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1章
3. 振り回されるのはもうごめんだ!
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あれから(2話のラストシーン)家までトコトコとついてきた蒼。家にて、
「ただいま~すみれ起きてるか?」
「おかえり! お兄ちゃんが帰って来なくて寂しかったんだよ~」
「妹らしい言葉をありがとさん」
にひっと可愛く笑う妹、斗沢すみれ.中学3年生。天然な俺とは表裏しとても勘が優れており、髪の先は内はね外はねとボーイッシュなベリーショートヘアが運動神経の良さをものがたっている。
「お兄ちゃん、後ろのお方は?」
「同じクラスかつ部員の雪浜 蒼だ」
「こんにちはすみれさん、優一くんにはあんな事やこんな事をして下さいました。」
「あんな事やこんな事って...」
すみれの目が泳ぐ。
「お兄ちゃん、もしかして..!?」
「すみれ、それは勘違いだ!」
そこで蒼が追い打ちをかける。
「優一くんは厳しくも優しく、そして、散乱物の処理までして下さいました。」
おいおい、それ以上やめてくれ! お嬢様は卑猥(ひわい)なんですか!?っと言いたいが蒼のコンボがカウンターを退く
「私の見られたくない一面もご覧に...とても恥ずかしかったんですよ!」
「お兄ちゃん、今までありがとう」
最後の一言を告げ、わが妹は天国へと旅たったのさ、おしまい。って終わらせてたまるか!!
数分後、気絶から目を覚ましたすみれに、昨日の出来事を一滴も漏らすことなく耳へ注いだ。
「誤解も解けたようだし私は帰るね」
「そうだな、はやく長谷川さんの元へ帰ってくれ」
大きなため息をついた俺を擽(くすぐる)ように笑い、満足そうに、だけど何処か寂しそうに帰って行った。
唯一の親友か...
蒼さんが我が家を出て間もなくすみれが口を動かす。
「蒼さんとても綺麗だね」
「ああ」
「つ、ついに兄ちゃんがリアルに興味を持つようになったのね~私の今までの苦労は無駄では無かったのね~シクシク」
っと気にくわぬ母目線で感動しているすみれ。
「いくらオタクでも美人だの可愛いだのと思うだろ!俺にそういう権限はないのか!?」
「な~に照れちゃって、入学初日から付き合うなんて兄ちゃんらしくな~い」
「いやあんなやつと付き合えるか!」
こうしてアニメを見る暇もなく1日が終わった。
リリリリン・・・・目覚まし時計が朝を知らせる。
カーテンから漏れ出す一筋の光が部屋をつらぬく。
「ふぁ~もう朝か」
俺の朝はいつもはやい。
両親は会社の都合により家にいない為、弁当は俺が作らなければならない、勿論妹のぶんもだ。弁当を作る度、何故すみれの中学校は給食がないのかと思い吐息を漏らす。弁当を作りあげたあと洗濯物を干し、風呂を磨き、すみれを起こしに行く。これがいつものルーティンだ。なんだかんだ可愛い妹の為に家事をするのは悪くないが、女子らしく俺に弁当を作って欲しいものだ。
「すみれ、弁当持ったか?」
「持ってるよ、じゃ行ってきまーす」
「いってら」
慌てながらも華奢な笑顔で家を飛び出して行った。この妹の笑顔が俺の活力となる。
朝の登校にて。
「おはよう~優一」
「おはよう、イケメンは朝から元気がいいな」
「だからイケメンはやめてくれって」
いつもの友秋との会話に何故か今日はホッとする。
「今日の優一テンション低くないか? いつもだったら、このアニメのラストシーン本当に感動した~! 友秋には絶対に見て欲しい! というのが会話のスタートだろ?」
「それはお前のバイアスだ」
