夢追い旅

夢人

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 再び、あの不思議なスナックの椅子にもたれている。
「詐欺師という条件で、歓迎するわ」
 相変わらず表情のない顔で団長が答える。ケイ君がにこにこ笑って隣の席にかける。
「詐欺師と呼ぶわけにはゆかないから、狐でいいかしら?」
「狐、悪くない」
 ケイ君が一人納得している。
「私はビールにするけど」
「同じので」
 いつの間にか、カウンターに6人ほどの顔が並んでいる。周平が周りを見渡していると、
「一人心配な子が欠けているんじゃないの?」
と笑いながら、ビールを注いでゆく。
「この子は、狐のファンだからね」
 ひょっこりとカウンターの中からカオルが顔を出してる。
「本当に鋸で引きはしないよ。カオルがあんたを呼ぶって言わなかったら、この席に座ることはなかった。でも、座ったことがいつの日にか後悔することになるかもね」
「団長らしい言い回しだよ。この俺もそう言われたが、結構楽しんでいるよ」
 ケイ君が話をとりなしている。
「カオルさんもビールを飲んでるが?」
「ああこの子の好物だよ。でも歳は見た目より上だから心配はいらない」
「歳は言わないこと!」
 カオルの目が吊り上る。
「これはクラブの厨房で頂いたものだから、遠慮なくいただいて」
 さっとあちらこちらから手が伸びてくる。カオルが周平の分を皿に分けてくれる。
「この集まりは劇団か何か?」
「何かちょっとましなことをしようと5年前から始めた。もともと本業はスリ集団だね」
 ケイ君が悪ぶりもなく言う。団長も否定しない。
「このスナックは昨年亡くなったママからいただいた。家賃さえ払えば使えるようにしてもらっている。この2階にカオルと私が住んでいる」
「姉妹?」
「あまりまとめて質問はしない。なんでも、最初から分かってしまったら面白くない。狐も、最初は詐欺師からの出発よ」





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