古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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intermission 6 アイドルは辛いよ

苦戦と無双

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side-デュエル 10

 いつしか、観客たちは避難する足を止めて俺たちの戦いぶりに注目していた。
 前々から思っていたことだが、この町に居る住民は基本的に物見高い。危険であろうがなんだろうが面白いと思ったことには敏感で、何でも首を突っ込むきらいがある。
 ちょうど今回のように。

 「なんでみんな逃げないんだよ! 危ないから早く避難してくれ!」
 エドガーが悲鳴めいた声を上げるが、それも無理はない。

「行け行け、兄ちゃん達! そこだ、やれ!」
「あの娘って確か、地下闘技場にいたよな!? 可愛い上に強いって、サイコー!」
「きゃー!! 頑張ってお兄さんたち~♪」

 周囲から上がる声に、俺はナユタに聞いてみた。
「なあ、もしかしたらナユタ…闘技場では注目選手だったりするのか?」
「さあ? 観客になったことないから、正直言ってわからない」
「…だろうなー…」

 ちなみにこの会話は繰り出されるヘルハウンドのツメヤキバ、ときに炎をいなしながらのものだ。間合いをつかんだ俺とアーチの剣、そしてナユタやエドガーの体術が振るわれるたびに上がる歓声。そして、ひときわ高いのが…。
 エルダード在住の一般人でもなかなか見ることのないラスファの、精霊魔法に上がる歓声だ。

「…勘弁してくれ…!」
「オメー、どさくさ紛れに観客席に撃ち込もうとか思ってねぇだろうな?」
「どす黒いジョークはいいから、さっさと倒すぞ!」

 そうは言うが…ラグのアドバイスで氷属性に弱いと教わっても威力の大きな精霊魔法を撃ち込めば、観客にも多数の怪我人が出かねない。
 観客さえさっさと逃げてくれればもっとスムーズに行くのだが…。
 
「何やってるんだ自警団! さっさと詐欺師捕まえて避難誘導をしてくれ!」
 言ってみたところで、どうにもならないことは承知している。ヘルハウンドの猛攻で砂埃はもうもうと立ち込め、視界も塞がれる。そんな中でナユタが動いた。

「私に、考えがある。ちょっと来てくれ、ヨメ!」
「…だから、ヨメはよせと…」
  「ちょっとだけ、食い止めていてくれ! すぐ戻る!」

 言いながらナユタは、ラスファを物陰に引っ張り込んだ。何をするつもりかわからないが、ここは従ったほうが良さそうだ。
「何する気だ、おい…?」
 いぶかしむアーチに、俺は号令をかける。
「いいから、今は奴らを牽制しろ! 俺にも何だかわからんが、打開するだけの秘策がありそうだ」

 それから暫くして、ナユタだけが物陰から出て来た。こころなしか、さっきよりもなんというか…生気に満ち満ちている気がする。
 全身には金色の輝きオーラを帯び、表情にも野性味が増していた。例えるなら、猫が虎に変身したと言う感じだ。存在感も威圧感も、今までとは段違いに上がっている。

「待たせたな、後は任せてくれ!」
「って…おい、ラスファは?」
「大丈夫だ、多分!」
「…多分…?」

 そこからはまさに、ナユタ無双の時間だった。黄金の輝きを帯びたナユタは、放たれた矢のような勢いでヘルハウンド達を翻弄していた。観客達もその拳や蹴りの鮮やかさに歓声を上げることを忘れて見入っている。
 アイドルとして、ぎこちないダンスをしていた彼女とは別人のように軽々と宙を舞い、次々とヘルハウンド達を駆逐していく。

 完全に俺たちの出番は無くなっていた。というか、俺たちまで彼女の変貌ぶりに見入ってしまっていた。
 一体、何をどうしたらここまで圧倒するようなパワーアップがなされるというのだろうか?
 そして、いまだに出てこないラスファは無事なのだろうか…?

 最後の気合とともに、気がつけば残り一体になっていたヘルハウンドが消滅した。
 静かなどよめきが上がり、観客達からは若干引き気味のどよめきと拍手が上がる。
 
 同時に、ラインハルトが戻ってきた。
「待たせたな。少々手こずったが詐欺師は無事、捕縛した。本部詰所に護送が完了だ」
「「「遅せぇよ!!!!」」」
 その報告にその場にいた俺たちの声がハモった。確かに自警団向こうも苦戦しただろうが、こっちも大変な目に…。
「そうだ、ラスファは?!」

 ナユタがどうやってあそこまでの無双状態になったのかはわからない。だがあの時に物陰に引っ張られたラスファがどうなっているのかがとにかく気にかかった。

 何があったかはわからないが、無事なんだろうな?
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