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11.ダンジョンコア
しおりを挟むレーベン側の畔の大樹という世界の下層には、下界と呼ばれる世界に繋がる不思議な大穴がいくつかある。
その大穴が下界でダンジョンと呼ばれる物の正体だ。
ダンジョンからは、老廃物として様々な鉱石が下層へと吐き出されるのだ。
「ちょっと大食らい、ダンジョンに入るの? ダンジョンは下界の住人が挑戦する物よ」
「モ?」
フマに言われて俺は自分の手を見る。
戦えないだろうか?
おもちゃのアトラクションでは無双してたんだが…。
確かに俺達の体格は、魔女たちの二分の一もない。
使える魔法も土生成くらいだ。
何だかよっぽどの雑魚モンスターじゃないと戦えない気がしてきたな。
まぁ俺が入りたいのは、レーベン側の畔の大樹から入れるダンジョンのバックヤードか、精々がモンスターの弱い一階層である。
何とかなるだろうとフマの背を押して、鉱石を吐き出す大穴の一つへと歩みを進めた。
大穴に入ると、横穴に木製の上等な扉があって屈強そうな石のゴーレムの門番が守っている。
この扉の先がダンジョンのバックヤードだ
「モ!」
俺が大きな声で石のゴーレムに挨拶すると、石のゴーレムはゴゴゴと動き出した。
「…小サナ精霊…? 珍シイ。ムンゴウ大迷宮ノ主ニ何カ用カ?」
「モ!」
主とはダンジョンマスターの事だろう。
俺は大きく頷く。
今日はダンジョンマスターに労働条件を聞きに来たのだから。
「先触カ?」
先触れ…? アポの事か?
俺にはそんなコネはないので、当然のように首を振った。
「……」
石のゴーレムは黙ってしまった。
「どうするのよ大食らい…」
フマが不安そうにしている。
早く返事してくれないかな、ダメならダンジョンに行くんだけれど。
暫く待つと、石のゴーレムは話し出した。
「…小サナ精霊ヨ。主ハチカラニハナレナイ。精霊ノ問題ハ精霊デ解決シテクレ」
「?」
何だかわからないが断られたようだ。
門番を無視して中には入れない。
仕方ないかと、俺はダンジョンの老廃物を出す奥の大穴の方へと向かう。
すると、慌てた石のゴーレムに掴まれた。
「コノ先ハ危ナイ。奥ヲミタイナラ、ムンゴウ大迷宮デハナク鉱石ノ少ナイ穴ニ行ケ」
「大食らい。止められちゃったじゃない」
「モモ…」
どうやらムンゴウ大迷宮は俺達には危ないらしい。
ひょっとしてダンジョンにも格差があって、ここは高級で危ないダンジョンなのかもしれないな。
鉱石の排出が格差の目安なのか…。
この大穴は鉱石を大量に出して目立ってたからな。
だからこの大穴に入ったのだ。
俺は石のゴーレムのアドバイスに従って、鉱石の排出が一番少ない大穴に入る事にした。
安全第一だ。
「モ!」
俺は石のゴーレムに挨拶して、元来た道を戻る。
フマはペコリと石のゴーレムにお辞儀をした。
「頑張レ、小サナ精霊ヨ」
この世界の石のゴーレムは意外とおしゃべりなのかもしれない。
◆
さて、俺達が次に選んだのは、見る限りで鉱石を一切出してない大穴だった。
大穴に入り、横穴を見れば扉は壊れかけで、門番もいない。
「ごめんください」
フマが恐る恐る言いながら、横穴へと入るが、隙間だらけの木箱を椅子にした物や家具が数点と、薄暗いランプが点いているだけで、誰も見当たらない。
まぁ、ランプが点いているのだから誰かが住んでいて、少し外に出てるだけであろう。
俺は横穴の中へとずかずか入り、隙間だらけの木箱に座る。
フマも恐る恐るついてきた。
フマにお前も座れと木箱を指差すと、木箱の隙間から黒い光の点滅が見えた。
「モ?」
俺は何だろうと思い、木箱を持ち上げる。
木箱の裏には、一抱え出来るか出来ないかくらいの、真っ黒な宝石みたいな形をした物が転がっていた。
ペタペタとその黒い物を触ってみる。硬いが、衝撃を吸収してるみたいに変な感触だ。
──これ、だんじょんこあ!
へぇ、ダンジョンコアっていうんだこれ。
「何か変な感じに光ってるんだけど、大丈夫なのそれ?」
「モ?」
何か激しく点滅し始めたけれど、大丈夫じゃないかなぁ?
何も起こらないし。
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