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動乱10

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 予想外のことが起こった。表門に国境にいたワンバットと高官の兵が2千5百戻ってきてしまったのだ。この軍を率いているのはワンバットの長男だ。王宮にはまだトップを失った兵が2千残っている。ヒデの兵が今は何とか抑えている。王と宗久は親衛隊に守られている。
 次男が馬に跨って前に出る。長男がそれを見てやはり馬に跨り前に出る。
「父は王に付くと決めた。兵を解散させるのだ」
「それがどうした?これからは私がワンバットを束ねる」
 ヒデがいつの間にか茉緒の横に来ている。
「主要な隊長はすべて捕まえています。大半の兵は高官を評価していません。どうも聞いた話ですが、高官とワンバットの長男は内々に組んでいたようです」
 すでに兄弟の戦いは始まっている。兵は見守っているだけだ。王と宗久が高台に顔を出している。もうここまで来たら二人の戦いを見るしかない。2度馬上で剣を交えている。腕は次男の方が数段上だ。これは次男に掛けるしかない。3度目のぶつかりだ。次男が長男の剣を躱すと長男の馬に飛び乗った。その瞬間長男が馬からずり落ちる。
「ワンバット!ワンバット!」
 同時に兵の叫び声がと轟く。
 茉緒はゆっくり王宮の階段を上がる。その後を次男が上がってくる。
「ご苦労だったな」
「いえ、これからワンバットは彼が族長です」
 王が次男に握手を求める。
 一晩宮殿で祝いがありヒデは2千を率いてアユタヤに戻る。茉緒は次男の2千の兵とともにワンバットに戻る。さすがに果心も飽きているだろう。ひょっとしたら父の記憶を消してしまっているかもしれない。











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