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――モヤモヤ、ムシャクシャする。
「あぁっ、あっ……」
「クロ君、可愛いねぇ」
この気持ち晴らしたいし、金も欲しい。オッサンを使うしかない。
便所の壁に手をつき、オッサンに後ろからズコズコ突かれながら首筋に口づけられるのを感じる。ぢゅぱぢゅぱと不快な音が耳元で響いた。
「――犬がッ! 性の悦びを知りやがって!」
「スミマセンッ!」
ラブホの床の上で黒革でできた、犬がするような口枷と、ハーネスと、首輪をして伸びる鎖を掴まれSMオッサンにバラ鞭でシバかれる。
――モヤモヤ、ムシャクシャ
そんな風に日々を過ごしていたが、晴れなかった。
「はぁ……」
溜め息を吐きつつ、オッサンにつけられたキスマークとシバかれた痕が目立つ体をシャワーで流す。
タオルで拭いながら自室へ戻ると、布団に放っていたスマートフォンがピコピコと鳴った。
確認すると、それはまた十日以上は間を置いてきたモヤモヤムシャクシャの原因だった。
「こんばんは、クロ君」
「……こんばんは」
ネオンがキラキラしている夜の街でいつも通りのユルくて黒い上に、下はせめてジーパンで勇気を出してマスクはせず、シュッとしたスーツ姿のハタナカさんに会うと、なんやかんや思いつつ頬が緩むのを感じた。我ながらちょろい。
適当なビジネスホテルの部屋に入り、先にシャワーを浴びさせてもらって、ガウンを着てベッドに座りハタナカさんがシャワーを終えるのを待つ。
ややあって出てきたハタナカさんがオレを優しく押し倒し――オレはこれから味わうであろう甘くトロける感覚を期待して目を閉じる。
ガウンをはだけさせられる感触を覚えたが、いつまでたってもその先がない。目を開ける。
ハタナカさんが眉を下げつつ眉間にシワを寄せ、悲しんでいるような、怒っているような表情を浮かべてフリーズしていた。
「クロ君、こんなのフツーじゃないよ……」
「は……?」
枕に乗せていた頭をやや浮かせて、ハタナカさんがフリーズして視線を落としているところを見る。オッサンに吸われたり、シバかれたりしたオレの肌だった。
なにが、フツーじゃないんだ?
「君は顔は隠したがるのに、なんでこれは平気なんだ……?」
ハタナカさんが何を言いたいのかがわからない。
――そもそも、フツーってなんだ?「黒田はなんかフツーじゃないから……」とクラスメイトたちが噂しているのを耳に入れてしまった時のことを思い出す。
元々コミュニケーションなんて得意なほうじゃなかったのが「なんか、お前キモい」事件でより不得意になってしまったのと、そもそもゲイだから隠しきれない異様さでもあったのが原因か。
しかしあのクラスメイトたちは、万引きしたりしたことを自慢しあっていたような連中だ。オレはそいつらよりフツーじゃないのか。
「ねえ、クロ君。こんなことはやめよう……」
――戻ってこい、オレ。ハタナカさんはなんでこんなことを言うんだ? 割り切りのあかしを渡したがるクセに。
わけのわからなさと、湧きあがる期待感で脳が混乱する。踏み込んではいけないということを忘れ、前のめりになる気持ちに操られるように口を開く。
「なら、コイビトにしてください……っ、したらやめれると思います……」
『うん、わかった。俺、クロ君好きだよ』
『えっ、ハタナカさん結婚してるんじゃ……?』
『結婚なんてしてないよ』
ハタナカさんが微笑んで、オレにキスをしてくる。そのままオレの体は甘くトロかされた。
『俺の家、おいでよ』
ハタナカさんはタワマンに住んでいた。連れ帰ってくれた部屋でまた激しく愛しあった後、朝食にベーコンとスクランブルエッグとクロワッサンとスムージーを用意してくれて――
「……そ、それは」
目を見開きハッとしたハタナカさんは身を起こし、左手をオレの妄想にストップでもかけるようなポーズで差し出した。薬指の指輪を見せてくる。
