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intermission 6 アイドルは辛いよ
小悪魔の部屋にて
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Side-アーチ 5
オレは懐かしの盗賊ギルドにやっと足を向けることができた。
健康的な生活ってのは、どうも慣れねぇやな。オレにはやっぱ、こう言う薄暗れぇ場所の方が性に合ってるぜ!
引きずって来たクソ重てェ襲撃者は、ギルドの力自慢に預けて来た。正直あまり遠くなくて助かったぜ!
せめてキレーな本物のねーちゃんだったら、もうちっと丁寧に運ぶんだがね? モドキじゃちょっとやる気がでねぇ。
久々の『小悪魔の部屋』に来たが、今回は手ブラだな…。まあ緊急時はしょうがねぇよな?
「ティンク、いるか?」
「居るわよ。やかましいわねぇ…相変わらず」
ノックもなしでいきなり開けると、見慣れたツインテールのピンク頭が不機嫌そうに現れた。
「なんでぇ、不機嫌だな。あの日か?」
無言でオレの顔面にクッションが叩きつけられる。
「出会い頭にご挨拶だな」
「ずいぶんなご挨拶にはふさわしいでしょ?」
…まあ確かにな。
「で、何を聞きたいの? 今回は手ぶらみたいだけど」
「…不機嫌の原因それかよ? まあ仕方ねぇだろ? イベントの潜入捜査で、絶賛アイドル修行中なんだからな」
ぶっっふぉっ!
何がおかしいのか、ティンクは盛大に吹き出した。
「え、ちょ…アイドル?! アンタが? マジで? ネタじゃなく?」
「言っとくが、潜入捜査のためだからな?」
「いやネタでしょ?! アンタが、アイドル修行って! 完全夜型な、ただれた生活してるアンタが? アイドルって! 」
そう言いながらティンクは腹を抱えて笑い続けた。時折「アイドル…!」だの「アーチが…!」などと無礼千万つぶやきが聞こえる。マジで失礼だな。
しばらくして笑いの発作が治まったんだろうぜ。ティンクはオレに向き直ると目尻をぬぐいながらぬかしやがった。
「そりゃ、さすがにあたしの情報網にも引っかからなかったわ。アンタあたしの腹筋殺す気?」
「…本題に入って良いか?」
オレはざっと事件のあらましを語り、ティンクはたまに吹き出しながら聞き続けた。
「ああ、それであのお客様なわけね?」
「そーゆーこと。見覚えはあるかい、情報屋さん?」
「そうね…『裏』は顔が売れたら終わりだから。色々情報を集めてみるわ」
「ああ。そんで、おもてなしは効果ありそうか?」
「どうかしらね? 」
そんな会話の末に、オレの前には香りのいい茶が置かれた。何か情報がある証拠だ。
「そういえば、なんて言ったかしら? 『青薔薇亭』? あまりいい評判は聞かないわね」
「ああ、やっぱりか」
「あそこにくっついたヤドリギ親子もね。まずは『青薔薇亭』の創始者だけど…ぶっちゃけ、元は詐欺師って話よ」
「ほう?」
いつものように茶飲み話に紛れて語られる情報。ちなみに今回、手土産なしと知った時の悲壮に満ちた表情は凄かった。『次に来る時は、ぜっったい悪魔のスイーツ持ってくるのよ!』と涙目で語っている。…そこまでか。
厨房エルフが作成したっつー、近隣の女子の体重を軒並み増やしたって噂の『白銀亭・悪魔のスイーツ』シリーズ。今更ながら、いろんな意味で破壊力がすげぇな。
ちなみにティンクも、ちょいちょい部下に並ばせて食った挙句に体重の増加に悩んだらしい。そんな悩むぐれぇなら食うなって話だが、食わずにいられんってのが『悪魔のスイーツ』の所以らしい。女って難儀だよな。
差し入れしたらしたで悩みのタネと体重が増えるとは思うが、しょうがねぇから持ってきてやるか。
ちょっとばかし脱線したな。
軽いお茶受けとして出されたクッキーに手を伸ばすと、オレは先を促す。
「創始者ってのは?」
「情報量は悪魔のタルト二個分ね?」
「へいへい」
「創始者の名はアングル・スタンレー。アンタも聞いたことあるでしょ? 表向きは別の名前だけどね」
ティンクが口にした名は、オレに衝撃を与えた。マジか、結構なビッグネームじゃねぇの!
国家をまるっと騙しただの、騙し取った金をどこそこに埋めたっつー眉唾の伝説すらあるぜ?
「ずいぶんな大物が絡んでたんだな。」
「まあね。やらかした詐欺は数知れず。結婚詐欺に寸借詐欺。そして…融資詐欺」
んん?
ティンクは意味ありげな目を向けてくる。
「さて問題です。八百長でアイドルの優勝者を先に決めておくメリットはなんでしょうか?」
「…先にグッズとか作っといて、時間短縮兼人件費削減?」
「いい線いってるわよ? でもね、スポンサーの存在を忘れてない? ついでに賭け事もね」
ん? 後援者?
そうか、読めたぜ!
