夢追い旅

夢人

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狼たち

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 意外な結果でマドンナから遅れて出てきたのは舅の取締役だった。その電話をもらった時、思わず声を上げそうになった。あの舅が女性に恋するとはどうしても思えない。どう見てもマドンナは柳沢の女だ。でもなければ、加瀬の死の片棒を担ぐことなどするはずがない。だが、一切打ち明けない舅に告げ口をする義理もない。
 加瀬の後始末に新人を連れて回った。自殺したとなると悪い話ばかり出る。かなり強引に金をせびっていたようだ。それにツケが吃驚するほど出てくる。うんざりしてた頃にぼそぼそと携帯が入った。
「・・・」
 聞き取れない。携帯を見ると、ベンチャーの旗手からだ。
「新橋のNビルに来てくれないか?」
「何時に?」
「出来るだけ早く、下に来たら携帯を入れてくれ」
 それだけで切れる。
 Nビルに住んでいるという話は昔に噂で聞いたことがある。ビルの前まで来ると、社長の車がするりと出てくる。
 黙ったままで川崎まで走る。川崎に入ると細い路地の中をくねくね曲がる。1軒の古いスナックに入る。
「連れてきたよ」
「それはわざわざ」
 ソファにかけているのはなんと黒崎だ。
「もう20年来の悪がき仲間だ」
「私が一番若いが」
 何人かは週刊誌やテレビで見た顔ぶれだ。
「いよいよ世代交代だ」
 だいたい40歳から50歳前半に見える。その中で黒崎が一番上だろう。8人ほどが気ままにグラスを傾けている。
「赤坂は俺たちでまとめ上げる」
「もちろんだ」
 彼らは口々にしゃべる。どうも周平の紹介などする気はないようだ。でもそのほうが気が楽だ。周平は水割りは苦手なのでビールを瓶ごと飲む。ママも客に酒を注ぐようなことをしない。
「この人たち狼よ!あなたは仮面を被った狼かしら?」



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