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日曜日。黒のパーカーを着て、ジーパンを穿いて、百均で買ったタトゥーチョーカーをし、洗面所の鏡の前に立つ。モサッとした髪にちょっとだけ水をつけて、クシでとかす。たまに絡んだ毛がクシに引っかかり、頭皮を引っ張られる痛みにクマの目立つ顔が鏡の中で歪んだ。
身支度を終え、勇気を出してマスクはせず玄関へ向かった――ところでドアが開き小さく跳ねる。
「あら~……お出かけ? めずらしいわねぇ」
「ば、ばあちゃん……」
母か父でなくてまだマシだったとホッとする。あの二人は気まずい沈黙を流してくるから。
ばあちゃんがよちよちとオレを通り過ぎる。靴を漁り、いいものが見つからず諦めて履き潰したスニーカーに足を入れて外へ出る。
昼の光に襲われて、耐えられず地面を見た。そのまま待ち合わせしている駅前へと歩く。
ロータリーで立ちどまり、ドクドク言う胸を押さえつつやや顔を上げて、車で来てくれるらしいハタナカさんを待つ。
そんな待たされることもなく、ロータリーに入ってきたつやつやした赤い車の窓越しにハタナカさんの顔を認めた。車がオレのそばで停まる。
「こんにちは」
「……こ、こんにちは」
そっと助手席のドアを開け、昼の光よりも眩しいハタナカさんの笑顔に襲われながら乗り込む。
「どこか行きたいところとかある?」
「え、ホテル直行じゃないんすか……?」
「せっかく日曜の昼に時間を作れたんだ。デートしようよ」
「デ、デート……」
精一杯身だしなみを整えはしたが、日曜の昼の街を上品なジャケットとパンツ姿のハタナカさんと並んで歩くのか……。
「タピオカ、飲んでみたいな」
販売カーの行列に並び、タピオカミルクティーを手にそばの噴水を囲むベンチにハタナカさんと座った。
太いストローをくわえ、吸うとつるりと口内に入り喉に当たってくるタピオカにビビる。噛むとモチモチしていてほんのり甘くて、濃いミルクティーと合わさって――
「これがタピオカか。おいしいね」
「そ、そうっすね……」
これがタピオカか……。
「クロ君はなんでこんな生活してるんだい?」
「うぇっ」
つるり、つるりと吸い込んでいるとハタナカさんの唐突な質問にタピオカを飲み込んでしまった。
ハタナカさんのほうを向く。ハタナカさんはオレではなく、前を見ていた。ハタナカさんの視線の先を追う。
俯き気味にしていたからはっきりとは見えなかった――腕を組んで歩いているカップル、笑いあっている友達同士、家族連れなどが視界に入る。
「な、なんでって……」
――「なんか、お前キモい」が反芻される。他人に踏み込むのは恐ろしい行為だ。どうやってみんなフツーに交流して、フツーに生活してるんだろうか。
「ごめんね、変なこと訊いちゃって。無理して答えなくていいから」
「はい……」
「……」
「……」
カップの底にタピオカを数粒残して、ミルクティーを飲みきる。それから視界の隅に入っていた喫煙所を見つめた。
「煙草、吸いにいっていいっすか……?」
「ああ、どうぞ」
非喫煙者らしいハタナカさんを残し、喫煙所へ行き急いで煙草を吸って戻るとスマートフォンを弄っていたハタナカさんが顔を上げた。
「煙草、なに吸ってるの?」
「キャスター……じゃ、なかった。ウィンストン」
「名前もデザインも、キャスターのほうがよかったよねぇ」
「……ハタナカさんは煙草吸わないんじゃ?」
「前吸ってたよ」
……奥さんか子供のためにやめたのかな。
「あっ、あとごめんね。もう帰らなきゃいけなくなっちゃった」
ハタナカさんがスマートフォンをパンツのポケットにしまい、手を合わせる。
……仕事関係かな。それとも奥さんに呼び出されたのかな。
「車の中で、さっとクチで抜きましょうか……?」
「んっ……」
駐車場に停めた車の中、ハタナカさんはやや倒した運転席のシートの上でパンツの前を開き、艶めかしい吐息を漏らす。
オレは隣で屈んで、起立したハタナカさんのチンコを舐めていた。
――ハタナカさんのチンコ、ちょうどいい大きさで形もキレイで好きだなぁ。亀頭を舐め回し、口内に含んでいく。
シャワーを浴びていないから、ハタナカさんのにおいを濃く感じる。舌を這わせながら口をすぼめ、頭を上下させた。
「クロ君、そろそろ……っ」
ハタナカさんの声が震える。チンコもピクピクするのを感じ、唇でシゴくのを止めた。一瞬後、ハタナカさんの味で口の中が満たされる。
ゆっくりと飲み下し、口からチンコを抜く。ハタナカさんは車内に置いてあるティッシュで濡れ光るチンコを拭うとしまって、パンツのポケットから財布を取り出した。
「いらないです、それ」
思わず言ってしまった。すぐ後悔の念に襲われる。
「え? でもこれが欲しくて口でシてくれたんじゃ……」
やや間を置いてから、ハタナカさんはハッとしたような顔になった。財布から札を抜いて、オレに押し付けてくる。
「お願いだから、受け取って。ね?」
懇願するような調子の中、声のトーンが低い、うむを言わせない圧を感じ、諦めて受け取った。
「はい……」
