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和寇11

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 未明に果心居士が帰ってきた。地図を出して偽の抜け人村の地図を出す。
「ここの元の砦に柳生と服部が30人おる。この反対側の崖から攻めるのがいいだろう。相手はこちら側に下忍を忍ばせている。今から尾根を走って出るぞ」
「分かった。九郎は鉄砲を持たせて20人を連れて来い」
 2刻を走って果心の言う崖に出た。茉緒は下忍を使って反対の尾根道から来たように手配させる。それからゆっくりと崖を下りて砦を見張られるところに鉄砲隊を配置する。砦の外に10人ばかり出ている。
「よし一気に攻めるぞ」
 鉄砲を撃ちかける。中から10人ばかり出てくる。
「次は火薬玉を投げ込め!よし突撃だ」
 九郎を先頭に切り込む。一気に半分は倒したようだ。それが砦に入った下忍が2人切られて飛び出してくる。片目の柳生だ。
「幻の藤林のお頭か?柳生十兵衛だ」
と言う途端に九郎の剣を躱して脇腹を切り裂く。茉緒がすかさず九郎の体を押して間に入る。十兵衛の剣が恐ろしいほど伸びてくる。思い切って飛び去るが足に剣が突き刺さった。次の瞬間もう上段で切り込んでくる。転がって下から剣をすりあげる。思わず飛び上がっている。
 何ということだ遅れて飛んだのに十兵衛は同じ高さに飛び上っている。空では容易に向きを変えられない。このままでは上から切り込まれる。その時黒い鳥が間に挟まった。果心が足を十兵衛と茉緒の間に差し出した。十兵衛の剣が足を切り落とし茉緒の剣が右肩に食い込む。
 次の瞬間十兵衛は柳生に運ばれていく。茉緒は慌てて果心の体を支える。
「恐ろしいやつだ。儂の鉄の足を切り落としよった。茉緒は?」
「刺し傷です。九郎は?」
「はい。傷は浅いです」
「引き揚げるぞ!」









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