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日本人街9

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 シェムリアップに荷隊が到着する。荷隊の先頭に九郎の騎馬隊が進み、その中茉緒とシェムリアップの部隊の隊長が並んで馬に乗っている。この隊長はどうもこの部族の長男だそうだ。昨夜酒を飲みながら妙に親しくなったようだ。彼もこの交易には興味を持った。
 市の広場に入る周辺にシェムリアップの兵が隠されている。だがすでに他の部族も集まってきていて手の出しようがない。荷隊は荷を卸し市に並べてゆく。3千ほどの商人達が集まっている。もはやこの流れは止めることはできないだろう。群衆の中を騎馬隊が50頭ほどやってくる。
 茉緒と隊長が九郎の騎馬隊10頭を連れてその騎馬隊の後を付いていく。1刻半走ると大きな館が見える。茉緒と息子が馬から降りて館の中に入る。長椅子の中央に恰幅のいい男が座っていて周りに5人年寄りが座っている。
「そなたは女だったのか?それにしても相当の腕だな?」
「私は日本から来た忍者です。藤林という忍軍です」
「ここまで踏み込まれたら負けだ。さすがにワンバットを打ち破ったと言う噂は本当だったのだな?」
「ワンバットはご存知ですか?」
「この辺りは小部族が点在していて戦ったり協力したりで生き残っているのだ。一時アユタヤが力をつけた時我らは属国のように仕えた。今はビルマが力を持っているが、いつまで続くか分からない」
 まるで伊賀の忍者のようだ。
「アユタヤもビルマもラオスももうそんな力はありません。宗久さんと私は皆さんと戦う気はありません。アユタヤは交易で生きていきます」
「そうか。ならここから北はシェムリアップに任せてくれ」
「もちろん」
「これから息子に交易を任すよろしく」








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