――コレは明らかに拒絶だ。うん、そうされるのはわかってた。割り切りのあかしを受け取らないだなんて愚行。
あなたこそ、なんでこんなことしてるんですか? と沈んだ心の中で問いながら金をマジックテープの財布にしまった。
身支度を終え、勇気を出してマスクはせず玄関へ向かった――ところでドアが開き小さく跳ねる。
「あら~……お出かけ? めずらしいわねぇ」
「ば、ばあちゃん……」
母か父でなくてまだマシだったとホッとする。あの二人は気まずい沈黙を流してくるから。
ばあちゃんがよちよちとオレを通り過ぎる。靴を漁り、いいものが見つからず諦めて履き潰したスニーカーに足を入れて外へ出る。
昼の光に襲われて、耐えられず地面を見た。そのまま待ち合わせしている駅前へと歩く。
ロータリーで立ちどまり、ドクドク言う胸を押さえつつやや顔を上げて、車で来てくれるらしいハタナカさんを待つ。
そんな待たされることもなく、ロータリーに入ってきたつやつやした赤い車の窓越しにハタナカさんの顔を認めた。車がオレのそばで停まる。
「こんにちは」
「……こ、こんにちは」
そっと助手席のドアを開け、昼の光よりも眩しいハタナカさんの笑顔に襲われながら乗り込む。
「どこか行きたいところとかある?」
「え、ホテル直行じゃないんすか……?」
「せっかく日曜の昼に時間を作れたんだ。デートしようよ」
「デ、デート……」
精一杯身だしなみを整えはしたが、日曜の昼の街を上品なジャケットとパンツ姿のハタナカさんと並んで歩くのか……。
「タピオカ、飲んでみたいな」
販売カーの行列に並び、タピオカミルクティーを手にそばの噴水を囲むベンチにハタナカさんと座った。
太いストローをくわえ、吸うとつるりと口内に入り喉に当たってくるタピオカにビビる。噛むとモチモチしていてほんのり甘くて、濃いミルクティーと合わさって――
「これがタピオカか。おいしいね」
「そ、そうっすね……」
これがタピオカか……。
「クロ君はなんでこんな生活してるんだい?」
「うぇっ」
つるり、つるりと吸い込んでいるとハタナカさんの唐突な質問にタピオカを飲み込んでしまった。
ハタナカさんのほうを向く。ハタナカさんはオレではなく、前を見ていた。ハタナカさんの視線の先を追う。
俯き気味にしていたからはっきりとは見えなかった――腕を組んで歩いているカップル、笑いあっている友達同士、家族連れなどが視界に入る。
「な、なんでって……」
――「なんか、お前キモい」が反芻される。他人に踏み込むのは恐ろしい行為だ。どうやってみんなフツーに交流して、フツーに生活してるんだろうか。
「ごめんね、変なこと訊いちゃって。無理して答えなくていいから」
「はい……」
「……」
「……」
カップの底にタピオカを数粒残して、ミルクティーを飲みきる。それから視界の隅に入っていた喫煙所を見つめた。
「煙草、吸いにいっていいっすか……?」
「ああ、どうぞ」
非喫煙者らしいハタナカさんを残し、喫煙所へ行き急いで煙草を吸って戻るとスマートフォンを弄っていたハタナカさんが顔を上げた。
「煙草、なに吸ってるの?」
「キャスター……じゃ、なかった。ウィンストン」
「名前もデザインも、キャスターのほうがよかったよねぇ」
「……ハタナカさんは煙草吸わないんじゃ?」
「前吸ってたよ」
……奥さんか子供のためにやめたのかな。
「あっ、あとごめんね。もう帰らなきゃいけなくなっちゃった」
ハタナカさんがスマートフォンをパンツのポケットにしまい、手を合わせる。
……仕事関係かな。それとも奥さんに呼び出されたのかな。
「車の中で、さっとクチで抜きましょうか……?」
「んっ……」
駐車場に停めた車の中、ハタナカさんはやや倒した運転席のシートの上でパンツの前を開き、艶めかしい吐息を漏らす。
オレは隣で屈んで、起立したハタナカさんのチンコを舐めていた。
――ハタナカさんのチンコ、ちょうどいい大きさで形もキレイで好きだなぁ。亀頭を舐め回し、口内に含んでいく。
シャワーを浴びていないから、ハタナカさんのにおいを濃く感じる。舌を這わせながら口をすぼめ、頭を上下させた。
「クロ君、そろそろ……っ」
ハタナカさんの声が震える。チンコもピクピクするのを感じ、唇でシゴくのを止めた。一瞬後、ハタナカさんの味で口の中が満たされる。
ゆっくりと飲み下し、口からチンコを抜く。ハタナカさんは車内に置いてあるティッシュで濡れ光るチンコを拭うとしまって、パンツのポケットから財布を取り出した。
「いらないです、それ」
思わず言ってしまった。すぐ後悔の念に襲われる。
「え? でもこれが欲しくて口でシてくれたんじゃ……」
やや間を置いてから、ハタナカさんはハッとしたような顔になった。財布から札を抜いて、オレに押し付けてくる。
「お願いだから、受け取って。ね?」
懇願するような調子の中、声のトーンが低い、うむを言わせない圧を感じ、諦めて受け取った。
「はい……」
――コレは明らかに拒絶だ。うん、そうされるのはわかってた。割り切りのあかしを受け取らないだなんて愚行。
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