「それにしても何があったんだよ」
「俺軽音部に入るハメになった」
...........数秒間の沈黙
「それにしても何があったんだよ」
「軽音部に入るハメになった」
...........そしてまた数秒間の沈黙
「ホントに言ってるのか!? あの部活なんてクソ喰らえだったあの優一が!?」
「おん」
「アニメが命だと言い誰よりもはやく家に帰るあの優一が!?」
「おん」
「優一...学校に着いたら一緒に保健室行こう」
「おん、って俺は病人じゃない!」
「いつもの突っ込みに戻った!良かった~って何故優一が部活に入るハメになったんだ?」
俺は学校につくまで先週の出来事を能う限り友秋に話した。蒼の寝起きの悪さと部屋の汚さ以外はな。
「は~ハッハッハははあ! もうやめて笑いすぎて腹痛い」
「腹が痛いならお前が保健室いけ!!」
にらんだ通りの友秋の反応に苦笑しつつ教室へ入る。
2年になり2日目ながら、蒼の周りには多くの女子がかぶさっていた。そこからは絶え間のない嘉賞が言葉の列を並べていた。
「蒼さんってあの有名旅館の娘さんだよね、凄い!」
「美人だし、頭もいいし、羨ましいな~」
どれもこれもべた褒めの一方通行、彼女らは悪気ないが、蒼にとっては全くの逆効果だということは知っている。
だが俺はあくまで手助けをするだけだ。蒼が変わろうとしなければ何も意味がない。そんなことを思いつつ俺は席へ座った。クラスを見渡すと女子は主に2つのグループに分かれていた。蒼のように清純派な女子と今どきJKライフを楽しんでいそうなバラドルいや、ヴァンプ派とでも言おうか。金髪ショートボブ天使ちゃんは、後者の方か~と心の中で独り言を呟く。
午前も終わり、はやくも昼食の時間。俺はいつものように食堂で腹を満たすべく、弁当を持ち友秋と足を運ぼうとしたその時、
「優一くん部活動のミーティングするから今すぐ部室へ来なさい」
「は~!?蒼さん、そういう事は事前に言って下さいよ」
仕方なく友秋に事情を告げ嫌々部室へ向かった。
ガラガラ、と無駄に響く引きドアを開いて第一声、
「遅かったわね、優一くん」
「仕方ないだろ! お前、いや、蒼さんが急にミーティングするって言い出したんだろ!? って何をするんだ」
「特にないわ」
「ha?」
いや、もう訳が分からない。日本語聞き取れない外国人状態だわ。
「何なんですか! 俺を振り回したいだけですか?ドSなんですか!?」
と、一言二言告げ力強くドアを閉める。その時、ドアの喧騒に負けじと蒼の声が響き渡る。
「まって! その...友達と会話を合わせるのが嫌なのよ」
蒼の言葉と共に朝の出来事が脳を巡回する。会話の中心はいつも蒼だ。それが嫌だと言うことはオタクの俺でも分かるくらいだ。
「だったら素直にそうやって言ってくれれば良かったのに。蒼さんは会話のためがお上手ですね」
「ため?」
あ、この人自分の口調分かってないんだそうなんだ。
察しの付く人はお分かりだろう。すぐに言えばいいことを後手後手に回り込み恥ずかしそうに大事な言葉を告げる。
だから蒼の言葉は無駄に重く素直に俺に刺さる。そんな考え事をしている俺を不思議そうに蒼が綺麗な眼差しで見つめてくる。
「あ、なんでもない。一緒に昼食をとるのは今日だけですよ」
「この私と食事をとれるのよ、嬉しく思わないの?」
「わー嬉しい嬉しい、俺より多くの女子がその嬉しさを求めて蒼さんに食事を誘ってたのにな~」
「優一くんのバカ」
ライトノベルの『○○くんのバカ』というシチュエーションならヒロインの気持ちが染みるほど理解出来るが、いざ言われると何のことだかさっぱり分からん。そんなことを思いつつ長谷川さんの頼み、蒼の目標いや、問題という方が妥当だろうかそんなお題へ話を移す。
