

 すごく居心地の悪い思いでいたら、俺の祈りが通じたのか、日和が声をかけてきた。

「天心くーん。このシャツ、可愛いと思うけど、どうですかぁ?」

 日和を見ると、フリルがたくさんついた、いかにも可愛い系なシャツを両手で広げて俺に見せてる。

「おお、いいんじゃないか。早くそれを買って、店から出よう!」
「なんだか天心君、適当に言ってるみたいですぅ」
「そ、そんなことないぞ。そのシャツは可愛いと思う」


「あれっ? ……あ、月影さん?」

 後ろから聞き覚えのある声がした。振り向くとそこには、驚いてぽかんと口を開けた神凪が立ちすくんでいて、目が合った。

「て、天心君!?」

 神凪が目を大きく見開いて、素っ頓狂な声を出した。

「えっ? 神凪? なんでここに?」
「えっと、姉と一緒に買い物に」
「お姉さん?」

 神凪の横には、ゆるふわパーマをかけた大人っぽい顔立ちの女性が立ってる。すらっとしたスタイル抜群で小顔の美人。

 神凪さくらも超絶美少女だけど、お姉さんも美人だ。

 あ、神凪の後ろからは、ロリ神様がひょこっと顔を出して、にかっと笑った。ロリ神様も一緒に来たんだ。

「あれ? あなたが天心君?」

 神凪のお姉さんが突然俺の名を呼んだ。

「えっ? なんで俺の名を?」
「妹から天心君のことは聞いてるよ」
「へっ? な、なんで?」

 なんで神凪がお姉さんに、俺のことを話してんだ? めっちゃ悪口言ってるんじゃないだろうな?

「ああ、あのね。私のクラスにバカな男の子がいるって、ついつい話しちゃった。天心君、ごめんねー」

 やっぱりか。お姉さんにまで悪口言うなよ。

 神凪の言葉を聞いて、お姉さんは一瞬驚いた顔で神凪を見た。そしてまた俺の顔を見る。どうしたんだろ? そんなに俺のことを変なヤツだって聞かされてるのか?

「さくらちゃん、偶然だねぇ。さくらちゃんのお姉さんなのぉ?」

 こちらに近寄ってきて神凪に話しかけた日和を見て、お姉さんはさらにびっくりした顔になった。

「こちら……天心君の彼女さん?」

 お姉さんの横で、神凪はなぜか顔面蒼白になって、日和の顔をじっと見つめてる。引きつった顔をして、神凪は体調が悪いのか? 大丈夫か?

 それなら買い物なんかしてないで、早く家に帰って休んだらいいのに。
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