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危機9

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 夜が明けて梨花が騎馬隊を連れて右側と左側から包み込むように攻撃を掛けて来た。前の鉄砲隊に気が取られていたようだ。二つに分かれるとこちらの勢力は誠に弱い。真ん中を鉄砲隊が前進をする。茉緒は徐々に中央から下がって丘に戻る。夜の間に下忍に丘の手前に火薬を埋めさせている。
「左側に梨花がいる。リーは右側の大外を騎馬隊3百で攻めてくれ。相手の騎馬隊が崩れたら中央の鉄砲隊の突撃するのだ。私は下忍の10騎で梨花を刺激する」
 そういうなり茉緒は騎馬に跨って歩兵の間から抜けていく。梨花の騎馬が見えるところに来る。梨花は怒りに任せて向きを変える。茉緒は思い切り無理をして梨花と剣を交える。
「ここが墓場よ」
「まだ梨花には負けない」
とは言ったもののここで押し切られたらお終いだ。剣を交えても右側の動きを見ている。よしやった。騎馬隊を蹴破り相手は後退している。だが追いかけず中の鉄砲隊に突撃した。
 その時丘の左奥から砂煙が上がる。なんだ?新手か?空に黒い鳥が見える。その鳥が急降下して茉緒の上に来る。
「ワンバットが来た!」
 砂煙の中からワンバットの旗が見える。中央の汎王の旗が海に向かって動き始める。果心だ。いつの間にか茉緒の背中に着陸している。
「宗久がワンバットとビルマを口説いた。2千騎が来ている」
「ワンバットにはしばらくここを確保してもらうように頼む」
 そう伝えると果心は再び舞い上がった。崖に目をやると煙が上がっている。汎王は撤退を始めた。今度は丘の旗を振らせる。リーの騎馬隊が反転をして戻ってきている。ワンバットの騎馬隊が逆に鉄砲隊に突っ込んでいる。
「りー!アユタヤに走るぞ!」



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