「それより今のうちに蒼さん中心のお嬢様話を撤回しなければ今後もっと苦しくなりますよ」
「それは分かってる、でもどうすればいいのか...」
「ですね...」
数秒間の沈黙が2人きりの空気を詰まらせる。
「今はその事を考えるのは辞めましょう。美味しく食事をとりたいので」
「そうだな、蒼さんの弁当は玉手箱ですからね、ってそういう所が特別扱いされる原因の1つでしょ!」
「言われてみればそうね」
この人俺より天然だと確信した。
「そういう優一くんの弁当もなかなかこってるじゃない」
「自分で作ってるんでね」
「へ~料理作れるんだ凄い」
「今蒼さん俺に褒めてくれましたよねですよね」
「う、うるさい! 勘違いしないで欲しいわ。この私が料理を作れないとでも?」
「いや、そこまで言ってないんですけど」
思わず2人の口から笑いが弾み出る。
「そうだ、蒼さん。俺もその解決策を見つけておくよ」
「ありがとう」
その言葉を告げた蒼の顔は優しく微笑んで今までにない温もりが目の奥まで温めた。
食事を済まし授業まで10分をきりかけた時、あおいの声が漏れる。
「その、蒼くん」
「ん?」
「これからも一緒に部活してくれるよね」
「ああ、アニメオタクばらされるからな」
「きっとバンドメンバー集まるよね」
「ああ、、きっと集まる」
「その、、、」
「その?」
「わ、私と友達になってくれるよね?」
「え? 嫌だ」
「その流れは、俺なんかでいいのか?蒼が良ければって言うんでしょ!優一くん!」
「分かりました。蒼が良ければ友達になろ」
「う、うるさい」
「いや蒼さんが言えって言ったんだよねそうだよね!」
そんな一方的な会話に押されつつも明るく退屈さを忘れるような... 何気ない30分間にアニメ1話同等の濃い時間を過ごしたと懐いていた。
『また優一くんが助けてくれるよね』
ライトノベルのセオリー化しつつある授業をはぶく現象に乗っかりきずけば放課後の部室にて、
「蒼さんいないな、まあいっか」
机に上げてある椅子を下ろし、小説(ラノベ)を開ける。
小説を読み続け20分が過ぎたとこだろうか、ドアの声音が部室をかきならす。
「蒼さん、俺が来てから20分ですよ!何してたんですか?」
「メスの黒山に埋もれて動けなかったのよ、それに」
「もう辞めてください!そんなゲスい比喩表現なんて使わないで下さいよ!」
「優一くんがそう言うなら...」
「その変なギャップも辞めてください!部長(ヒロイン)である蒼さんのキャラ固定して下さい !」
「なら、こうかしら」
「ん?」
「優一く~ん遅れちゃった、テヘ」
「可愛いです!萌えますけど友達になってまもない俺によくそんなポーズと言葉が出ますね ! 俺にそんなこと出来るなら女子にも自然と会話すべきでしょ!」
「オタクでリアル女子に興味のない優一くんだから出来るのよ」
なにかグサッとくる。オタクで3次元に興味がないことは事実だが...
「それより優一くん、ポスター得意かしら」
「ポスター?」
先程の萌えシチュエーションをマイフォルダーに圧縮し、
部活動にシフトチェンジする。
「字や絵は得意な方ですが、ポスターみたいにまとめるのは苦手ですね。部活動掲示板にでも貼るのですか?」
「そのたぐいね」
「なら蒼さんが作ればいいじゃないですか」
「私、絵のアビリティ0なの」
...?
「いや、どうせ俺にポスター制作押し付けたいだけでしょ」
「私、絵のアビリティ0なの」
...
「な、なら今からお題出すんで描いてみて下さい。なら~エレキギターで!」
この時の俺は蒼の絵心の無さに驚愕する事を知る由もなかった。数分後...
