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mission 1 俺たち、観光大使じゃない冒険者!
タイマン上等!
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side-ラスファ 5
そこから先は、やはり脇道が多かった。先行するアーシェのペットが細かい罠を外していくが、どうも連中は気づいていないらしい。罠を張れば張るほど、こっちにとっての道案内になっているということに。
「なんつーか、ラクだな。こっちはただ歩くだけかよ?」
「いいじゃないの、アーちん。魔物もみんな退治してくれてるし」
アーシェの言う通り、こっちの道には魔物の死体がゴロゴロしていた。確かにこの数の魔物を相手になんてしていられないだろう。
しかし妙だ。この魔物の死体は、どれも小さめで深い刀傷に加えて激しく炭化するほど焼かれたような痕跡があるのが引っかかる。ここから先に行ったのは暗殺者と精霊使いらしいが…。ということはデュエルが行った鉄格子の先にも誰かがいるということになる。そうでなければここの死体にはもっと大きな刀傷が刻み付けられているはずなのだから。さらにさっきの鉄格子は、あまりにもタイミングが良すぎる。
「兄貴? なに魔物の死体なんかまじまじ見てんの?」
アーシェの声で我に帰った。いつの間にか足が止まってしまっていたようだ。いや、そんなことより…。
「誘い込まれているということか…アーチ、敵はこっちを分断した上で各個撃破を狙っているぞ!」
ここに入った時からの、全てが罠だったのだ。デュエルが行った通路の先にもう一人戦士が潜んでいたに違いない。それも、帝国本国に報告が行っているのならデュエルと同等かそれ以上に腕が立つ者が。そして、こっちの二人にも各個撃破のための手練れがおくりこまれているはず。
「ってことは…この先にも同じような待ち伏せがいるてことかよ?」
アーチの軽口に、私は無言で頷く。だからこそ、この少数精鋭で乗り込んできたということだ。そして本命は四人目のフードで正体を隠した人物!
出し抜けに拍手が鳴り響いた。全員が通路の先に向き直ると、そこには先日アーチが相手をしたはずの色黒暗殺者もどきと気取った金髪男が並んでいた。パン屋の店員から聞いた特徴と一致する。
「まさか見破られるとはね…君、なかなかの切れ者だよ。良かったら帝国に来ないかい? キミほどの者なら、帝国は歓迎するよ」
金髪の方が、すかした口調で一歩前に出る。
「そして、皇帝のために血をよこせとでもいうつもりか? 冗談が下手だな、貴様」
私の答えに、金髪は睨みつけてくる。気のせいか、あたりに熱気が立ち込める。やはりこいつの相手は、私がすることになりそうだ。まあいい、どうもこういう奴は生理的に受け付けない。
「そいつには俺も煙幕の借りがあるが…それ以上に、そこの金髪野郎とはケリをつけなきゃならねぇ!」
暗殺者もどきのご指名は、まっすぐアーチに向いている。
「なんだ、お使い失敗の八つ当たりか? 悪ィが、残念賞のアメ玉は持ち合わせがねぇんだよな」
アーチの露骨な挑発に、暗殺者もどきの顔色がさらにどす黒く変わった。その隙に私はラドフォード卿に小さく耳打ちをする。おそらく奴は子供の姿を取っているラドフォード卿を見くびって、いつでも殺せると侮っているはず。だからこそ、狙いを三人に絞って資格を送り込んできているのだから。
「今のうちに、先に進んでくれ。連中の狙いは、私とアーチだ。あとで必ず合流する」
『しかし、それこそ各個撃破を狙っている奴らの思う壺なのでは?』
「問題ない。アーチはともかく、私の相手にあの程度のやつを送り込んで来るとは…随分と舐められたものだ。後悔させてやるさ」
そこにアーシェが口を挟んだ。
「ちょっと、兄貴…デュエルにも釘刺されてるでしょ? あまり羽目外さないでよ?」
「…信用ないな」
「師匠、ラスファさん…ご武運を!」
さっきの会話が尾を引いているのか、最後まで心配そうではあったが信頼してくれているらしいラグの一言を残して足音は遠ざかっていく。ほのかに灯った明かりは、アーシェの明かりの魔法だろう。思った通り連中は、彼らの存在を歯牙にもかけていない。ただ黙って見送ると、連中は私とアーチに向き直った。
「くくく、足手まといのお子様は逃したか」
「まあな。これで舞台は整ったか?」
アーチは不敵な笑みで、暗殺者もどきの視線を真正面から受け止める。
「まだだな。貴様らに連携を取られると厄介だ。それぞれサシでやらせてもらうぜ!」
暗殺者もどきの合図でいきなり、金髪は足元に強烈な熱波を放った! さっきから黙っていたと思ったら、これを準備していたか! 足元に入るヒビに、とっさに飛びのく。
「この下にはもう一つ、階層があるんだよ。キミにぴったりの舞台さ。可愛い僕の恋人をいじめてくれた礼をさせてもらうよ!」
こいつ、あの悪趣味魔女の…? そういうことか。ならあえて、その招待を受けよう。崩れる瓦礫を避けて、アーチはどこかに走り去った。これで舞台は整ったということか。
私は降り注ぐ瓦礫を避けながら、すぐ下にあった階層に降り立つ。これでそれぞれ本当にサシか…異存もない。精霊魔法の使い手同士、決着をつけようか!