アイドルを作り上げて後援者を作り、後援費としてそこから金を巻き上げる気か! ただの八百長じゃなく、もっと根が深いものだったとはね。
「その上賭け事かよ? どうしようもねぇな」
ティンクは笑って答えなかった。
オレは懐かしの盗賊ギルドにやっと足を向けることができた。
健康的な生活ってのは、どうも慣れねぇやな。オレにはやっぱ、こう言う薄暗れぇ場所の方が性に合ってるぜ!
引きずって来たクソ重てェ襲撃者は、ギルドの力自慢に預けて来た。正直あまり遠くなくて助かったぜ!
せめてキレーな本物のねーちゃんだったら、もうちっと丁寧に運ぶんだがね? モドキじゃちょっとやる気がでねぇ。
久々の『小悪魔の部屋』に来たが、今回は手ブラだな…。まあ緊急時はしょうがねぇよな?
「ティンク、いるか?」
「居るわよ。やかましいわねぇ…相変わらず」
ノックもなしでいきなり開けると、見慣れたツインテールのピンク頭が不機嫌そうに現れた。
「なんでぇ、不機嫌だな。あの日か?」
無言でオレの顔面にクッションが叩きつけられる。
「出会い頭にご挨拶だな」
「ずいぶんなご挨拶にはふさわしいでしょ?」
…まあ確かにな。
「で、何を聞きたいの? 今回は手ぶらみたいだけど」
「…不機嫌の原因それかよ? まあ仕方ねぇだろ? イベントの潜入捜査で、絶賛アイドル修行中なんだからな」
ぶっっふぉっ!
何がおかしいのか、ティンクは盛大に吹き出した。
「え、ちょ…アイドル?! アンタが? マジで? ネタじゃなく?」
「言っとくが、潜入捜査のためだからな?」
「いやネタでしょ?! アンタが、アイドル修行って! 完全夜型な、ただれた生活してるアンタが? アイドルって! 」
そう言いながらティンクは腹を抱えて笑い続けた。時折「アイドル…!」だの「アーチが…!」などと無礼千万つぶやきが聞こえる。マジで失礼だな。
しばらくして笑いの発作が治まったんだろうぜ。ティンクはオレに向き直ると目尻をぬぐいながらぬかしやがった。
「そりゃ、さすがにあたしの情報網にも引っかからなかったわ。アンタあたしの腹筋殺す気?」
「…本題に入って良いか?」
オレはざっと事件のあらましを語り、ティンクはたまに吹き出しながら聞き続けた。
「ああ、それであのお客様なわけね?」
「そーゆーこと。見覚えはあるかい、情報屋さん?」
「そうね…『裏』は顔が売れたら終わりだから。色々情報を集めてみるわ」
「ああ。そんで、おもてなしは効果ありそうか?」
「どうかしらね? 」
そんな会話の末に、オレの前には香りのいい茶が置かれた。何か情報がある証拠だ。
「そういえば、なんて言ったかしら? 『青薔薇亭』? あまりいい評判は聞かないわね」
「ああ、やっぱりか」
「あそこにくっついたヤドリギ親子もね。まずは『青薔薇亭』の創始者だけど…ぶっちゃけ、元は詐欺師って話よ」
「ほう?」
いつものように茶飲み話に紛れて語られる情報。ちなみに今回、手土産なしと知った時の悲壮に満ちた表情は凄かった。『次に来る時は、ぜっったい悪魔のスイーツ持ってくるのよ!』と涙目で語っている。…そこまでか。
厨房エルフが作成したっつー、近隣の女子の体重を軒並み増やしたって噂の『白銀亭・悪魔のスイーツ』シリーズ。今更ながら、いろんな意味で破壊力がすげぇな。
ちなみにティンクも、ちょいちょい部下に並ばせて食った挙句に体重の増加に悩んだらしい。そんな悩むぐれぇなら食うなって話だが、食わずにいられんってのが『悪魔のスイーツ』の所以らしい。女って難儀だよな。
差し入れしたらしたで悩みのタネと体重が増えるとは思うが、しょうがねぇから持ってきてやるか。
ちょっとばかし脱線したな。
軽いお茶受けとして出されたクッキーに手を伸ばすと、オレは先を促す。
「創始者ってのは?」
「情報量は悪魔のタルト二個分ね?」
「へいへい」
「創始者の名はアングル・スタンレー。アンタも聞いたことあるでしょ? 表向きは別の名前だけどね」
ティンクが口にした名は、オレに衝撃を与えた。マジか、結構なビッグネームじゃねぇの!
国家をまるっと騙しただの、騙し取った金をどこそこに埋めたっつー眉唾の伝説すらあるぜ?
「ずいぶんな大物が絡んでたんだな。」
「まあね。やらかした詐欺は数知れず。結婚詐欺に寸借詐欺。そして…融資詐欺」
んん?
ティンクは意味ありげな目を向けてくる。
「さて問題です。八百長でアイドルの優勝者を先に決めておくメリットはなんでしょうか?」
「…先にグッズとか作っといて、時間短縮兼人件費削減?」
「いい線いってるわよ? でもね、スポンサーの存在を忘れてない? ついでに賭け事もね」
ん? 後援者?
そうか、読めたぜ!
アイドルを作り上げて後援者を作り、後援費としてそこから金を巻き上げる気か! ただの八百長じゃなく、もっと根が深いものだったとはね。
「その上賭け事かよ? どうしようもねぇな」
ティンクは笑って答えなかった。
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