「描けたわ」
「俺も描き終わりました、行きますよぉ~せーの」
『ドン!』
「蒼さん、それなんですか...? 何かの野菜ですか?生物ですか?」
「失礼ね。れっきとしたエレキギターじゃない!」
「あは、そ、そうですね」
「これで分かったでしょ、私の画力を」
「なら美術の時間はどうしたんですか? 今までどう乗り越えてきたんですか!?」
「そうね、絵画やポスターは全部長谷川さんに任せていたわね」
それお嬢様の特権だよね? あの人(長谷川さん)ゴーストペインターになってるじゃん!という突っ込みを鬱憤として溜める。
「でも自分の弱点を皆にさらけ出すことで、周りの見方も変わってくると思いますが」
「過去に私美術だけ成績悪くて、教科担任の先生に『お前は俺のことが嫌いなのか?真面目にやれ !』と叱られたことがあったの。それが怖くてね...」
何も知らず指摘した俺に不甲斐なさを感じた。
「それにしても優一くん上手ね、何故優一くんは絵や音楽
運動がたけていてイケメンなのに何故モテないのかしら」
「女子とのコミュ力が無いからだ !あと、なのにの前がよく聞き取れませんでした」
「そ、そんなの知らないわ !」
定番のように蒼の頬が赤く染る。何故だ?
その後、俺は渋々ポスターを完成させ部活動掲示板まで張り付けに行き、今日の部活動は幕を閉じた。
吸い込まれるように家へ帰宅した俺をいつものように妹が『お兄ちゃんお帰り!すみれ1人で寂しかったんだよ~』と顔を擦り付けてくる兄妹シチュエーションもなく、
「お帰り~」
「んー」
の一言で済ませてきやがる。ちなみに前者が俺で後者が妹の言葉だよ。お兄ちゃん悲しいよ。
夕食、お風呂を済ませある1つの本題に取り掛かる。
「すみれ、ちょっといいか」
「何~?こんな遅くに」
「すみれに言いたいことがある」
「え!? 実は蒼さんとあんなことやこんなことをしていた。許してくれとか??」
「そんなことじゃない。相談だ」
「ふ~ん、兄ちゃんの悩み事か、悪くないだろう。言ってミソ」
「どうすれば女子とたわえもない楽しい会話が出来るんだ?」
「ぶッッはは! !お、お兄ちゃんナンパでもするつもり!?
3次元にでもときめいちゃった?」
「そんなことじゃない」
「そっか、なら蒼さんの悩みだね?」
「図星だ」
すみれの万笑が声音と共に律儀な表情へと変化する。
すみれの感は怖いほど優れ、それが確信すると嬉しそうにでも真面目に相談に乗ってくれた。
「そんなの簡単じゃん、今ドキの話題に乗っかれば良いだけじゃん~」
「そっか、それだ! ありがとなすみれ」
「そんなに褒めることじゃない」
ほっとした俺を見たすみれは、嬉しさを隠しきれないかのように、ニヒッとはにかんだ。
翌日の放課後、早速すみれの案を蒼に告げる。
「女子の今ドキの話題に乗りつつ会話をすれば良いと思います」
「それはいい案ね、確かに私JKの話題がさっぱりだわ。
まともな友達がいなかったからショッピングとか人気店に行きずらかったのよね」
あなたも立派なJKだろ!と突っ込みたかったが、蒼の瞳が嫌な予感を提議する。
「その...優一くん。明日私と付き合ってくれないかしら」
「どちらの意味の付き合うでしょうか?」
「それは、その...知らない!」
蒼も変わろうとして俺に頼んできた以上、断る訳にはいかない。
「明日は祝日ですし付き合いましょう」
つぼみが咲き開くかのように蒼の顔が微笑む。
「そう言えば優一くんとチャリン交換してしてなかったわよね?」
「そう言われてみればそうですね、明日の予定も取り合う必要があるので交換しておきましょう」
補足しておこう。チャリンとは無料でメールのやり取り、