――うん、わかってた。
「あぁっ、あっ……」
「クロ君、可愛いねぇ」
この気持ち晴らしたいし、金も欲しい。オッサンを使うしかない。
便所の壁に手をつき、オッサンに後ろからズコズコ突かれながら首筋に口づけられるのを感じる。ぢゅぱぢゅぱと不快な音が耳元で響いた。
「――犬がッ! 性の悦びを知りやがって!」
「スミマセンッ!」
ラブホの床の上で黒革でできた、犬がするような口枷と、ハーネスと、首輪をして伸びる鎖を掴まれSMオッサンにバラ鞭でシバかれる。
――モヤモヤ、ムシャクシャ
そんな風に日々を過ごしていたが、晴れなかった。
「はぁ……」
溜め息を吐きつつ、オッサンにつけられたキスマークとシバかれた痕が目立つ体をシャワーで流す。
タオルで拭いながら自室へ戻ると、布団に放っていたスマートフォンがピコピコと鳴った。
確認すると、それはまた十日以上は間を置いてきたモヤモヤムシャクシャの原因だった。
「こんばんは、クロ君」
「……こんばんは」
ネオンがキラキラしている夜の街でいつも通りのユルくて黒い上に、下はせめてジーパンで勇気を出してマスクはせず、シュッとしたスーツ姿のハタナカさんに会うと、なんやかんや思いつつ頬が緩むのを感じた。我ながらちょろい。
適当なビジネスホテルの部屋に入り、先にシャワーを浴びさせてもらって、ガウンを着てベッドに座りハタナカさんがシャワーを終えるのを待つ。
ややあって出てきたハタナカさんがオレを優しく押し倒し――オレはこれから味わうであろう甘くトロける感覚を期待して目を閉じる。
ガウンをはだけさせられる感触を覚えたが、いつまでたってもその先がない。目を開ける。
ハタナカさんが眉を下げつつ眉間にシワを寄せ、悲しんでいるような、怒っているような表情を浮かべてフリーズしていた。
「クロ君、こんなのフツーじゃないよ……」
「は……?」
枕に乗せていた頭をやや浮かせて、ハタナカさんがフリーズして視線を落としているところを見る。オッサンに吸われたり、シバかれたりしたオレの肌だった。
なにが、フツーじゃないんだ?
「君は顔は隠したがるのに、なんでこれは平気なんだ……?」
ハタナカさんが何を言いたいのかがわからない。
――そもそも、フツーってなんだ?「黒田はなんかフツーじゃないから……」とクラスメイトたちが噂しているのを耳に入れてしまった時のことを思い出す。
元々コミュニケーションなんて得意なほうじゃなかったのが「なんか、お前キモい」事件でより不得意になってしまったのと、そもそもゲイだから隠しきれない異様さでもあったのが原因か。
しかしあのクラスメイトたちは、万引きしたりしたことを自慢しあっていたような連中だ。オレはそいつらよりフツーじゃないのか。
「ねえ、クロ君。こんなことはやめよう……」
――戻ってこい、オレ。ハタナカさんはなんでこんなことを言うんだ? 割り切りのあかしを渡したがるクセに。
わけのわからなさと、湧きあがる期待感で脳が混乱する。踏み込んではいけないということを忘れ、前のめりになる気持ちに操られるように口を開く。
「なら、コイビトにしてください……っ、したらやめれると思います……」
『うん、わかった。俺、クロ君好きだよ』
『えっ、ハタナカさん結婚してるんじゃ……?』
『結婚なんてしてないよ』
ハタナカさんが微笑んで、オレにキスをしてくる。そのままオレの体は甘くトロかされた。
『俺の家、おいでよ』
ハタナカさんはタワマンに住んでいた。連れ帰ってくれた部屋でまた激しく愛しあった後、朝食にベーコンとスクランブルエッグとクロワッサンとスムージーを用意してくれて――
「……そ、それは」
目を見開きハッとしたハタナカさんは身を起こし、左手をオレの妄想にストップでもかけるようなポーズで差し出した。薬指の指輪を見せてくる。
――うん、わかってた。
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