同級生で美少女の巫女さんが、陰キャの俺に興味を持って追いかけてくるのは何故なのか?

波瀾 紡

文字の大きさ
52 / 56

【52:超大作ファンタジー映画】

しおりを挟む
 映画館に入って、三人並んで座席に座った。俺が真ん中で、左隣に日和、右側にさくら。学校の席と同じ並びだ。なんだか変な感じで面白い。

 映画が始まってしばらくして、ふとさくらの横顔をチラ見した。熱心に映画に見入るさくらの顔が暗闇の中で、顔の前だけスクリーンの光に照らされている。顔の陰影がはっきりするからか、さくらがいつもよりも一層綺麗に見える。

 ああ、デートの大定番の映画鑑賞。隣に日和さえいなければ、ホントにデート気分を楽しめたのに。

 そう思って今度は日和の顔をチラ見した。

 ──あ、日和もやっぱり可愛いじゃないか。

 いやいやいや、何を考えてるのか俺は。
 確かに日和も可愛いけど。

 改めて自分の心の内に自分で目を向ける。うーん、やっぱり俺は、さくらが好きだな。見た目だけじゃなくて性格も可愛いって思えるし、理屈抜きで好きだって感じもする。

 ん? さくらの性格が可愛い?
 あれほどまでに避けようとしていた、あの攻撃的なさくらの性格が可愛いだって?

 もしや俺は、気が狂ってしまったのか!?

 ──あはは、そんなことないか。一緒に色々と時間を過ごすことで、さくらのあの振る舞いも、きっと彼女の不器用さの表れだと思えるようになってきた。なんだかんだ言って、やっぱり俺にはさくらが可愛い。


 横に座るさくらのことが気になって、なかなか映画に集中できなかったけど、そのうち気がついたら俺も映画に見入ってた。映画は魔法の世界を舞台にした、ファンタジー超大作だ。



 やがて映画はクライマックスに近づいて、主人公の男の子が悪い魔法使いと最後の大勝負をする場面を迎えた。お互いに強力な魔法を出してせめぎ合う。

 敵の悪い魔法使いの攻撃が、あわや主人公の心臓を貫きそうになって、すんでのところで避けたけど、主人公は大怪我を負ってしまった。

 はらはらドキドキの大ピンチで、手には汗がじっとりと滲んできたのがわかる。

「ん?」

 その時、肘掛に置いていた俺の手のひらが、急にぎゅっと握られた。見るとさくらの手だ。さくらの手のひらも、汗がじとっと滲んでる。

 思わずさくらの顔を見たら、真剣な顔でまっすぐスクリーンに見入ってる。主人公のピンチで手に力が入ってるみたいだ。俺の手を握ったのは意識的なのか無意識なのか、よくわからない。

 俺がさくらの手をぎゅっと握り返すと、さくらの手はそれに応えるように、また俺の手をしっかりと握ってきた。

 やっぱり意図的に俺の手を握ったんだ。握り返される感触が心地いい。広くて暗い映画館の中で、二人だけが繋がってるって感覚。

 俺はまたスクリーンに視線を戻して、何食わぬ顔で映画を観る。だけどぎゅっと力を入れたままのさくらの温かい手の感触に、ドキドキと心臓が高鳴ったままだ。

「ん?」

 左側の日和が何かに気づいたのか、俺の方を見た。やばい! さくらと手を握ってるところを日和に見られたらどうしよう。いや、角度的に日和からは見えないか? いや、でもやっぱり見えそうだ、とドキドキする。


 右側のさくらの手の感触にドキドキ。
 左側の日和に気づかれないかドキドキ。
 そして正面の映画の、主人公のピンチにドキドキ。


 なんだこれー!?
 一粒で三度美味しい……じゃなくて、一つの映画でトリプルドキドキ!

 こりゃ、アカン。心臓発作で死んでしまいそうだ……


 今まで能力を封印していて普通の人間だと思われてたヒロインが。主人公を心から愛するそのヒロインが、実は強力な治癒魔法を持つ白魔導師だということをカミングアウトして、瀕死の重症を負った主人公を助けた!