無料通話が出来る優れアプリだ。
「そうね、男子と交換するのは初めてだけど」
さすが50人以上振ったお嬢様だなっと苦笑する。
「って蒼さんのトプ画なにこれ?」
「雪浜家の御紋よ。見て分かるでしょ」
「...ってそりゃお嬢様扱いされるだろぉぉおおおおお!!!!」
ー4話へ続くー
「ただいま~すみれ起きてるか?」
「おかえり! お兄ちゃんが帰って来なくて寂しかったんだよ~」
「妹らしい言葉をありがとさん」
にひっと可愛く笑う妹、斗沢すみれ.中学3年生。天然な俺とは表裏しとても勘が優れており、髪の先は内はね外はねとボーイッシュなベリーショートヘアが運動神経の良さをものがたっている。
「お兄ちゃん、後ろのお方は?」
「同じクラスかつ部員の雪浜 蒼だ」
「こんにちはすみれさん、優一くんにはあんな事やこんな事をして下さいました。」
「あんな事やこんな事って...」
すみれの目が泳ぐ。
「お兄ちゃん、もしかして..!?」
「すみれ、それは勘違いだ!」
そこで蒼が追い打ちをかける。
「優一くんは厳しくも優しく、そして、散乱物の処理までして下さいました。」
おいおい、それ以上やめてくれ! お嬢様は卑猥(ひわい)なんですか!?っと言いたいが蒼のコンボがカウンターを退く
「私の見られたくない一面もご覧に...とても恥ずかしかったんですよ!」
「お兄ちゃん、今までありがとう」
最後の一言を告げ、わが妹は天国へと旅たったのさ、おしまい。って終わらせてたまるか!!
数分後、気絶から目を覚ましたすみれに、昨日の出来事を一滴も漏らすことなく耳へ注いだ。
「誤解も解けたようだし私は帰るね」
「そうだな、はやく長谷川さんの元へ帰ってくれ」
大きなため息をついた俺を擽(くすぐる)ように笑い、満足そうに、だけど何処か寂しそうに帰って行った。
唯一の親友か...
蒼さんが我が家を出て間もなくすみれが口を動かす。
「蒼さんとても綺麗だね」
「ああ」
「つ、ついに兄ちゃんがリアルに興味を持つようになったのね~私の今までの苦労は無駄では無かったのね~シクシク」
っと気にくわぬ母目線で感動しているすみれ。
「いくらオタクでも美人だの可愛いだのと思うだろ!俺にそういう権限はないのか!?」
「な~に照れちゃって、入学初日から付き合うなんて兄ちゃんらしくな~い」
「いやあんなやつと付き合えるか!」
こうしてアニメを見る暇もなく1日が終わった。
リリリリン・・・・目覚まし時計が朝を知らせる。
カーテンから漏れ出す一筋の光が部屋をつらぬく。
「ふぁ~もう朝か」
俺の朝はいつもはやい。
両親は会社の都合により家にいない為、弁当は俺が作らなければならない、勿論妹のぶんもだ。弁当を作る度、何故すみれの中学校は給食がないのかと思い吐息を漏らす。弁当を作りあげたあと洗濯物を干し、風呂を磨き、すみれを起こしに行く。これがいつものルーティンだ。なんだかんだ可愛い妹の為に家事をするのは悪くないが、女子らしく俺に弁当を作って欲しいものだ。
「すみれ、弁当持ったか?」
「持ってるよ、じゃ行ってきまーす」
「いってら」
慌てながらも華奢な笑顔で家を飛び出して行った。この妹の笑顔が俺の活力となる。
朝の登校にて。
「おはよう~優一」
「おはよう、イケメンは朝から元気がいいな」
「だからイケメンはやめてくれって」
いつもの友秋との会話に何故か今日はホッとする。
「今日の優一テンション低くないか? いつもだったら、このアニメのラストシーン本当に感動した~! 友秋には絶対に見て欲しい! というのが会話のスタートだろ?」
「それはお前のバイアスだ」
「それにしても何があったんだよ」
