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mission 4 ワンコ王国、建国のススメ!
未来は交渉次第?
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side-ラスファ 9
「進捗状況の中間報告かい?」
広くもなく狭くもない、シンプルな応接室。そこで初老の男が片眼鏡を直しつつ、振った仕事を受けた冒険者を出迎えた。
ここは冒険者ギルド本部。アーチが注文した布が織り上がるのを待って、私は一度エルダードに戻ってきたのだ。
夜を徹して織り続けたアーシェの友人には、悪いことをした。そこまで急がせるつもりもなかったんだが、本人の中の何かに火がついてしまっていたらしい。さらに別行動でアーシェとその友人、そしてアーチが市街地の方に行っている。
デュエルとラグには悪いが、現地の防衛の名目でバスチアンたちと待機してもらっている。ここから先は正直者には辛い場面になるだろうから。
建国の動きはもう大詰めに向かっている。そのためには、こっちの役者に対して布石を打つ必要があった。
「そう大げさな話でもない。ただ、取引をしたいだけだ」
犬獣人族の建国に向けての交渉に向かった私の言葉に、ギルド上層部のチャールズさんは食いついて来た。
「取引…?」
すっとぼけた顔つきで彼は首をかしげる。本当に大した狸だ…私はさらに畳み掛けた。
「『犬獣人の国』を『国』として認める条件だ」
「いや、だから建国するため君たちには行ってもらってるのでは? それに、認めるも認めないもないだろう? 国を運営するために、いちいちエルダードの了承もいらないだろうし。そこを理解出来ていないと…」
そこから先の答えを、私は遮った。
「表向きはな。この際だから言わせてもらうが、犬獣人の国を認めるつもりがないと見受けられたのでな」
チャールズさんは黙った。やはりか…このリアクションだと、認めたようなものだ。
「気づいていたのか…」
ややあって、彼は呻き声をあげる。
「君たちを派遣したのは失敗だったな。それで? 要求は?」
悪びれない態度で彼は、運ばれて来た香茶を一口啜る。
「冒険都市エルダードと犬獣人の国との友好条約と不可侵条約を締結してもらう。国の運営について一方的に指図をすることも事実上の属国にすることもなく…な?」
「ほう?」
「それともう一つ。犬獣人たちの国に外敵が攻め込んで来た場合、エルダードが無条件で救援を保証するという契約もだ」
彼はテーブルを叩きつつ立ち上がった。
「馬鹿な! 依頼もなく動けというのか?」
私は静かに頷いた。
「今現在、闇ギルドが動き始めている。建国に対する妨害工作を幾度か仕掛けられた上に、交戦もした。結果十人ほど捕虜もいるし、ある程度の情報も取れた。目下のところ、犬獣人の国に救援を送るという事は、闇ギルドの撲滅につながる可能性が高い…こちらに利がない訳でもないだろう?」
闇ギルドの存在は上層部にも知られていないと同時に、頭痛の種でもある。冒険者を名乗って悪事を働く闇ギルドは不戴天の敵だが、決定的に情報が足りない。
「…そういうことか…」
呻きながら彼は再び座り込む。
彼の目的及び建国に対する利害は分からない。だが、ギルド評議会員としての矜持も大いに持ち合わせている。
そこを信用した上での、今回の策でもあった。
そして仕上げの策はもうすぐ発動することになるのだ。
そっちはアーチたちの働きにかかっていた。
「進捗状況の中間報告かい?」
広くもなく狭くもない、シンプルな応接室。そこで初老の男が片眼鏡を直しつつ、振った仕事を受けた冒険者を出迎えた。
ここは冒険者ギルド本部。アーチが注文した布が織り上がるのを待って、私は一度エルダードに戻ってきたのだ。
夜を徹して織り続けたアーシェの友人には、悪いことをした。そこまで急がせるつもりもなかったんだが、本人の中の何かに火がついてしまっていたらしい。さらに別行動でアーシェとその友人、そしてアーチが市街地の方に行っている。
デュエルとラグには悪いが、現地の防衛の名目でバスチアンたちと待機してもらっている。ここから先は正直者には辛い場面になるだろうから。
建国の動きはもう大詰めに向かっている。そのためには、こっちの役者に対して布石を打つ必要があった。
「そう大げさな話でもない。ただ、取引をしたいだけだ」
犬獣人族の建国に向けての交渉に向かった私の言葉に、ギルド上層部のチャールズさんは食いついて来た。
「取引…?」
すっとぼけた顔つきで彼は首をかしげる。本当に大した狸だ…私はさらに畳み掛けた。
「『犬獣人の国』を『国』として認める条件だ」
「いや、だから建国するため君たちには行ってもらってるのでは? それに、認めるも認めないもないだろう? 国を運営するために、いちいちエルダードの了承もいらないだろうし。そこを理解出来ていないと…」
そこから先の答えを、私は遮った。
「表向きはな。この際だから言わせてもらうが、犬獣人の国を認めるつもりがないと見受けられたのでな」
チャールズさんは黙った。やはりか…このリアクションだと、認めたようなものだ。
「気づいていたのか…」
ややあって、彼は呻き声をあげる。
「君たちを派遣したのは失敗だったな。それで? 要求は?」
悪びれない態度で彼は、運ばれて来た香茶を一口啜る。
「冒険都市エルダードと犬獣人の国との友好条約と不可侵条約を締結してもらう。国の運営について一方的に指図をすることも事実上の属国にすることもなく…な?」
「ほう?」
「それともう一つ。犬獣人たちの国に外敵が攻め込んで来た場合、エルダードが無条件で救援を保証するという契約もだ」
彼はテーブルを叩きつつ立ち上がった。
「馬鹿な! 依頼もなく動けというのか?」
私は静かに頷いた。
「今現在、闇ギルドが動き始めている。建国に対する妨害工作を幾度か仕掛けられた上に、交戦もした。結果十人ほど捕虜もいるし、ある程度の情報も取れた。目下のところ、犬獣人の国に救援を送るという事は、闇ギルドの撲滅につながる可能性が高い…こちらに利がない訳でもないだろう?」
闇ギルドの存在は上層部にも知られていないと同時に、頭痛の種でもある。冒険者を名乗って悪事を働く闇ギルドは不戴天の敵だが、決定的に情報が足りない。
「…そういうことか…」
呻きながら彼は再び座り込む。
彼の目的及び建国に対する利害は分からない。だが、ギルド評議会員としての矜持も大いに持ち合わせている。
そこを信用した上での、今回の策でもあった。
そして仕上げの策はもうすぐ発動することになるのだ。
そっちはアーチたちの働きにかかっていた。
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