底辺家族は世界を回る〜おじさんがくれた僕の値段〜

ROKUMUSK

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第二章

閑話休題 ミーセスとユリアーナの口喧嘩

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 レークイスを発つための買い物を終えた2人はミーセスの店に立ち寄る事にした。

理由は一つ。レブラントとの契約を履行するためである。

「なんだ、意外と早い再開だな」

「団長、仕事を頼みたい」

アルベルトは手付に貰ったレーク金貨500の内350枚をミーセスに手渡した。

「大金だな」

「人買いの依頼だ」

だが、ミーセスは頷かなかった。
理由は人買いとして登録はしているが、実際に人買いを生業とはしていなかったからだ。

「大方諜報の為に会員となったんだろう?」

「まぁな」

「良い機会の筈だ」

アルベルトはニヤリと笑うと事のあらましを聞かせた。
そして、4ヶ月後位に見目良い役者を2人、王弟に差し向けろと言った。

「そりゃウチの者でもいいのか?」

「構わん。美しく口が固けりゃ誰でもいい…その代わり1ヶ月耐えて欲しい」

「何で1ヶ月なんだ」

カッカドールへと向かう途中に中央特区に立ち寄り、『エッケルフェリア傭兵紹介』で人を雇い向かわせ、2人と交代させるとアルベルトは言った。

「そんな伝手があんのか」

「昔な」

「……良いだろう」

しばらく考えていたミーセスだが、目の前の金を受け取ると少し待てと言って奥に消えて行った。

「アルおじさん、何であの人に頼むんだ?」

「ここは外向きは奴隷販売店だが、情報を売り買いする闇の商店だな」

「そんな仕事があるんだ…」

暫くすると大荷物のミーセスが現れ、唖然とする2人を他所に店の扉を開けて振り返った。

「行こうぜ」

「「……はぁ?」」


 ミーセスが同行を申し出たのには理由があった。カッカドールへ向かう途中、西側から中央に食い込む形のイグラドシア王国があり、そこに用事があるからだと言った。

「なぁ、ユリアーナ」

「……何」

「お前、女だろ」

「僕の性別なんて関係無いだろ?」

「関係あるさ。お前が女じゃなきゃアルベルトが再起する事は無かったろうしな」


馬車の荷台に向かい合って座る2人。
ユリアーナはそもそもミーセスが気に入らなかった。
アルベルトが苦しい顔をした元凶であり、自分が初めてすごいと尊敬したアルベルトを時折馬鹿にするからだ。

「なぁ、オジサン」

「何だ?クソガキ」

「何で1人で行かないんだ?僕、オジサンが臭くてたまらないんだけど」

「馬鹿だなぁお前は。これは男の匂いだ、アルベルトだって同じ匂いがするだろうが!それに、俺とアルベルトの仲だぞ?旅は道連れ世は情けってな!」

酔っ払いの様なテンションで絡んでくるミーセスに、ユリアーナは苛立ち足蹴にした。

「って!」

「アルおじさんはオジサンみたいに臭くないし!風呂入って髪洗えよ!野良犬の方がよっぽど綺麗じゃないか!」

「何だと?このクソガキっ!こっち来いっ!」

「やめろっ!臭いっ!変態っ!人攫いっ!」

「そーだぞ?俺は人買いだ、このままお前を売っぱらってやろうか?どうだ?お前みたいなクソガキを調教するのが好きなきったない貴族に売ってやろか!」

その言葉に、ユリアーナは大笑いする。
そしてアルベルトに首から下げていろと渡されたアルシャバーシャの証文であるペンダントを見せた。

「悪いね!既に売れてんだよっ!」

「……お前、命は大切にしろよ?」

同情めいたミーセスの言葉にユリアーナは首を傾げる。

「アルシャバーシャ様は好事家らしいからな」

「こうずかってなんだ?」

「子供にいやらし~事して甚振るのが好きな御仁ってこったよ」

「あぁ、オジサンみたいな奴って事な!」

「おいっ!」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ荷台の2人。アルベルトは煩すぎると言って2人に、出掛け前に買ったサッカームを手渡した。


「「やった!」」

1人の大人と正真正銘の子供1人は2人で仲良く分け合いサッカームを夢中で食べていた。

「……二児の親になった気分だ」


新たな旅は始まったばかり。
静かな2人旅が急に騒がしくなったもんだ、そうアルベルトは溜息を溢しながら手綱を引いた。













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