「俺軽音部に入るハメになった」
...........数秒間の沈黙
「それにしても何があったんだよ」
「軽音部に入るハメになった」
...........そしてまた数秒間の沈黙
「ホントに言ってるのか!? あの部活なんてクソ喰らえだったあの優一が!?」
「おん」
「アニメが命だと言い誰よりもはやく家に帰るあの優一が!?」
「おん」
「優一...学校に着いたら一緒に保健室行こう」
「おん、って俺は病人じゃない!」
「いつもの突っ込みに戻った!良かった~って何故優一が部活に入るハメになったんだ?」
俺は学校につくまで先週の出来事を能う限り友秋に話した。蒼の寝起きの悪さと部屋の汚さ以外はな。
「は~ハッハッハははあ! もうやめて笑いすぎて腹痛い」
「腹が痛いならお前が保健室いけ!!」
にらんだ通りの友秋の反応に苦笑しつつ教室へ入る。
2年になり2日目ながら、蒼の周りには多くの女子がかぶさっていた。そこからは絶え間のない嘉賞が言葉の列を並べていた。
「蒼さんってあの有名旅館の娘さんだよね、凄い!」
「美人だし、頭もいいし、羨ましいな~」
どれもこれもべた褒めの一方通行、彼女らは悪気ないが、蒼にとっては全くの逆効果だということは知っている。
だが俺はあくまで手助けをするだけだ。蒼が変わろうとしなければ何も意味がない。そんなことを思いつつ俺は席へ座った。クラスを見渡すと女子は主に2つのグループに分かれていた。蒼のように清純派な女子と今どきJKライフを楽しんでいそうなバラドルいや、ヴァンプ派とでも言おうか。金髪ショートボブ天使ちゃんは、後者の方か~と心の中で独り言を呟く。
午前も終わり、はやくも昼食の時間。俺はいつものように食堂で腹を満たすべく、弁当を持ち友秋と足を運ぼうとしたその時、
「優一くん部活動のミーティングするから今すぐ部室へ来なさい」
「は~!?蒼さん、そういう事は事前に言って下さいよ」
仕方なく友秋に事情を告げ嫌々部室へ向かった。
ガラガラ、と無駄に響く引きドアを開いて第一声、
「遅かったわね、優一くん」
「仕方ないだろ! お前、いや、蒼さんが急にミーティングするって言い出したんだろ!? って何をするんだ」
「特にないわ」
「ha?」
いや、もう訳が分からない。日本語聞き取れない外国人状態だわ。
「何なんですか! 俺を振り回したいだけですか?ドSなんですか!?」
と、一言二言告げ力強くドアを閉める。その時、ドアの喧騒に負けじと蒼の声が響き渡る。
「まって! その...友達と会話を合わせるのが嫌なのよ」
蒼の言葉と共に朝の出来事が脳を巡回する。会話の中心はいつも蒼だ。それが嫌だと言うことはオタクの俺でも分かるくらいだ。
「だったら素直にそうやって言ってくれれば良かったのに。蒼さんは会話のためがお上手ですね」
「ため?」
あ、この人自分の口調分かってないんだそうなんだ。
察しの付く人はお分かりだろう。すぐに言えばいいことを後手後手に回り込み恥ずかしそうに大事な言葉を告げる。
だから蒼の言葉は無駄に重く素直に俺に刺さる。そんな考え事をしている俺を不思議そうに蒼が綺麗な眼差しで見つめてくる。
「あ、なんでもない。一緒に昼食をとるのは今日だけですよ」
「この私と食事をとれるのよ、嬉しく思わないの?」
「わー嬉しい嬉しい、俺より多くの女子がその嬉しさを求めて蒼さんに食事を誘ってたのにな~」
「優一くんのバカ」
ライトノベルの『○○くんのバカ』というシチュエーションならヒロインの気持ちが染みるほど理解出来るが、いざ言われると何のことだかさっぱり分からん。そんなことを思いつつ長谷川さんの頼み、蒼の目標いや、問題という方が妥当だろうかそんなお題へ話を移す。
