夢追い旅

夢人

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初仕事

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 轟の呼び出したホテルに着く。M商事からさほど遠くない。国会議員とよくここで打ち合わせで待ち合わせする。国会議事堂からすぐのところにあり、簡単に打ちわせには便利な場所だ。大きな喫茶ルームがあって、一人で轟がガラス越しに座っている。サラリーマンの格好になっている。周平は逆に場違いなラフな姿だ。
 メモ用紙に、「耳を澄ませて」と書く。
 ウエイトレスに小声でコーヒーを頼む。轟の視線が、植木の向こうの席を見ている。周平は途中で買った週刊誌を広げて、座っている二人の男の横顔を見る。一人はM商事の社長の顔だ。こんなホテルで、まさか秘書とコーヒーを飲むというようなことはないはずだ。
「もう一人は?」
 轟のメモ。彼は盗聴をしている。
「あのプロジェクトは調べられたか?」
「不動産部長を読んで聞きましたが、赤坂の地上げをしているということですが」
「それは分かっている。どこと組んでいるのだということだ」
 周平はメモ用紙に、当社の専務と書いた。この専務は、昔、社長有力候補の一人だった。いつの間に、社長派になっていたのか?これは課の調査にも出てきていない。すべての取締役は、それぞれのグループ分けで管理されている。これは加瀬係長の範囲の仕事である。
「このプロジェクトは会長マターで、開発部が担当しているようです。数社の会社が絡んでいるようですが、それぞれはダミー会社を使っているので登記ではわかりません。当社もかなりダミーを入れているようですが、2500億は下らない投資はすでに」
「銀行の方でも心配している。頭取から直接話があった」
 銀行はM銀行と書いた。社長の出身元の銀行だ。
「不正融資?」
「今、銀行の方でも支店長を調べている。彼の直属は、副頭取だからね」
 携帯が入ったらしく、社長が頷いて立ち上がる。
 轟のメモ。「もう一つ確認してくれ」
 轟は勘定を素早く済ませると、予め予測していたようにエレベーターに向かう。周平は、離れてその後ろを追いかける。社長はエレベターの前に悠々と立つ。ここは一緒に乗り込むべきか。轟は首を横に振って、一人だけ乗り込んでゆく。
 すぐに轟から「32階」と一言あり同時に乗り組む。
 エレベータがついたとき、社長の背中が見えて、思わず自分の目を疑った。







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