244 / 405
intermission 6 アイドルは辛いよ
苦戦と無双
しおりを挟む
side-デュエル 10
いつしか、観客たちは避難する足を止めて俺たちの戦いぶりに注目していた。
前々から思っていたことだが、この町に居る住民は基本的に物見高い。危険であろうがなんだろうが面白いと思ったことには敏感で、何でも首を突っ込むきらいがある。
ちょうど今回のように。
「なんでみんな逃げないんだよ! 危ないから早く避難してくれ!」
エドガーが悲鳴めいた声を上げるが、それも無理はない。
「行け行け、兄ちゃん達! そこだ、やれ!」
「あの娘って確か、地下闘技場にいたよな!? 可愛い上に強いって、サイコー!」
「きゃー!! 頑張ってお兄さんたち~♪」
周囲から上がる声に、俺はナユタに聞いてみた。
「なあ、もしかしたらナユタ…闘技場では注目選手だったりするのか?」
「さあ? 観客になったことないから、正直言ってわからない」
「…だろうなー…」
ちなみにこの会話は繰り出されるヘルハウンドのツメヤキバ、ときに炎をいなしながらのものだ。間合いをつかんだ俺とアーチの剣、そしてナユタやエドガーの体術が振るわれるたびに上がる歓声。そして、ひときわ高いのが…。
エルダード在住の一般人でもなかなか見ることのないラスファの、精霊魔法に上がる歓声だ。
「…勘弁してくれ…!」
「オメー、どさくさ紛れに観客席に撃ち込もうとか思ってねぇだろうな?」
「どす黒いジョークはいいから、さっさと倒すぞ!」
そうは言うが…ラグのアドバイスで氷属性に弱いと教わっても威力の大きな精霊魔法を撃ち込めば、観客にも多数の怪我人が出かねない。
観客さえさっさと逃げてくれればもっとスムーズに行くのだが…。
「何やってるんだ自警団! さっさと詐欺師捕まえて避難誘導をしてくれ!」
言ってみたところで、どうにもならないことは承知している。ヘルハウンドの猛攻で砂埃はもうもうと立ち込め、視界も塞がれる。そんな中でナユタが動いた。
「私に、考えがある。ちょっと来てくれ、ヨメ!」
「…だから、ヨメはよせと…」
「ちょっとだけ、食い止めていてくれ! すぐ戻る!」
言いながらナユタは、ラスファを物陰に引っ張り込んだ。何をするつもりかわからないが、ここは従ったほうが良さそうだ。
「何する気だ、おい…?」
いぶかしむアーチに、俺は号令をかける。
「いいから、今は奴らを牽制しろ! 俺にも何だかわからんが、打開するだけの秘策がありそうだ」
それから暫くして、ナユタだけが物陰から出て来た。こころなしか、さっきよりもなんというか…生気に満ち満ちている気がする。
全身には金色の輝きを帯び、表情にも野性味が増していた。例えるなら、猫が虎に変身したと言う感じだ。存在感も威圧感も、今までとは段違いに上がっている。
「待たせたな、後は任せてくれ!」
「って…おい、ラスファは?」
「大丈夫だ、多分!」
「…多分…?」
そこからはまさに、ナユタ無双の時間だった。黄金の輝きを帯びたナユタは、放たれた矢のような勢いでヘルハウンド達を翻弄していた。観客達もその拳や蹴りの鮮やかさに歓声を上げることを忘れて見入っている。
アイドルとして、ぎこちないダンスをしていた彼女とは別人のように軽々と宙を舞い、次々とヘルハウンド達を駆逐していく。
完全に俺たちの出番は無くなっていた。というか、俺たちまで彼女の変貌ぶりに見入ってしまっていた。
一体、何をどうしたらここまで圧倒するようなパワーアップがなされるというのだろうか?
そして、いまだに出てこないラスファは無事なのだろうか…?
最後の気合とともに、気がつけば残り一体になっていたヘルハウンドが消滅した。
静かなどよめきが上がり、観客達からは若干引き気味のどよめきと拍手が上がる。
同時に、ラインハルトが戻ってきた。
「待たせたな。少々手こずったが詐欺師は無事、捕縛した。本部詰所に護送が完了だ」
「「「遅せぇよ!!!!」」」
その報告にその場にいた俺たちの声がハモった。確かに自警団も苦戦しただろうが、こっちも大変な目に…。
「そうだ、ラスファは?!」
ナユタがどうやってあそこまでの無双状態になったのかはわからない。だがあの時に物陰に引っ張られたラスファがどうなっているのかがとにかく気にかかった。
何があったかはわからないが、無事なんだろうな?