「それより今のうちに蒼さん中心のお嬢様話を撤回しなければ今後もっと苦しくなりますよ」
「それは分かってる、でもどうすればいいのか...」
「ですね...」
数秒間の沈黙が2人きりの空気を詰まらせる。
「今はその事を考えるのは辞めましょう。美味しく食事をとりたいので」
「そうだな、蒼さんの弁当は玉手箱ですからね、ってそういう所が特別扱いされる原因の1つでしょ!」
「言われてみればそうね」
この人俺より天然だと確信した。
「そういう優一くんの弁当もなかなかこってるじゃない」
「自分で作ってるんでね」
「へ~料理作れるんだ凄い」
「今蒼さん俺に褒めてくれましたよねですよね」
「う、うるさい! 勘違いしないで欲しいわ。この私が料理を作れないとでも?」
「いや、そこまで言ってないんですけど」
思わず2人の口から笑いが弾み出る。
「そうだ、蒼さん。俺もその解決策を見つけておくよ」
「ありがとう」
その言葉を告げた蒼の顔は優しく微笑んで今までにない温もりが目の奥まで温めた。
食事を済まし授業まで10分をきりかけた時、あおいの声が漏れる。
「その、蒼くん」
「ん?」
「これからも一緒に部活してくれるよね」
「ああ、アニメオタクばらされるからな」
「きっとバンドメンバー集まるよね」
「ああ、、きっと集まる」
「その、、、」
「その?」
「わ、私と友達になってくれるよね?」
「え? 嫌だ」
「その流れは、俺なんかでいいのか?蒼が良ければって言うんでしょ!優一くん!」
「分かりました。蒼が良ければ友達になろ」
「う、うるさい」
「いや蒼さんが言えって言ったんだよねそうだよね!」
そんな一方的な会話に押されつつも明るく退屈さを忘れるような... 何気ない30分間にアニメ1話同等の濃い時間を過ごしたと懐いていた。
『また優一くんが助けてくれるよね』
ライトノベルのセオリー化しつつある授業をはぶく現象に乗っかりきずけば放課後の部室にて、
「蒼さんいないな、まあいっか」
机に上げてある椅子を下ろし、小説(ラノベ)を開ける。
小説を読み続け20分が過ぎたとこだろうか、ドアの声音が部室をかきならす。
「蒼さん、俺が来てから20分ですよ!何してたんですか?」
「メスの黒山に埋もれて動けなかったのよ、それに」
「もう辞めてください!そんなゲスい比喩表現なんて使わないで下さいよ!」
「優一くんがそう言うなら...」
「その変なギャップも辞めてください!部長(ヒロイン)である蒼さんのキャラ固定して下さい !」
「なら、こうかしら」
「ん?」
「優一く~ん遅れちゃった、テヘ」
「可愛いです!萌えますけど友達になってまもない俺によくそんなポーズと言葉が出ますね ! 俺にそんなこと出来るなら女子にも自然と会話すべきでしょ!」
「オタクでリアル女子に興味のない優一くんだから出来るのよ」
なにかグサッとくる。オタクで3次元に興味がないことは事実だが...
「それより優一くん、ポスター得意かしら」
「ポスター?」
先程の萌えシチュエーションをマイフォルダーに圧縮し、
部活動にシフトチェンジする。
「字や絵は得意な方ですが、ポスターみたいにまとめるのは苦手ですね。部活動掲示板にでも貼るのですか?」
「そのたぐいね」
「なら蒼さんが作ればいいじゃないですか」
「私、絵のアビリティ0なの」
...?
「いや、どうせ俺にポスター制作押し付けたいだけでしょ」
「私、絵のアビリティ0なの」
...
「な、なら今からお題出すんで描いてみて下さい。なら~エレキギターで!」
この時の俺は蒼の絵心の無さに驚愕する事を知る由もなかった。数分後...
