古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

文字の大きさ
206 / 405
Intermission 5 田舎大将、出陣!

田舎大将、奮闘!

しおりを挟む
side-ドラン 5

「助けてくれ~!!」
 まず最初に聞こえたのは、情けない悲鳴だった。
 地下の遺跡から駆け出しながら、数人の冒険者が息を切らしている。その周辺には犬ほどもあるでっけえ蜂が何十匹も飛び回っていた。近くの遺跡らしい建物から、まだまだ蜂は湧き出ている。こりゃマズイ!
 
「なんだアレ!」
「でかい蜂?!」
 周りの観光客が騒ぎ始める。相手が蜂ならちょっとまずいぞ、興奮しちまったら見境なしに攻撃を仕掛けちまう!

 おらは村の近くで巣を作る蜂を思い出した。おとなしい種類のやつは何もしなけりゃ攻撃はしねぇ。だが凶暴な種類のモンは、動く者すべてに見境なく襲いかかる上に数が多い。まして興奮すりゃタダじゃすまねぇ。
 こいつらはどうも、タチ悪い種類のやつだ。

「すんません! ギルドの探索依頼で潜ってたんですが、中に蜂の巣があったんです!」
「知らずに縄張りに入っちまってました!」
 すでに刺されてボコボコの数人が、黒髪の可愛い神官の手当てを受けながら状況を話す。
 集まった周辺の冒険者は、すでに武器を振るっていた。慣れたもんで、観光客の避難誘導も始まっている。その手際の良さに、おらは感心した。

 階級レベルの高いモンからは、早速指示が飛んでいる。ホントに緊急事態慣れしてるだな…。
 「古代語魔法を使う者は『眠りの霧スリープミスト』で飛んでるやつを叩き落とせ!」
「あとは落ちた奴にトドメを刺して回るんだ!」
 スッゲェな、いきなり連携ができてる感じだ! よし、おらも負けてらんねぇ!
 
 「リド! 行けそうか?」
  手に馴染んだナックルをはめながら、おらはリドに声をかける。だが…なんとも返事がこねぇ。
「おい、リド?」
 振り返ると、リドは観光客に混じって建物の中に隠れている。
「そそそそれじゃ、あとは頼んだ! オレはここで、観光客を守ってるぜ!」
 …ああ、そういやこいつこういう奴だった。ああ、知ってた!

「危ない!」
 さっきの可愛い神官娘の声で、おらは我に返った。うお、蜂の一匹がおらに狙いを定めている! リドのバカに気を取られて対応が遅れちまった!
 まずいな、ひと刺しくらいは覚悟すんべか?
 そう思った時だった。唐突に蜂が落ちた。よく見ると白羽の矢が突き立っている! 恐ろしい腕だ…。
「気をつけろ、次が来るぞ!」
「すまねぇ!」
 弓を手にした長い銀髪の青年が警告してくれた。ああ、確か繁華街で見かけた自警団の…! 手を振るとおらは針を突き出す蜂を裏拳で弾き飛ばす。ああ…おらは今、冒険者になってるだ…!

 それから。
 栗色の髪の幼い少女が繰り出す魔法で、眠らされて次々と落ちて来る蜂を戦士連中総出で倒して回った。ちなみにおらも、今までリドに振り回された鬱憤を乗せた拳で蜂を叩き潰して回る。
「お、新入り! 調子はどうだ?」
「ぼちぼちだ!」
 最初に忠告をくれた金髪の男が、短剣を振るいつつ声をかけて来る。あの時リドにお灸を据えてくれた、歴戦の戦士然とした大男が空中の蜂を数匹まとめて薙ぎ払う。自警団の小柄な金髪の少年が、目にも留まらぬ動きで槍を振るう…。

 世の中には、まだまだすげぇやつがたくさんいる。優れた戦士に魔法使い、弓使いに槍使いが入り乱れて巨大な蜂を次々と駆除していった。
 数十匹といたはずの巨大蜂も、地面を埋めるように転がっている。

 「これで、終わっただか?」
 肩で息をしながら、おらは誰ともなく問いかけた。そうであって欲しいんだがなぁ…。
「いえ、まだです。多分…」
 神官娘の声が答える。正直勘弁してもらいたかったが、やっぱし現実は甘くねぇべ…。

  遺跡の中から、腹に響くような地響きが轟いてきた。ちょっとばかし逃げてぇ気分だ。
 そして、遺跡の入り口を崩しながら出てきたのは…。

 さらにでっけえ、女王蜂だった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。   剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。  しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。   それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。 「期待外れだ」 「国の恥晒しめ」   掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。  だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。 『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』  彼だけが気づいた真実。  それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。  これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。 【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...