古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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mission 4 ワンコ王国、建国のススメ!

主人候補なんて聞いてない!

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side-アーチ 2

 もっかい外に出てみりゃ、意外なことに大勢の犬獣人たちが出揃っていた。
「うわあ、犬さんたちがいっぱい!」
 姿は様々、直立した犬そのものって感じの奴から人間に近い姿で耳と尻尾だけの奴、あるいはその中間のどれかだ。人数にしてだいたい五十人くらいか? 男女取り混ぜて、そこそこな数だ。
 別の場所で待っているというのは、おそらく非戦闘員ってとこだろう。ま、良いさ。犬は嫌いじゃねぇんだ実は。

 連中はずらりと整列すると、一斉に頭を下げて来た。尻尾がある者は一斉に千切れんばかりに振っている。
「「「「いらっしゃいませ、新たなる主人マスター候補様がた!」」」」
 …………は?

 「えっと、あの…どゆこと?」
 困惑しながらのオレの問いに、バスチアンが答える。
「建国するにあたって、国主を定めたいという意見が多く…チャールズ殿を国主として打診した結果、自分より優れた候補者を派遣するという返事があった。皆、あなた方のどなたかを国主として推す所存だ」

「「「はあああああ!?」」」
 つまりはアレか? 全部知った上で丸投げしやがったな、あのおっさん!
 何が『主人リーダー不在』だよ! 思いっきり自分が主人候補じゃねぇか!
「おいどうしてやろうか、あのおっさん?」
「無論ただでは済まさない」
  傍らのラスファに問えば、図ったような阿吽の呼吸。あーヤダヤダ、こちとら策略は使いたくなかったってのによ!


 ちょっとばかしタンマもらって、オレらは元の建物に引っ込んだ。もちろん今後の対応会議だ。

「こうなると多分、エルダード上層部は犬獣人族の取り込みを狙ってやがるな?」
 オレの意見に、デュエルが異を唱える。
「だがチャールズさんが言っていたことと、あまりに違わないか? だったら何故建国なんて…」
「そうだよ、小さくても国を作ればみんな落ち着ける場所ができるんでしょ? 国主なんて、みんなが納得出来れば誰でも良いわけなんだしさ」
 アーシェが言い募る。確かに基本はそんな感じでいいのかもしんねぇけどな? だがまあ、そんな単純でもねぇのよ、この問題は。

「それは逆じゃないのか? むしろ建国のためと大義名分を打って開拓を進めると同時に、この中の誰かが主人になれば…」
 ラスファの推測に、オレは頷いた。
「居住区の拡大と、住人の増加。さらにゃ、開拓のための労働力が手に入る…ってか? うわえげつねぇ」
「組織の上層部が考えそうなことだ」
 
 実際のところ、エルダードの内部開拓はあまり進んでいないのが現状だ。開拓しようにも、住人の冒険者たちは外部からの依頼を受ける方が実入りが良いために、開拓関連の依頼には食いつきが悪い。
 加えてこの観光地化の波が押し寄せてしまったが故に、開拓よりも観光客の安全確保のために人員を割かざるを得なくなっている。
 内部開拓を進めるべきという意見は通りづらいんだろうぜ。

 そこに持って来て、この依頼だ。
 犬獣人の建国を建前に開拓を進められる上に冒険者たちを国主に推されれば、エルダードの属国化もしくは吸収合併という形を取って拡大されるという筋書きだろうか? 
 あわよくば、犬獣人たちは冒険者として抱え込むこともできるだろう。
 だが…。
「…見通しが甘いな、エルダード上層部上の連中は」
 厨房エルフの言う通りだ。

 
 オレたちは軽く打ち合わせを終えて外に出ると、リーダーのデュエルを中心に並んだ。再び上がる喝采に、デュエルが高らかに宣言する。

「俺たちはこれから建国を推し進めるに当たって、派遣されて来た冒険者だ! これからよろしく頼む!」

 歓声がさらに高まった。まあ、最終的なオレたちの結論ってやつだ。
 上層部の思惑なんざ、知ったことか。こっちはこっちのやり方でやらせてもらう。

  とりあえず主人リーダー云々ってのは…ま、なるようにしかならねぇだろ!
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