古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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short mission 2 採集師は苦労とともに

本当はグロい薬草学…

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side-アーチ 1

 おいおい、参ったね…。
 今回はラクな採集の仕事かと思ってたのによ。なんでこれから魔物退治って話になってんだか?
 しかも昨日退治したでけぇヘビからも材料が取れるって…なんでもアリだな。
 せっかく、今回は対応を厨房エルフに丸投げしてラクできるかと思ってたんだがね…。

 とりあえず今回は…。
「この森をしばらく歩いて、遭遇した魔物を倒してもらって材料を集めたいのですよ。どんな魔物が出るか、楽しみですねぇ!」
  …うげ、マジか…。
 
 デュエルがおっさんの指示通りに魔物解体の手伝いをしてる間、オレらは薬草を集めることになった。
「じゃじゃーん! 魔術師ギルド謹製、採集カゴ~! 」
 そんな中でアーシェと弟子が、持参したカゴを見せびらかした。見た目はガキが虫あみとセットで持ってるアレにしか見えねぇな…
「なんでぇ、ちょっと大型の虫カゴじゃねぇんだな」
「ぷー! 違うもん!」
「この中に入れた植物は長期間、魔力で保存できるんですよ。いつでも摘みたての鮮度を保てる上に、見た目以上に大量に入るんです。採集系の仕事には不可欠ですよ!」
 ほほー、そりゃ重宝する代物だな。見せてもらったが、中には仕切りまでついている。なかなかのもんだ。

 薬草摘みに勤しんでるうちに、おっさんの大声が飛んできた。
「はあああぁぁあッ!?  そこにいるのはイグニア蜂! 是非、巣を見つけて蜜を取ってください! 喉の痛みに劇的な効果があります! あと、そっちのガウショ草の根は毒出しの効果があるので見逃さないで! おお、こっちにはトレヴィスの花! 二日酔いに効果ありです!」
 …なんつーか…クソやかましいな、このおっさん…。しかもここまでデケェ声だ、この仕事が終わるまでオレの鼓膜は無事だろうな?

「勉強になりますわ。こちらはなんの効果があるんですか?」
 熱心に学んでるのは、もはや弟子だけだ。他の連中は見るからにうんざりした顔で、それでも薬草を摘む手は休めねぇ。わかるぜ、とりあえず無心に手を動かしゃ現実逃避できるもんな…。

「どうやら、お客さんだ」
 デュエルとラスファが何か察知したのか、いきなり立ち上がった。ああ、やっぱそうか。
 おっさんの大声に魔物が寄ってきやがった!
 いつもならめんどくせぇ戦闘も、今回ばかりはウェルカムだ!

 出てきたのは、オオカミが数匹。どうもこの辺りが縄張りらしい。弟子たちには引き続き薬草摘みを頼むと思った通り嫌な顔をされた。
「えー、兄貴たちばっかずるい!」
「わたくしも行きますわ!」
「いやいいから。サクッと片付くし」

 そのデュエルの言葉に嘘はねぇ。実際にさっくりと片付いておっさんを呼ぶと、また細けぇ指示が飛ぶわ飛ぶわ。
「これは肝をすりつぶすと滋養強壮に役立ちます。そっと扱ってください! それから爪は煎じて飲むと…」
 あー…グロい。いや確かに役にゃ立つかもしんねぇけど、ここまでコマケェ注文つけられても困る。でろりとしたオオカミの肝その他を弟子が持ってきた予備の収納庫に入れ、ついでに毛皮も剥ぐと場所を移動した。


「俺…病気には気をつけようと思う…」
 移動中、ややげっそりとしたデュエルが小声でぼやく。
「わかるぜ。普段見慣れた薬の材料を知っちまうとな…」
 そう言ってオレはラスファを見た。こいつは知ってんだろうかな?
「そんな風に見るな。確かに以前、ラグには悪いことをしたが…」
 小声で呟く奴のセリフに、なんか引っかかった。
 以前? 弟子に? 悪いこと?
 何やらかしたっけ、こいつ?
 やがて気づいたデュエルが、声を低めて奴に問いただした。
「ああ、あのドライアードの事件の時に飲ませた怪しい回復薬か?」
 ああ、そういえば。あの時、精神力使いきった弟子にドロリとした怪しい薬飲ませてたな…。
「おい、まさかアレ…」
「すまないが、材料は知らず…」
 おいいいいいぃぃ!
 オレは内心で絶叫した。何飲ませやがったこいつ、うちの弟子に!
「…大地母神の神殿謹製の試作品だが実際に効果もあったし、事前に毒味もさせられた。材料は怖くて聞けなかったが、一本試供品として渡されて持て余してたんだ…」
 それがあん時、役だったってか? 世の中解らねェもんだ。
「いや、たまにオメー薬の調合してなかったか? ありゃどうなんだ?」
 この際だ、オレはついでに素朴な疑問をぶつけてみることにした。
「アレは純粋に薬草だけを使ったものだ。動物性の材料を使うのは、人間に伝わった後で付け加えられた調合法とされている。薬草学にも系統というものがある」
 あー、納得。
 つか、その辺も弟子はレポートにまとめるといい成績取れそうだな。
 オレは日の傾きかけた空を仰いでため息をついた。
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