夢追い旅

夢人

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ベットの風景

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 退職願いを出した間、毎日お昼の時間に一人でカオルを見舞いに出かけている。団長は新しい公演が入ったようで毎日ケイ君と出かけている。これはケイ君が書いた新しい出し物で、初日は段取りに失敗があったらしく夜にホワイトドームで反省会があった。
 カオルは毎日周平が出かけるようになって、気持ち元気になったように思う。
「カオルが抜けてから団長困っていない?」
 団長が新しい出し物の話をしていたようだ。
「昨日は初日の反省会があったよ」
「そうだろうなあ」
 カオルはベットの横の台本を開く。これは団長が入院してから欠かさずカオルに頼まれて持ち込んでいる。
「裸のシーンが弱いのよ」
「あの代役の子ではだめなのかい?」
「あの子は未成年だから大胆なシーンはできないの。私なら歳だから」
 こんな調子で周平が無理やり食事を勧めながらカオルの話は続く。
「カオルは舞台が好きなんだなあ」
 最後のバナナをむいて口元に運ぶ。そうしないと食べ残してしまう。
「狐、会社辞めったってね?」
 相変わらず周平はカオルの狐だ。
「劇団に入らない?詐欺師の役をケイ君に書いてもらうからさあ」
 周平は最近できるだけ小まめにカオルの写真を撮るようにしている。何となくカオルがどんどん軽くなって飛んで行ってしまいそうな気がしている。これは団長も同じことを言っている。でもカオルは嫌がる。もっと元気になってから撮ってほしいという。
 看護婦が食事のトレーを取りに来ると、周平はゆっくり立ち上がる。カオルが起きていれる限界なのだ。
「私も伯母さんに会いたいな」
 やはり団長に話を聞いているのだろう。でも伯母にカオルを会わせたいと強く頷いた。
 ふと窓の外を見て、ほんのかすかにホワイトドームの2階の屋根が見えているのを発見した。





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