「描けたわ」
「俺も描き終わりました、行きますよぉ~せーの」
『ドン!』
「蒼さん、それなんですか...? 何かの野菜ですか?生物ですか?」
「失礼ね。れっきとしたエレキギターじゃない!」
「あは、そ、そうですね」
「これで分かったでしょ、私の画力を」
「なら美術の時間はどうしたんですか? 今までどう乗り越えてきたんですか!?」
「そうね、絵画やポスターは全部長谷川さんに任せていたわね」
それお嬢様の特権だよね? あの人(長谷川さん)ゴーストペインターになってるじゃん!という突っ込みを鬱憤として溜める。
「でも自分の弱点を皆にさらけ出すことで、周りの見方も変わってくると思いますが」
「過去に私美術だけ成績悪くて、教科担任の先生に『お前は俺のことが嫌いなのか?真面目にやれ !』と叱られたことがあったの。それが怖くてね...」
何も知らず指摘した俺に不甲斐なさを感じた。
「それにしても優一くん上手ね、何故優一くんは絵や音楽
運動がたけていてイケメンなのに何故モテないのかしら」
「女子とのコミュ力が無いからだ !あと、なのにの前がよく聞き取れませんでした」
「そ、そんなの知らないわ !」
定番のように蒼の頬が赤く染る。何故だ?
その後、俺は渋々ポスターを完成させ部活動掲示板まで張り付けに行き、今日の部活動は幕を閉じた。
吸い込まれるように家へ帰宅した俺をいつものように妹が『お兄ちゃんお帰り!すみれ1人で寂しかったんだよ~』と顔を擦り付けてくる兄妹シチュエーションもなく、
「お帰り~」
「んー」
の一言で済ませてきやがる。ちなみに前者が俺で後者が妹の言葉だよ。お兄ちゃん悲しいよ。
夕食、お風呂を済ませある1つの本題に取り掛かる。
「すみれ、ちょっといいか」
「何~?こんな遅くに」
「すみれに言いたいことがある」
「え!? 実は蒼さんとあんなことやこんなことをしていた。許してくれとか??」
「そんなことじゃない。相談だ」
「ふ~ん、兄ちゃんの悩み事か、悪くないだろう。言ってミソ」
「どうすれば女子とたわえもない楽しい会話が出来るんだ?」
「ぶッッはは! !お、お兄ちゃんナンパでもするつもり!?
3次元にでもときめいちゃった?」
「そんなことじゃない」
「そっか、なら蒼さんの悩みだね?」
「図星だ」
すみれの万笑が声音と共に律儀な表情へと変化する。
すみれの感は怖いほど優れ、それが確信すると嬉しそうにでも真面目に相談に乗ってくれた。
「そんなの簡単じゃん、今ドキの話題に乗っかれば良いだけじゃん~」
「そっか、それだ! ありがとなすみれ」
「そんなに褒めることじゃない」
ほっとした俺を見たすみれは、嬉しさを隠しきれないかのように、ニヒッとはにかんだ。
翌日の放課後、早速すみれの案を蒼に告げる。
「女子の今ドキの話題に乗りつつ会話をすれば良いと思います」
「それはいい案ね、確かに私JKの話題がさっぱりだわ。
まともな友達がいなかったからショッピングとか人気店に行きずらかったのよね」
あなたも立派なJKだろ!と突っ込みたかったが、蒼の瞳が嫌な予感を提議する。
「その...優一くん。明日私と付き合ってくれないかしら」
「どちらの意味の付き合うでしょうか?」
「それは、その...知らない!」
蒼も変わろうとして俺に頼んできた以上、断る訳にはいかない。
「明日は祝日ですし付き合いましょう」
つぼみが咲き開くかのように蒼の顔が微笑む。
「そう言えば優一くんとチャリン交換してしてなかったわよね?」
「そう言われてみればそうですね、明日の予定も取り合う必要があるので交換しておきましょう」
補足しておこう。チャリンとは無料でメールのやり取り、
無料通話が出来る優れアプリだ。
「そうね、男子と交換するのは初めてだけど」
さすが50人以上振ったお嬢様だなっと苦笑する。
「って蒼さんのトプ画なにこれ?」
「雪浜家の御紋よ。見て分かるでしょ」
「...ってそりゃお嬢様扱いされるだろぉぉおおおおお!!!!」
ー4話へ続くー
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とてもよく出来ていると思います。
引き続き頑張ってください。
私の作品をお読み頂きありがとうございます!
ご期待に添えるよう、引き継ぎ投稿していきます。