いつしか、観客たちは避難する足を止めて俺たちの戦いぶりに注目していた。
前々から思っていたことだが、この町に居る住民は基本的に物見高い。危険であろうがなんだろうが面白いと思ったことには敏感で、何でも首を突っ込むきらいがある。
ちょうど今回のように。
「なんでみんな逃げないんだよ! 危ないから早く避難してくれ!」
エドガーが悲鳴めいた声を上げるが、それも無理はない。
「行け行け、兄ちゃん達! そこだ、やれ!」
「あの娘って確か、地下闘技場にいたよな!? 可愛い上に強いって、サイコー!」
「きゃー!! 頑張ってお兄さんたち~♪」
周囲から上がる声に、俺はナユタに聞いてみた。
「なあ、もしかしたらナユタ…闘技場では注目選手だったりするのか?」
「さあ? 観客になったことないから、正直言ってわからない」
「…だろうなー…」
ちなみにこの会話は繰り出されるヘルハウンドのツメヤキバ、ときに炎をいなしながらのものだ。間合いをつかんだ俺とアーチの剣、そしてナユタやエドガーの体術が振るわれるたびに上がる歓声。そして、ひときわ高いのが…。
エルダード在住の一般人でもなかなか見ることのないラスファの、精霊魔法に上がる歓声だ。
「…勘弁してくれ…!」
「オメー、どさくさ紛れに観客席に撃ち込もうとか思ってねぇだろうな?」
「どす黒いジョークはいいから、さっさと倒すぞ!」
そうは言うが…ラグのアドバイスで氷属性に弱いと教わっても威力の大きな精霊魔法を撃ち込めば、観客にも多数の怪我人が出かねない。
観客さえさっさと逃げてくれればもっとスムーズに行くのだが…。
「何やってるんだ自警団! さっさと詐欺師捕まえて避難誘導をしてくれ!」
言ってみたところで、どうにもならないことは承知している。ヘルハウンドの猛攻で砂埃はもうもうと立ち込め、視界も塞がれる。そんな中でナユタが動いた。
「私に、考えがある。ちょっと来てくれ、ヨメ!」
「…だから、ヨメはよせと…」
「ちょっとだけ、食い止めていてくれ! すぐ戻る!」
言いながらナユタは、ラスファを物陰に引っ張り込んだ。何をするつもりかわからないが、ここは従ったほうが良さそうだ。
「何する気だ、おい…?」
いぶかしむアーチに、俺は号令をかける。
「いいから、今は奴らを牽制しろ! 俺にも何だかわからんが、打開するだけの秘策がありそうだ」
それから暫くして、ナユタだけが物陰から出て来た。こころなしか、さっきよりもなんというか…生気に満ち満ちている気がする。
全身には金色の輝きを帯び、表情にも野性味が増していた。例えるなら、猫が虎に変身したと言う感じだ。存在感も威圧感も、今までとは段違いに上がっている。
「待たせたな、後は任せてくれ!」
「って…おい、ラスファは?」
「大丈夫だ、多分!」
「…多分…?」
そこからはまさに、ナユタ無双の時間だった。黄金の輝きを帯びたナユタは、放たれた矢のような勢いでヘルハウンド達を翻弄していた。観客達もその拳や蹴りの鮮やかさに歓声を上げることを忘れて見入っている。
アイドルとして、ぎこちないダンスをしていた彼女とは別人のように軽々と宙を舞い、次々とヘルハウンド達を駆逐していく。
完全に俺たちの出番は無くなっていた。というか、俺たちまで彼女の変貌ぶりに見入ってしまっていた。
一体、何をどうしたらここまで圧倒するようなパワーアップがなされるというのだろうか?
そして、いまだに出てこないラスファは無事なのだろうか…?
最後の気合とともに、気がつけば残り一体になっていたヘルハウンドが消滅した。
静かなどよめきが上がり、観客達からは若干引き気味のどよめきと拍手が上がる。
同時に、ラインハルトが戻ってきた。
「待たせたな。少々手こずったが詐欺師は無事、捕縛した。本部詰所に護送が完了だ」
「「「遅せぇよ!!!!」」」
その報告にその場にいた俺たちの声がハモった。確かに自警団も苦戦しただろうが、こっちも大変な目に…。
「そうだ、ラスファは?!」
ナユタがどうやってあそこまでの無双状態になったのかはわからない。だがあの時に物陰に引っ張られたラスファがどうなっているのかがとにかく気にかかった。
何があったかはわからないが、無事なんだろうな?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ
よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。
剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。
しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。
それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。
「期待外れだ」
「国の恥晒しめ」
掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。 だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。
『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』
彼だけが気づいた真実。
それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。
これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。
【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる