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intermission 6 アイドルは辛いよ
急ごしらえのパーティ
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side-デュエル 9
事態は混乱を極めた。
出口を求めて殺到する観客たちに、一階の舞台上では牛ほどもある大きさのヘルハウンドが三頭もうろついている。
「時間稼ぎ、やるしかないか…」
俺はため息とともに、仲間たちを振り返った。マックから手渡された、馴染みのない剣を抜き放つ。思った以上に頑丈そうだ…これならいけるか?
ヘルハウンドたちが、こっちに目をつけたようだ。観客たちが逃げるための時間稼ぎに、食い止めるとするか!
「よう、オレ思うんだがなあ?」
「なんだよ?」
「別に、全部倒しちまっても問題ねぇよな?」
そのアーチの言い草に、俺は吹き出した。確かにその通りだ!
相手はヘルハウンドが三体。相手としては十分だ!
「まずは、炎を封じるか!」
ラスファがまず動いた。いつもの弓を持たないために、もっぱら精霊魔法の担当に徹する気のようだ。
「『氷精よ、かの者の炎を封じよ』!」
先頭にいる一頭に向けて、氷の魔法は放たれる。
時々思うが、彼の使う精霊魔法というものは使う属性のものが近くにないとダメだと聞いたが…氷がなくとも問題なく発動しているこの場合はどうなのだろうか?
素朴な疑問をよそに問題なく発動した精霊魔法は、先頭のヘルハウンドの口元を完全に凍りつかせた。吠え声一つ上げられず、不満げな唸りを上げている。続けて同じ魔法が全てのヘルハウンドにかけられた。よし、とりあえず被害を抑えることもどうにかなりそうだ!
いまにも飛びかかるかと思われたナユタは、少々イラついたようにドレスの裾をつまんで見せた。
そして無造作に裾を引き破り、膝丈ほどの長さにしてしまった!
「よし、これならいけそうだ」
その大胆さに、俺は唖然とした。彼女はもしや骨の髄まで戦闘民族か何かなのだろうか?
「いくぞ」
短い宣言とともに彼女は先頭のやつに向けて飛び蹴りを放つ。横合いからもう一頭が放つ突進は、正義漢エドガーが真正面から受け止めた!
「おりゃあああ!」
雄々しい雄叫びは全員を奮い立たせた。俺も使い慣れない剣を振るい、巨大な猟犬の喉を狙う。手応えは、少々浅いか!?
それでも、傷を負った敵の悲鳴は舞台上から大きく響き渡った。逃げ惑う観客のパニックはその一声で少し薄れ、何事かと注目が集まる。
「いっくぜえ!」
そこを狙ったかのようなアーチの掛け声。相変わらず、どこから出したのかわからないナイフがヘルハウンドの顔面に数本投げつけられる。そこにすかさずラスファが光球を放ってダメージを与えた。
「おい、先頭のやつ火を放とうとしてるぞ!」
エドガーの指摘通り、先頭のヘルハウンドが大きく息を吸い込み始めた。明らかに火を放つ予備動作だ!
「…思ったより魔法に耐性がありそうだな…」
舌打ちしながら防御魔法を展開しようとするラスファ。そこに、背後から光の矢が放たれた!
「あたしもいること、忘れてないでしょうね?」
離れた二階席から放たれた、アーシェの古代語魔法だ!
予想以上に痛かったのだろう、全てのヘルハウンドが背後を振り返って威嚇し始めた。
「え、ちょ…ヤダ、こっちこないでよお!」
そこに、ナユタが横合いからタックルをかけた。そのまま抱え込んだ前足を持ち上げて…って、おい! なにを…?
「義妹に、何をする…!」
「はあああ!?」
ナユタはヘルハウンドをその場で投げ飛ばした! その巨大な体躯に巻き込まれる形で他の二頭もなぎ倒される!
いつのまにか足を止めて観戦モードになってきた観客たちから、驚きと賞賛の歓声が上がった。
「な…投げたー!?」
あ、いや。驚いてる場合じゃなかった! すかさずひっくり返った先頭のヘルハウンドの心臓にとどめの一撃を突き込む!
もともと存在があやふやだったのか、その一撃で敵は雲散霧消してしまった!
「あとは…二体!」
「どさくさ紛れで何言ってる?」
ラスファの呆れたような声。
「ヨメの妹なら、私の妹も同然だ」
「お前な…」
脱力するような背後からのやりとりに、俺は苦笑した。相変わらずナユタは押しが強い。
急ごしらえのメンバーだが、どうにかなりそうだ。
事態は混乱を極めた。
出口を求めて殺到する観客たちに、一階の舞台上では牛ほどもある大きさのヘルハウンドが三頭もうろついている。
「時間稼ぎ、やるしかないか…」
俺はため息とともに、仲間たちを振り返った。マックから手渡された、馴染みのない剣を抜き放つ。思った以上に頑丈そうだ…これならいけるか?
ヘルハウンドたちが、こっちに目をつけたようだ。観客たちが逃げるための時間稼ぎに、食い止めるとするか!
「よう、オレ思うんだがなあ?」
「なんだよ?」
「別に、全部倒しちまっても問題ねぇよな?」
そのアーチの言い草に、俺は吹き出した。確かにその通りだ!
相手はヘルハウンドが三体。相手としては十分だ!
「まずは、炎を封じるか!」
ラスファがまず動いた。いつもの弓を持たないために、もっぱら精霊魔法の担当に徹する気のようだ。
「『氷精よ、かの者の炎を封じよ』!」
先頭にいる一頭に向けて、氷の魔法は放たれる。
時々思うが、彼の使う精霊魔法というものは使う属性のものが近くにないとダメだと聞いたが…氷がなくとも問題なく発動しているこの場合はどうなのだろうか?
素朴な疑問をよそに問題なく発動した精霊魔法は、先頭のヘルハウンドの口元を完全に凍りつかせた。吠え声一つ上げられず、不満げな唸りを上げている。続けて同じ魔法が全てのヘルハウンドにかけられた。よし、とりあえず被害を抑えることもどうにかなりそうだ!
いまにも飛びかかるかと思われたナユタは、少々イラついたようにドレスの裾をつまんで見せた。
そして無造作に裾を引き破り、膝丈ほどの長さにしてしまった!
「よし、これならいけそうだ」
その大胆さに、俺は唖然とした。彼女はもしや骨の髄まで戦闘民族か何かなのだろうか?
「いくぞ」
短い宣言とともに彼女は先頭のやつに向けて飛び蹴りを放つ。横合いからもう一頭が放つ突進は、正義漢エドガーが真正面から受け止めた!
「おりゃあああ!」
雄々しい雄叫びは全員を奮い立たせた。俺も使い慣れない剣を振るい、巨大な猟犬の喉を狙う。手応えは、少々浅いか!?
それでも、傷を負った敵の悲鳴は舞台上から大きく響き渡った。逃げ惑う観客のパニックはその一声で少し薄れ、何事かと注目が集まる。
「いっくぜえ!」
そこを狙ったかのようなアーチの掛け声。相変わらず、どこから出したのかわからないナイフがヘルハウンドの顔面に数本投げつけられる。そこにすかさずラスファが光球を放ってダメージを与えた。
「おい、先頭のやつ火を放とうとしてるぞ!」
エドガーの指摘通り、先頭のヘルハウンドが大きく息を吸い込み始めた。明らかに火を放つ予備動作だ!
「…思ったより魔法に耐性がありそうだな…」
舌打ちしながら防御魔法を展開しようとするラスファ。そこに、背後から光の矢が放たれた!
「あたしもいること、忘れてないでしょうね?」
離れた二階席から放たれた、アーシェの古代語魔法だ!
予想以上に痛かったのだろう、全てのヘルハウンドが背後を振り返って威嚇し始めた。
「え、ちょ…ヤダ、こっちこないでよお!」
そこに、ナユタが横合いからタックルをかけた。そのまま抱え込んだ前足を持ち上げて…って、おい! なにを…?
「義妹に、何をする…!」
「はあああ!?」
ナユタはヘルハウンドをその場で投げ飛ばした! その巨大な体躯に巻き込まれる形で他の二頭もなぎ倒される!
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「な…投げたー!?」
あ、いや。驚いてる場合じゃなかった! すかさずひっくり返った先頭のヘルハウンドの心臓にとどめの一撃を突き込む!
もともと存在があやふやだったのか、その一撃で敵は雲散霧消してしまった!
「あとは…二体!」
「どさくさ紛れで何言ってる?」
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「ヨメの妹なら、私の妹も同然だ」
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