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黄昏

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僕とカズヤはソルが待つという丘を目指していた。

日はすっかり傾き、遠くの山の稜線を赤く染めている。

「カズヤは知っていたのか…」

「そりゃ、システムの担当者だからね。今回のグラシアスの調査、僕は反対してたんだ。」

カズヤは張り詰めた糸が切れたかのように話しだした。カズヤも秘密を抱えたまま、僕らと会っていたのだ。

「それでも結局止めることは出来なかった。ジョーの、…親友の好きな人を見殺しにしてしまった。」

(それは僕もだ…)

「” ツェータ ”がルクスと同じ顔を持つことも知っていた。その原因をずっと調べていたのだが…」

「原因は分かったのか?」

「原因というか、顔以外にもルクスに関する情報を乗せた物自体がセキュリティーレベルを下げてしまう、ということは分かった。」

「どういうことだ?」

「理由は分からないが、そういう事象が確認されているのは確かで、しかも外部にその情報が漏れていることも分かっている。」

「外部…現実世界にか?」

「そのようだ。だから、” ツェータ ”を視覚化させる時に敢えてルクスの顔に似せた可能性がある。」

やはり、僕はこの世界を危険に晒す存在なのだ。

「だけど、お前が悪いわけじゃない。」

「でもカズヤ、僕は…」

「僕はお前が何者であっても、お前を信じてるしずっと友達のつもりだ。」

「カズヤ…」

「きっと、ジョーも同じだと思うよ。」

いつも冷静なカズヤがそこまで言ってくれるなんて…

(僕も2人は大切な友達だ)

目指していた丘に辿り着いた。

丘の上には大きな木があって、その木に寄りかかる人影があった。

「よお!来たな。」

夕日を背にしているので逆光で誰か分からない。…が、幼女でも青いキャラでもなさそうだ。

「ソル…?」

丘の上で待ち合わせたんだから、きっとそうなんだろうけど、念の為問いかけてみた。

「あー、コレね。コレ、初期のオリジナルアバターなんだよね。今日はちょっと懐かしい話をしようと思ってね。雰囲気作りね。」

逆光で顔の見えないままなので、コレと言われてもよく分からないのだが。

「そうだよねー!聞きたいこといっぱいあるよねぇ。」

ウーン、と唸ってソルは迷いながら話を始めた。

「えーっと、どこから話そうかな。あー、立ち話もなんだから座る?」

逆光の位置のまま、ソルが座り込んだので僕らも座った。

「さてと…。えーっと私は…いや、俺は…」

僕らは次の言葉を待った。

すると、あっけらかんとソルはこう言ってのけた。

「実は俺、創始者じゃないんだよね‪w」


「!?」

「……!」

カズヤが驚きの余り顔面蒼白になっている。

「あー、ほら、歴史って間違って伝わったりするから…」

最近聞いたことのある言い回しだな。

「俺は言わば、発見者と言ったところだ。」

カズヤはかなりショックを受けているようだが、ソルは構わず話し続ける。

「あれはいつだったかなぁ…。俺はまだ現実世界で生きていて、仮想世界の研究をしていた頃…」

あぐらをかいたソルの表情は読み取れない。

「ネットワーク上に、とある謎の仮想空間が放置されているのが分かった。その存在は研究者の間で話題になっていたが、セキュリティーが厳しく、長く開けることは出来なかった。調査の末、俺はその仮想空間の持ち主の名前を知ることが出来た。俺はすぐにその人物を探し出した。ところがその人物は…」

ソルが言い淀んだ。僕らはソルの次の言葉を待った。

「その人物はコールドスリープで眠らされていた。当時の医療技術では治せない病気でコールドスリープで医学の進歩を待っている患者だったんだ。」

(…!)

「俺はその人物の個人情報を入手した。まあ、多少無茶はしたかな。」

(その人のプライバシーどこいった)

「その個人情報から様々なパターンのパスワードを予想し解析し、数年かかって、とうとうその謎の仮想空間に侵入することを可能にしたのだ。俺は天才だからな。」

(自分で言うんだ…)

「そして俺は意を決して、その仮想空間に侵入したんだよ。もちろんリスクもあった。未知の領域でどんな魑魅魍魎がいるか分からなかったからね。」

「ところが、そこは…」

ソルの背後で夕陽が沈んでいく。

僕とカズヤは息を飲んだ。

「そこには、真っ暗な空間しかなかった。そして女の子が1人座り込んでいただけだった。」

(女の子?)

「ウサギ耳のな。」



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