古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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intermission 6 アイドルは辛いよ

正義漢は冒険者に向かない?

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side-ラスファ 3

 アーチの奴、一体何をやっていたんだ?

 アーチ本人が囮になると思っていたら、いつの間にか部外者が巻き込まれている。
 襲撃者は捕まえたものの、この先極秘に事を進めることが困難になってしまっている。
 ついでに言えば、その巻き込まれ部外者は目の前で憤っている。

 …一体どうしてこうなった?

「嘘はいかん、嘘は!」
「いや、だからよ…」
「小さな嘘から犯罪が生まれることがある! 断じて嘘はいかん!」
 …憤るにしても、まずはそっちからか!
 路地裏の地面に襲撃者を転がしたままで、ピントのずれた口論は続いていた。アーチは助けを求めるような視線をこっちの向けているが…知るか。
 
 とは言えこんな平行線を長く続けることも単なる時間の無駄か。仕方ない。

「話し中に悪いが、ちょっといいか?」
 明らかにホッとしたアーチの表情にイラつくが、今はそんな場合でもない。
「偽りを言ったことは申し訳ない。だがこの事件については誰がどういう繋がりをもっているのかが全くつかめていなかった以上、身分を隠すことは致し方なかったことだ。現にさっき、襲撃を受けたことは事実だろう?」
 そこまで言うと、彼…エドガーは決まり悪そうに勢いをなくす。私はさらに畳み掛けた。

「今こうしている間にも、まだ同様の犠牲者が出ているのかもしれない。少しでも次の犠牲を食い止めないと今後、さらに深刻な事態に発展するかもしれないんだ。わかってくれるか?」
「………」

相手が黙ったところで、転がったままの襲撃者に目を落とす。とりあえず暴れる上に自害されても困るので、精霊魔法で眠らせた。

「アーチ、見たことあるやつか?」
 もちろんこの場合は『盗賊ギルド』でと言う意味だが、こっちの正義感の塊にそれを悟られては、さらに面倒な事になりかねない。
 こいつの融通のきかなさはラインハルト以上かもしれない。
「いや、ギルドでも見た事ねぇな。こりゃもしかしたら『闇ギルド』の奴じゃねぇの?」

 闇ギルド。
 冒険者ギルドに所属しない、モグリの組織だ。真っ当な依頼が来ることはなく非合法の…例えば窃盗や誘拐、果ては暗殺を請け負うこともあるそうだ。
 噂ばかりかと聞いていたら、いつのまにかエルダードにもその手は伸びて来ているとは…。

 冒険者ギルドとは不倶戴天の間柄な上、犯罪行為の温床になるために自警団でも取り締まり対象とされている。だが正体がつかめていないのが現状だ。

「ラインハルトに連絡するか?」
「いや、うちのギルドでじっくりとしてもらっとこう。快く話してくれることだろうよ」
「わかった。なら任せるぞ」
「よしきた」

 
 アーチが襲撃者を引きずっていくと、路地裏には私とエドガーだけが残された。
「君も冒険者か?」
 その質問に、私は頷く。
「ああ。アーチの冒険者仲間だ。ラスファエル・バリニーズ…ラスファでいい」

 そこまで言うと、とりあえず気になった事を聞いて見た。
「しかし、あんたもアイドル志望なのか? 一見して冒険者か自警団に見えたが?」
 その質問に、彼は苦笑いで答えた。

「まあな。もともと冒険者志望だったんだが、気がついたらあそこでレッスンを受けていてな。観光大使冒険者の養成所だと気づいた時は遅かった」
 …あー…騙されたのか。なんか納得した。

「どっちかというと、冒険者よりも自警団に向いていそうだな。そっちには興味ないか?」
 オブラートに包んでいるが、要するにこんな騙されやすくては冒険者は務まらないと言ったつもりだ。気づいているのかいないのか、彼はまんざらでもなさそうに考え込んだ。
「自警団か…それも悪くないな。正義のために町を守る…うん!」
「なら、一段落したら自警団のツテを紹介しようか? 知り合いは多いからな」

 そう言うと、いきなり腕を掴まれた。
「?!」
「ありがとう、恩に着る! 一旗あげようと出て来たが、何をすればいいのかわからなくなってな!」
 …いや、そこは先に決めておけよ…。
「いい奴だな、君は!」
「…そりゃどうも…」

 …なんというか…暑苦しくて苦手なタイプだ…。

 ひとまずは彼にもこの事件については協力してもらう事になりそうだ。
 騙されやすいところは気にかかるがな…。
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