上 下
88 / 233

日本人街8

しおりを挟む
 空箱を積んだ荷隊が街道を進む。本当の荷は森の洞窟に隠した。茉緒は鉄砲隊を街道の草むらに隠した。茉緒は一人木の上に登り街道の先を見渡す。荷隊のはるか後ろに九郎の騎馬隊が並んでいる。茉緒の馬も木の下に繋いている。象隊が進んでくる。象隊の横に歩兵がいて少し離れたところに騎馬が50ほど並んでいる。立派な兜を被っているのが大将だ。
 下に向かって赤旗を上げる。ちょうど先頭の象隊が真下に来た。10艇が同時に撃ち放つ。象が暴れ出す。偽の荷隊が街道をよける。歩兵が象に蹴散らされている。大混乱だ。茉緒は後ろの向かって白旗を振る。これで九郎の騎馬隊が走り出す。茉緒は空に舞って馬にまたがる。
「九郎行くぞ」
 声をかけると騎馬の先頭を走る。相手の兵はもうそれどころではない。その中を付きにけるように走る。
「切るな突き落せ!」
 まず九郎の騎馬隊が相手の騎馬に突っ込む。九郎は棒で見事に騎馬の兵を突き落していく。腕前は立派なものだ。茉緒はその間をすり抜けるように走る。だが馬の上に人の姿がない。慌てて九郎が後ろを付いてきている。彼は茉緒の術をまだ知らない。次の瞬間茉緒は相手の大将の背にまたがっている。
「動けば首を撥ねる」
「誰だ?」
「アユタヤの魔王だよ。兵は大将を捕えられたと伝えよ」
「凄い技ですね」
 九郎が並ぶ。
「荷のところに戻る。すぐに出発する用意だ」
「どうして急ぐのですか?」
「歩兵の後ろから街に入るのだ」


しおりを挟む

処理中です...