けもの

夢人

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けもの吠える3

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 3日あまりにも静かな日が続いた。明け方薬売りが飛び込んできた。谷の河口に幕府の鉄砲隊3百と足軽が2千着いたようだ。指揮は宗矩が取っているようだ。狗は狐を始め蝙蝠の鉄砲隊を30人引き連れている。
「まず3百の鉄砲隊を谷の中腹に引き込む。20人は鉄砲を撃ちながら下がるのだ」
 この声で蝙蝠が進む。残りは火薬を仕込んだのを確認して山に登る。火薬の爆発は狐が指示した10人が狙いを定める。
 2刻が経って幕府の鉄砲隊が登ってくるのが見えた。その後ろに馬に跨っている宗矩が見えた。一斉に蝙蝠の隊の鉄砲が火を噴いた。数ではたかが知れている。撃ちながら下がっている。圧倒的な火力の差だ。どんどんと川を登ってくる。明らかに押されているように見える。その後ろを足軽が続く。夏の陣以来の戦いだ。
 狗はこの戦いの1月前に全国の大名に秀頼の名で家康が影武者であったことを書いた文を送っている。今更どうこう出来るものではないが大きな兵をここで動かすことはできないはずだ。蝙蝠が山に上がってきている。狐が合図を送った。残った10人が火薬の印を目がけて鉄砲を撃つ。
 至る所で爆発が起こる。後ろから来た足軽も巻き込まれている。
「今まで貯めて来た半分を使った」
「これほどあったのか?」
 薬だけではなく火薬も扱っていたのだ。同じほどの火薬もムササビが運んできている。これはけものの最後の戦いだ。半刻ほど爆発が続いて黄色い煙が川を覆っている。大半の鉄砲隊が全滅して足軽の死体も夥しい。
「よし引き上げる」
「薬売りを残していく」
 これからだ。
 隠れ家に戻ると鼠から報告があった。地図を広げて、
「北の山の尾根に夥しい足跡が見つかりました」





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