陰キャ肉便器

山本ハイジ

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「フツーって、なんなんすか……?」
 普通という概念のガバガバさに腹が立つ。ゆっくりと起きあがった。
「クロ君……?」
 真っ赤に染まっていく気持ちに操られるように口を開く。
「あなたもフツーじゃないでしょう。結婚してるクセにこんなことして……」
 声が震えつつ、もう止まらない。
「フツーじゃない方法でフツーの若い男求めるとかバカなんすか?」
 ウン、たまにいるわ。買春しといて、なんでこんなことしてるんだい? とか説教してくるオッサン。優位にでも立ちたいのかあれは。ハタナカさんがそういうオッサンと同じだったことにも腹が立つ。結婚していれば、社会人でさえあればフツーなのか。
「……」
 眉を下げていたハタナカさんの表情がスッとなくなった。
「痛ッ……!」
 頭皮に激痛が走り、視界に天井が入ると頬に衝撃を覚えた。耳がキーンと鳴る。
 やや遅れてから、髪を掴まれベッドに倒されて頬を引っ叩かれたのだと理解する。間髪入れず今度は手の甲で逆の頬を叩かれた。
「ちょっ、何すっ……!?」
 たまらずハタナカさんの肩を押すと、拳が腹にめり込む。
「ぐぇっ……!」
 胃液が逆流し、抵抗しようとした手から力が抜ける。
「……」
「あっ、がっ……」
 ハタナカさんは無言、無表情でオレを殴りつづけた。オッサンたちからの痕だらけの肌にハタナカさんからの痕が刻まれていく。
 もう、全身に力が入らなかった。ハタナカさんはようやく殴るのをやめると、オレを俯せにした。
 乱れたガウンを取り払われ、尻に冷たいローションがとろりと垂らされる感覚を覚える。それからアナルに押し当てられた熱。
「うぅ……ッ」
 抉じ開けられていく。肉便器あるいはオナホと化している穴でも慣らしなしはシンドくて呻き声が出る。
「ぁっ……」
 しかし苦痛の中、ナマのハタナカさんを感じときめいてしまう。硬いナカで乱暴に出し入れを繰り返し、ハタナカさんは射精した。ドクドクと注がれるのを感じる。
 オレは中途半端に勃ったままだった。ずるりとハタナカさんが抜け出る。
「……」
「……」
 しばらく沈黙が続いてから、痛む体をどうにか仰向けにする。ハタナカさんはベッドの隅で膝を抱え、テディベアのように小さくなっていた。
 その様子が可愛かったのと、普通じゃないヤツが普通を求めて普通じゃないものを破壊しにかかった行為が面白くて、オレは手を叩いて爆笑した。


『ハタナカさんはあなたをブロックしました』と表示されたスマートフォンを布団に放り、犬がするような黒革でできた口枷をして、使いたい道具を色々持ってパソコンに向かう。人間の口は犬のように長くないから喋るのに支障はないだろう。
「お久しぶりですー。オナニーします」
 吸盤つきディルドを床に固定し、ゴムを被せローションを垂らし、スエットパンツを下着ごと脱ぐ。
 そしてディルドへ腰を下ろした。
「はぁっ、はっ、ぁ……」
 ズブズブと埋めていきながら、視聴者の目を楽しませようとスエットの上をまくりあげる。上半身の素肌にハーネスを這わせていた。
「オレはぁ……肉便器で、オナホで、犬でぇす……」
 腰を上下させつつ、スエットの上を脱ぎ捨てる。ディルドでイイところをえぐり、勃ちあがってきたチンコの先にピンクの電マを振動させ当てた。
「あぁん……あっ、……」
 強い快感に先走りが溢れ、滴るほどになる。
『アヘ顔ダブルピースして』
「……っ、か、顔?」
 流れてきたコメントに腰を止め、電マを離す。
 ――まあ、もういっか別に。マスクがわりの口枷を勢いよく外す。高まっていた射精感をまた盛り上げようと腰を動かしながら、ヒリヒリする先端に電マを当てたいのを我慢してダブルピースを作る。
 アヘ顔ってどんなだっけ……? とりあえず瞳をできるだけ上向かせ、思いっきり笑ってみた。あー…なんか楽しくなってきたかも。
「あっ、あびゃあぁああっ♡前立腺がぁっ……子犬のワルツ奏でてるぅー♡♡」
『ぶっさwwwコミュ抜けるわwww』
 やはりこれが、オレの存在理由なのだろう。
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2020.11.30 ユーザー名の登録がありません

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