冥道

夢人

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倏忽6

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 女社長が臨時取締役会を開いて役員の入れ替えを強引に銀行の力を使って行った。専務が反対したが有無も言わせず実行したので一躍人気が上がった。専務の陰鬱な空気に皆うんざりしていたのだ。銀行から更に1人入れ、専務派を2人を系列の会社に出して1人をオーナー派の元役員を復活した。それと元社長をファイナンス会社の常務に移籍した。明らかに懲罰人事だ。これで専務派とオーナー派が互角に戻った。
 それと合わせファイナンス会社の本社マター案件を2000億引きとることも決定した。これは専務が壁になって決まらなかったものだ。ファイナンス会社に持たせて整理をしてしまおうとしていたのだ。だがそれでは銀行は債務圧縮には応じない。債務の移行で窓際教室は更に35人を引き受けることになった。だが10人が系列の不動産会社に引き取られた。
 自殺者2名未遂者1名で私は度々労基局に呼ばれている。と言ってもこの頃はこれも形式になっている。それ程倒産会社屋や整理会社が増えてきていた。採用をするのは至難の業だ。あの自殺未遂の彼は鉄道会社から1億の賠償金を請求された。自己破産だ。
 久しぶりに債権処理部長から夜呼ばれた。何時もの赤坂の居酒屋だ。部長の他に同席しているのは先に移動した元次長だ。
「困っているのだ動いてくれ」 
 部長が言う。
「こちらの親会社も不良債権が出て社長が赤坂をしばらく延長すると」
 元次長が地図を見せて説明する。
「この部分の引き取りは1000憶でしたね?50人が退職する予定でしたね?会長は?」
「社長の手前口を挟めないようなのです」
「この土地はまだ地上に立ち退きが多数残っているはずですね?難しいでしょうね。それより前に引き渡した500億の土地は更地で向こうの土地と合わせるといい形の土地になるのではないですか?」
 開発の人は買い進めることしか考えていない。
「これ単体で売るのはどうですか?」
「売るのはもったいないな」
 部長がため息を漏らす。。
「一度顧問と話をして会長と。更地として合わせてどれくらいの値になる?」
「1000憶は下らないかと」
 向こうの社長としては債務が膨らむことを心配しているはずだ。あそこなら建築条件付きで売却は望めるはずだ。私としては何ともしても窓際教室の人数を消化したいのだ。
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