 ヒロインは魔法を使うと、自分自身が死んでしまうという呪いをかけられてるにもかかわらずだ! ああ、だめだよ、ヒロインが死んじゃうよ……

 主人公はその事実を知って、そこまでして自分を助けてくれたヒロインのために大泣きしながら、悪の魔法使いに立ち向かって行った。主人公もヒロインのことを大好きなんだ。

 ヒロインを想う気持ちが主人公の秘めた力を呼び起こして、とうとう悪の魔術師を倒した!

 やったぜ、やった!

 でも、このままヒロインは死んでしまうのか……

 悲しい。悲しすぎる。

「うっ、うっ……」

右隣から嗚咽の声が聞こえてきて見たら、さくらの目から大量の涙が溢れてる。さくらがめっちゃ泣いてる。ひっくひっくとしゃくりあげながら、肩を震わせてる。


 あっ、悪の魔術師が倒されて、ヒロインにかけられた呪いが解けていく!
 ヒロインは死なずにすんだ! やった!
 まさかこんな展開になろうとは、思ってもみなかった。


 感動的なラストシーンが終わって、エンドロールが流れ終わっても、俺もさくらも席を立つことができないくらい感動してた。場内が明るくなってもじっとしてる俺とさくらに、日和が声をかけてきた。

「天心くーん、さくらちゃーん、そろそろ行きますよぉ」
「えっ? ああ、そうね。行きましょうか」

 さくらはハッと気づいたような顔をして、握っていた俺の手を離した。そしてその手で涙を拭いながら席を立つ。俺も席を立って廊下に出た。


「いやーよかったねぇ! 感動した感動した!」

 廊下を歩きながら、さくらはまだ目が赤いまま、にっこにこして言った。

「良かったですねぇ」
「まさか最後のところで、ヒロインが助かるなんて思っても見なかったよねー」
「へっ?」

 さくらの言葉に、日和が意外そうな声を出した。まさか日和は、あの展開を予想してたと言うのか?

「ああ、俺も驚いたよ。まさか敵のラスボスを倒したら、ヒロインが奇跡的に助かるなんて、思いもよらないよな」

 そんな感動的な展開を予想してる観客なんて、誰一人いないはずだ! 俺はヒロインはこのまま死んでしまうと思ってたから、完全に予想を(良い意味で)裏切られた!

「でしょーでしょー! 天心君もそう思うよね~」
「ああ、俺もそう思う」
「あ、ああそうですねぇ。よ、予想外でしたねぇ」

 日和はなぜか苦笑いしてる。なぜ苦笑いしてるんだ日和?

「それに、ヒロインが実は秘めたる力を持った白魔導師だったなんて、全然気づかなかったよ!」
「うん、それそれ。私も気づかなかった!」
「へっ?」

 俺とさくらがテンション上がってるのに、なぜか日和はまた変な声を出して、ぷっと笑った。なんなんだよ日和は?

「なるほどですねぇ。天心君の間抜けさに、益々拍車がかかってますねぇ。能力を強力に封印しすぎましたですかねぇ。まぁさくらちゃんは天然のようですけど」

 日和が何かぼそぼそと言ったけど、よく聞き取れなかった。

「え? なんだって?」
「いえ、あのですねぇ。もしも天心君が秘めたる能力を持った人で、その能力を使ったら死ぬって場合、さくらちゃんがピンチだったらその能力を使いますかぁ?」

 日和がにやにやしながら訊いてきた。映画と同じように、自分が死んででも愛する人を救えるのか?という質問。俺は即答できずに、固まってしまった。

「私なら、天心君を助けたいな」

 俺の代わりにさくらが即答した。俺は思わず立ち止まって、さくらの顔をじっと見つめた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。

久野真一
青春
 羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。  そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。  彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―  「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。  幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、  ある意味ラブレターのような代物で―  彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。  全三話構成です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...