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32.さあ、話してもらおうか
しおりを挟む下層のダンジョンから、いったん上に登り、中層の手前から下層のフマのいる仕事場へ。
何も言わないいまま突然放置してしまったし、何か土産でも必要かと数瞬考えるが、MPはすかんぴんである。
マナもあるが、必要な時に取っておくべきだろう。
どうせフマたちはワーカーホリック。
仕事ジャンキーなのだから、仕事に関係のない土産などいらないだろう。
…いらないよな?
多分、フマたちは今日も真面目に仕事漬けになってると思うんだよ。
でも、あの仕事、MPの回復を待つ間は暇だからなぁ。
暇な時二人は何してるんだろうか?
フマは前の時は取り憑かれたようにMPが回復するのをじっと待っていたけれど。
フマたちの居る仕事場に着くと遠くでワイワイやっている集団が見えた。
俺はその集団を二度、ガン見する。
フマとラッツがそこに居るのを見て、イヤイヤ、そんな大勢目立つ所にいる集団の中にフマとラッツがいる訳がないだろうと、目を逸らし、もう一回ちゃんと確認しないとなと、目を見開いたのが一度目。
フマとラッツの居る集団に、やけに背の高い精霊が居るなと思って、良く見たら魔女だった。
イヤイヤ、魔女が居る訳がないだろうと目を逸らし、もう一回ちゃんと確認しないとなと目を見開いたのが二度目である。
よって俺はその集団を二度ガン見した。
どうやら、二人はやらかしたらしい。
俺は魔女の視界に入らないよう、忍び足でフマたちの居る集団に近づいていった。
そして近くの物陰に入ると屈んでから、精霊の身体を使ってにゅっと手を伸ばす。
狙いはラッツだ。
どうしてこうなったのか、きちんと説明して貰おうか…。
しかし精霊の身体のスキルが足らないのか、思いの他手は伸びなかった。
俺は匍匐前進に切り替えラッツの口を塞ぎ、とっ捕まえる。
「フガッ」
「モモモッ!」
捕まえたラッツとじっと目を合わせると、ラッツも事情を察したようだ。
…さあ、来てもらおうか。
責任の所在が何処にあるのか、答えてくれるよな。
◆
「なるほど…。相克の属性も繋ぎの属性のマナがあれば、相殺し合わない。魔法を使っていても気付かない訳だわ。魔法をきちんと覚えたらマナ状態の属性なんて碌に扱わないもの」
知り合ったばかりの魔女が呟きながら深く考え込む。
あの後、私たちは複数の属性を揃えるために、まだ助けられそうな精霊を開放して回った。
今は実験しながら、本来の仕事を熟している最中だ。
「ヘロディアスは複数の属性魔法を使えるの?」
魔女の名前はヘロディアス。
私が合体魔法と名付けた魔法の使い方の情報と引き換えに、精霊の解放に協力をしてもらっている。
あくまで彼女の管轄内でだけだけれど。
「そうねぇ…。同時行使は技術的に難しいわ。実践的ではないかも知れないわ。個人で使う分にはネ」
「なら合体魔法にはあまり価値はない?」
「検証次第かしらね。今の所、相乗効果がある訳でもないし、役に立たないかもネ。でも、新しい技術ってとってもワクワクするじゃない? 精霊さんにとっては…それが意味のある価値になるか解らないけれど」
仕事の役には立たないのかしら…。
残念ねと、ラッツに相談しようと辺りを見回すけれど、ラッツの姿は見えなかった。
いつの間に、どこに行ったのかしら?
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