夢追い旅

夢人

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物語の余白4-4

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 一人二人と酔いつぶれて姿を消してゆく。私は未完の物語の続きを聞いている。私は小説家の片端に席を置きながら主人公の周平を分かったつもりでいたが、すでに私の中の周平はもうその位置にいないことが分かった。
「団長、いや聖子は死期を感じていたのか色々な言葉を残していった。ユキを正式に婚姻届を出して死んだカオルの後に入れるように言った。。だから小さいカオルは二人の子供だ。聖子は戸籍上にはどこにもいない。最後まで記憶も戻ることはなかった」
 カウンターに並んでいるのは周平の背中にもたれているカオルと私と周平だけだ。
「でも私と娘のカオルを愛してくれていた。小さいカオルがアンとカオルの血を引き継いでいると言っていた」
「カオルの父はケイ君だったのでは?」
「そうだろうと思うが分からない」
「ケイ君の姿が見えないが?」
「彼は団長を愛していた。実際私が現れるまでは団長の愛人だった。団長が亡くなって2か月後、覚えているかなあ、ケイ君と初めて会った終電の駅で電車に飛び込んだ。私の影のように生きてきた」
 いつの間にかカオルがビールの小瓶を3本カウンターに並べる。
「小さなカオルは子供の時から異常に私に纏わりついた。カオルの怨念のようにな。18歳の時まで一緒に風呂に入りたがった。団長は私が風呂場でカオルが私を受け入れたことも知っている。その時団長はこれは決められたあらすじだと言った」
「団長は私にアンの役を譲った。そして一番若い頃のアンの物語を書き上げたわ。初上演の日に耳元で囁いた。あなたが周平の子供を産みなさいと。これで始めてカオルと周平の血が繋がるのだと。来年の1月には生まれるわ」
 私は周平の目にこれも書けと言うのかと問いかける。
「ある日私は夢の中に落っこちた。それからずっと夢の中で旅を続けている。夢の外にいるのはお前だけだ。お前と話しているときだけ、昔の孤独な自分を思い出せる。あの頃は伯母いやアンのようにはなりたくないともがいていた。それが今はアンの懐にいる。温かいなあ」 (完)
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