夢追い旅

夢人

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ホワイトドーム

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 映子に、今日は帰らないというメールを送る。このメールを早く送ると、次の日はやたらと機嫌がいい。会社には、飲み会後直帰!という在り来たりのメールを流す。
 夕暮れている終電の駅を降りて、思い出しながら歩く。迷路の街だ。ホワイトドームというスナックの名前が見当たらない。やはり一筋間違えたのか。轟が用意してくれていたラフな普段着に着替える。体型は調べてくれたようだ。こんなラフな格好をしたのは、大学以来だ。
 路地を曲がろうとすると、ゴミ箱に腰かけていた女が声をかけてくる。
「遊ぶの?」
「いや、この辺りにホワイトドームていうスナックなかったかな?」
「ホワイトドーム?知らないね」
「可愛い女の子のいる店だけど」
「カオルちゃんの店ね。それならそこの半開きになっている店よ」
 確かに、どこにも看板がかかっていない。いや、ペンキが薄れてしまったようだ。これでは一見の客は入らない。
「誰かいるかな」
 薄暗い店の中には誰もいない。でも間違いなくこの店だ。
 仕方なくカウンターにかける。
「狐だ!」
 わっと飛びついてくるものがあった。
「みんなは?」
「今日は別の店でお芝居よ。これには私の出番はないから、お留守番」
 周平はじっくりとカオルを見つめてみる。それほど歳がいっているようには見えない。
「ビール抜くわ」
 小皿にピーナッツを盛ってくれる。
「この辺りでお仕事?」
「ああ」
「詐欺師って楽しそう!私にも役をちょうだい」
「どうしても詐欺師でないとダメみたいだなあ」
「私詐欺師に恋した」
というなり吸盤のように吸い付いてくる。煙草の臭いが少しする。中学生ではなさそうだ。
「呼吸ができないよ」
「団長も好きだけど、やっぱり狐がいい」








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