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近衛軍7

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 森の向こうは長い坂道が続いている。今ここを和寇の兵が砂煙をあげて引き揚げている。ワンバットの頭が兵を連れてやってくる。
「あそこにベトナムの城があります。今は和寇が占領しているということです」
「馬を1頭置いてあの砦に戻ってください。出来たらあの砦にワンバットも人数を置くことを検討してもらえませんか?」
「茉緒さまは?」
「ベトナムの城に潜ってみる」
 茉緒は走ると最後の兵を押し倒してその鎧を身に付けて城の門の中に入る。ここは立派な石垣でずいぶん古そうな城だ。兵の長屋に入って食事を食べると床の莚に転がる。話からは和寇の兵が2千とベトナムの兵が3千いるようだ。ここの王はチャクラバットの言いなりだそうだ。王宮の他に立派な建物があるがここにチャクラバットが住んでいる。
 夜になって黒装束に変えて屋敷の天井に入る。覗き込むとチャクラバットが酒を飲んでいる。横に見たことがある娘が男の子と座っている。あれは凜の子供だ。だが一人でここから救い出すのは無理だ。
「何をしているの!」
 梨花が赤い中華服を着て現れる。
「いや、まさかアユタヤの兵が来るとは?」
「ここを封鎖されるとラオスにもビルマにも行けないわ。でもアユタヤが出てきたらここの力では無理ね。私は海から攻めるからまず砦を取り返すのよ」
 梨花は今度は海から来るのか?茉緒は天井を抜けると火薬庫を探す。とにかく反撃ができないようにする必要がある。火薬庫の入ると導線を外まで繋いで火をつける。そこから思い切り闇の中を走る。門を出て坂道の中ほどで大爆発が起こる。
 これでしばらくは攻めてこないだろう。森まで戻ると下忍が5人現れる。





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