一般ノームに生まれ変わった俺はダンジョンの案内人から成り上がる

山本いとう

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12.ダンジョンマスターのリッキー

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俺はペンペンとダンジョンコア?を叩いたりしてみるが、点滅は一向に収まらない。

「それ大事な物だったらどうするのよ」

「モ」

フマが指摘してくるが、そんなに大事な物を、たとえ木箱に隠れる感じにしたとしても、地面に転がしておくだろうか?
ふふん、防犯の知識もたいしてないんだろうフマさんや。
現代日本の防犯知識をなめるなよ?
大事な物とは、きちんと隠しておくか、銀行の貸金庫に預けておく物なのだ。
地面に転がしておく物は大事な物でない。
俺はダンジョンコアとやらに向かって土生成を発動してみる。
ルッツの所では白い玉に向かって魔法を行使すれば、魔法は吸収され、ウルを貰える仕事になった。
案の定、黒い物は魔法を吸収する。

「止めなさいよ大食らい。MPの無駄だし、何が起こるかわかってやってるの?」

何が起こるのかなんか知らないが、確かにフマの言うとおり、MPの無駄使いは良くない。
ここの用事が終われば、中層でもっこをフマに買ってやるのだ。
出来れば俺の分も買えるといい。

俺はダンジョンコアに木箱を被せ、元の位置に戻した。
相変わらず激しく点滅しているが、魔法のある世界ではきっと光ったり光らなかったりは誤差だろう。 

「ちょっとちょっとちょっと! あんた達なにやってくれてんのワン!」

壊れた扉から現れたのは、犬人だった。
二足歩行の犬種はシベリアンハスキー。

「な、なな何もしてないわよね? 大食らい?」

「モ」

俺は自信をもって頷く。
何も起きなかった。良いね?

「おいらの大事なダンジョンコアが、危険を知らせてるんだワン! ほら、こんなに激しく点滅してワン! 可哀想においらのダンジョンコアだワン」

木箱の隙間から尚も激しく点滅するダンジョンコア。
フマが俺を見て目を細める。
俺はやれやれと肩をすくめた。
俺達がやった証拠はどこにもないのにな。

「コイツがやりました」

フマが犯人を指差す。
直ぐ様俺はシベリアンハスキーに土下座した。
ぐぬぬ…。なぜ言うのだ。

シベリアンハスキーはダンジョンコアの点滅を解いた後、俺達に茶を出してくれた。
茶を作る時に奥の通路でガタンゴトンと物騒な音が出ていたが、見た目はただの茶だ。
俺は地べたに正座のまま、フマは隙間だらけの木箱に座って怪しげな茶を飲む。

「それで、小さな精霊たち。こんな場末のダンジョンに何しに来たんだワン? ああ、おいらの名前はリッキーだワン。呼び捨てで良いワン」

「私の名前はフマ。よろしくねリッキー。こいつは大食らい。下層にはダンジョンに入りに…。あれ? そう言えば私達働き口を探してるのよね? どうして私達ダンジョンに入る事になってるの大食らい?」

「モ」

俺はフマの疑問に大きく頷く。
俺は良かったらここで働きますよと、力こぶをシベリアンハスキーに見せる。
精霊の身体のスキルで力こぶが大きくなる。
因みに俺の名前は大食らいではない、土谷陸だ。


「つまりダンジョンに入りたいのかだワン?」

「モモ」

俺は首を振り、もう一度力こぶをシベリアンハスキーに見せた。

「なるほどわからないワン。フマ。何でこの小さな精霊は話せないんだワン?」

「私も知らないわ。時々変化しても話せない精霊がうまれるの」

「精霊の出来損ないだワン」

俺は首をおおいに振る。
俺は出来損ないではない、きちんと働ける精霊なのだ。
俺はもう一度働けますよと、力こぶをシベリアンハスキーに見せる。
そうして自信に満ちた顔で頷いた。

「話せなくても力に自信あり…、でも小さいワン」

「話せれば良かったのにね、大食らい」

可哀想な人を見る目で、俺を見る二人。
二人とも、確かに俺は喋れはしないが!
趣味の動画編集で俺に勝てると思うなよ!
俺は悲しくなって、両手で顔を覆いしくしくと泣いた。

「そう言えば、大食らい?で良いのかワン? 土のマナをダンジョンコアな入れてくれたのは助かったワン。お茶くらいなら出すから、また余裕があったら頼むワン」

「へぇ。その石に魔法を使うと助かるの? 報酬があるなら手伝うけれど? 私達、仕事を探しているの」

「報酬? 何が欲しいんだワン?」

「ウルよ。精霊は大変な時だから、早く成長しなきゃならないの」

「ダンジョンづくりに閉じ籠ってるから精霊に何があったか知らないワン。ダンジョンが上手くいくようになれば、報酬は払えるようになるんだワンねぇ」

「ふうん? リッキーのダンジョンは何が上手くいってないの?」

「ダンジョンは地上のニンゲンの欲望とダンジョン内で使用した魔力をそのまま資源として活用出来るダンジョンポイントに変換るんだワン。でもぼくのダンジョンは人気が無さすぎて、ダンジョンポイントも手に入らず、未だに手作りで頑張ってるんだワン」

「資源ってのからウルが作れるのかしら?」

「そうだワン。フマは理解がはやいワン」

「じゃあ今はウルを作れないのね。ここに居ても仕方ないわ。行くわよ大食らい」

「また来るワン」

しくしくと泣く俺を引きずって、さよならと手を振るリッキーのダンジョンから出る。

「ダンジョンって儲からないのね…」

ふぅとため息をはくフマ。

「モ!」

「ちょっと待ちなさないよ大食らい」

ダンジョンは儲からない?
そんな事はないと、俺はフマの妄言を切り捨て、次のダンジョンへの扉へと向かった。

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