古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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Intermission 5 田舎大将、出陣!

田舎大将、死闘!

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side-ドラン 6

 おらは、出てきた女王蜂を前に拳を固めることを忘れてあんぐりと口を開けた。

 でけぇ。

 人間以上の上背に馬鹿でかい複眼、鮮やかな黄色い縞模様に申し訳程度の退化した羽。
 うわぁ…規格外の巨大な蜂って、思っていた以上にグロいだな…。

 思わず現実逃避もしたくなるだよ、出入り口崩しながら遺跡から出てくるのがコレだと。
 元々、虫類は苦手な方だ…これまで散々潰しておいてなんだけどよ。

 いやいや、どう思ったところで目の前の女王蜂が消えるなんてありえねぇんだ。なら、やるしかねぇ!
 おらは使い慣れたナックルを頼もしく思いながら拳を固めて女王蜂に向き合う。他のみんなも同意見のようだった。

「散開して距離を取ってください! 女王蜂は飛べない分、毒が…!」
 神官娘の言葉が終わらねぇうちに、女王蜂が動いた! 尖った口が開いて紫の煙がほとばしる!
毒の息ポイズン・ブレスか!?」
 誰かが悲鳴をあげる。風下にいた数人が、その煙に巻かれて咳き込み倒れちまった。

「ちょ…針じゃねぇのか? どういうこった?」
 思わず出た突っ込みに、神官娘が律儀に答える。
「他の働き蜂はそうなんですが、女王蜂はちょっと特殊なんです! ただし連発はできませんので、今のうちです!」
 言いながら神官魔法の使い手たちは、一斉に彼らの治療に当たった。大変だな、あんたらも…。

 真っ先に飛んだのは、銀髪青年の放った白羽の矢。正確に女王蜂の眉間に突き立つが、外殻が硬いせいか浅くとどまったようだ。だが痛みはあるようで、耳障りな悲鳴をあげつつ滅茶苦茶に手脚を振り回して暴れ出した。

「おいおい! 非力だな、相変わらず。詰めがあめぇぜ!」
 軽口とともに躍り出た金髪のチャラ男が暴れる手脚を右片側三本斬り飛ばして駆け抜ける。
「お前もだ、中途半端な!」
  今度は槍を構えた小柄な金髪少年が、左片側の手脚を吹き飛ばす。
  
 これが…これが本場の冒険者…! 

 おらはあまりの鮮やかさに見惚れちまった。
「ヨメ、あとでディナーに行く。用意しといてくれ!」
 次に来たのは、リドを片手で引き摺り回した黒髪の少女じゃないか! まさか彼女も冒険者?!
 そのまま彼女はガラ空きになった蜂の腹に正拳突きを抉り込む! 豪快な音と共に腹の部分に大きくヒビが入った! 

 こんな清楚な彼女が、まさか!

「行け、本命! あのヒビの場所なら攻撃が通じる!」
 銀髪の青年がこの場にいた最後の一人を促す。鼻先に一本傷の入った歴戦の戦士が、勇ましい雄叫びとともに手にした槍を突き込んだ!

 女王蜂の悲鳴がこだまする。槍は深く貫通し、逆側から穂先が突き出したが倒すにいたらねェ!
 おらは我に返った。そうだ、何しに来たんだ、おらは! ここで動かにゃ、おらはただの役立たずだ!

 衝動に突き動かされるように手負いの女王蜂に向けて走り込む。貫通した槍に縫いとめられて動けねぇ女王蜂は、おらに向けて口を開け煙を吹き出した。
 関係ねぇ、息を止めて突っ込む!
 
 狙うは最初に突き立てられた、白羽の矢。紫の煙を浴びせられながら雄叫びとともに飛び上がる。
 そのまま真っ直ぐに矢にナックルごと拳を叩きつけ…!
 
 突き込んだ槍で女王蜂を押さえた大男と目が合う。瞬間的に何かが通じ合って、互いにニヤリと笑みがこぼれる。
 そしてさらに突き込んだ矢に、左の拳をもう一撃叩き込み根元まで撃ち込んだ。

  奴の複眼から、生気が抜けるのがはっきりわかった。そのままぐらりとその身が傾ぎ…。
 もろに毒を受けたおらの視界も、そのまま暗転した。

 周りから上がる動揺の声。
 地面が近づいたところで、おらの記憶は途切れた…。
 
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