夢追い旅

夢人

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蜜柑の皮

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 森の中は靄が立ち込めている。熱海の駅まで轟が車で迎えに来てくれた。あまりにも予想外、いや忘れ去られていた事件だった。現場から少し離れた空き地に車を止めて山道を歩く。15分ほど登ると、テープが張り巡らされている現場に出る。
「M商事の監査役もあのチンピラもこの谷に飛び込んで死んでいる。まさか柳沢がとは思ったが、この森を見ていると決められた森だったような気がしたよ」
 煙草をくわえた轟がふーとため息を漏らす。
「9時半頃、別荘に向かった会長の車の後から柳沢の車が付けていたようだ。いきなり後ろの車がスピードを上げて突っ込んだ。ブレーキ痕はなかったということだ。会長と運転手は即死、柳沢は救急車の中で死亡、やくざの妹は重体でまだ生きているようだ」
 崖から柳沢の車体が見える。
 携帯が鳴って轟が頷きながらしゃべっている。
「ダチの元刑事だ。殺人事件として本部が置かれた。柳沢の手帳が発見されたようだ。そこに殺すとあった」
「そこまで恨みがあったのか」
「その手帳に書かれているのだろう」
 さすがに警察も今回は事故としては扱えない。
「手帳の内容は見れないだろうな?」
「試しに調べさせている。これも報酬料の範囲にしてくれ」
「ああ、どこまで書いているか。こちらも呼ばれることになるかもな」
「柳沢が周平がどこまでかかわっていたかを知っているかだな。彼奴の頭の中までは分からん」
 警官が崖から上がってきた。立ち去れという身振りをする。とっさに記者の腕章を見せる。それから携帯を無意識にかける。
「『噂の真相』に柳沢の記事を載せる」
「今日テレビで見たよ。準備しておく」
 この事件は赤坂に繋がりベンチャー事件に繋がっている。闇の中でこそ歴史の事実が組み立てられている。表の報道は蜜柑の皮のようなものだ。






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