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そこから先は、やはり脇道が多かった。先行するアーシェのペットが細かい罠を外していくが、どうも連中は気づいていないらしい。罠を張れば張るほど、こっちにとっての道案内になっているということに。
「なんつーか、ラクだな。こっちはただ歩くだけかよ?」
「いいじゃないの、アーちん。魔物もみんな退治してくれてるし」
アーシェの言う通り、こっちの道には魔物の死体がゴロゴロしていた。確かにこの数の魔物を相手になんてしていられないだろう。
しかし妙だ。この魔物の死体は、どれも小さめで深い刀傷に加えて激しく炭化するほど焼かれたような痕跡があるのが引っかかる。ここから先に行ったのは暗殺者と精霊使いらしいが…。ということはデュエルが行った鉄格子の先にも誰かがいるということになる。そうでなければここの死体にはもっと大きな刀傷が刻み付けられているはずなのだから。さらにさっきの鉄格子は、あまりにもタイミングが良すぎる。
「兄貴? なに魔物の死体なんかまじまじ見てんの?」
アーシェの声で我に帰った。いつの間にか足が止まってしまっていたようだ。いや、そんなことより…。
「誘い込まれているということか…アーチ、敵はこっちを分断した上で各個撃破を狙っているぞ!」
ここに入った時からの、全てが罠だったのだ。デュエルが行った通路の先にもう一人戦士が潜んでいたに違いない。それも、帝国本国に報告が行っているのならデュエルと同等かそれ以上に腕が立つ者が。そして、こっちの二人にも各個撃破のための手練れがおくりこまれているはず。
「ってことは…この先にも同じような待ち伏せがいるてことかよ?」
アーチの軽口に、私は無言で頷く。だからこそ、この少数精鋭で乗り込んできたということだ。そして本命は四人目のフードで正体を隠した人物!
出し抜けに拍手が鳴り響いた。全員が通路の先に向き直ると、そこには先日アーチが相手をしたはずの色黒暗殺者もどきと気取った金髪男が並んでいた。パン屋の店員から聞いた特徴と一致する。
「まさか見破られるとはね…君、なかなかの切れ者だよ。良かったら帝国に来ないかい? キミほどの者なら、帝国は歓迎するよ」
金髪の方が、すかした口調で一歩前に出る。
「そして、皇帝のために血をよこせとでもいうつもりか? 冗談が下手だな、貴様」
私の答えに、金髪は睨みつけてくる。気のせいか、あたりに熱気が立ち込める。やはりこいつの相手は、私がすることになりそうだ。まあいい、どうもこういう奴は生理的に受け付けない。
「そいつには俺も煙幕の借りがあるが…それ以上に、そこの金髪野郎とはケリをつけなきゃならねぇ!」
暗殺者もどきのご指名は、まっすぐアーチに向いている。
「なんだ、お使い失敗の八つ当たりか? 悪ィが、残念賞のアメ玉は持ち合わせがねぇんだよな」
アーチの露骨な挑発に、暗殺者もどきの顔色がさらにどす黒く変わった。その隙に私はラドフォード卿に小さく耳打ちをする。おそらく奴は子供の姿を取っているラドフォード卿を見くびって、いつでも殺せると侮っているはず。だからこそ、狙いを三人に絞って資格を送り込んできているのだから。
「今のうちに、先に進んでくれ。連中の狙いは、私とアーチだ。あとで必ず合流する」
『しかし、それこそ各個撃破を狙っている奴らの思う壺なのでは?』
「問題ない。アーチはともかく、私の相手にあの程度のやつを送り込んで来るとは…随分と舐められたものだ。後悔させてやるさ」
そこにアーシェが口を挟んだ。
「ちょっと、兄貴…デュエルにも釘刺されてるでしょ? あまり羽目外さないでよ?」
「…信用ないな」
「師匠、ラスファさん…ご武運を!」
さっきの会話が尾を引いているのか、最後まで心配そうではあったが信頼してくれているらしいラグの一言を残して足音は遠ざかっていく。ほのかに灯った明かりは、アーシェの明かりの魔法だろう。思った通り連中は、彼らの存在を歯牙にもかけていない。ただ黙って見送ると、連中は私とアーチに向き直った。
「くくく、足手まといのお子様は逃したか」
「まあな。これで舞台は整ったか?」
アーチは不敵な笑みで、暗殺者もどきの視線を真正面から受け止める。
「まだだな。貴様らに連携を取られると厄介だ。それぞれサシでやらせてもらうぜ!」
暗殺者もどきの合図でいきなり、金髪は足元に強烈な熱波を放った! さっきから黙っていたと思ったら、これを準備していたか! 足元に入るヒビに、とっさに飛びのく。
「この下にはもう一つ、階層があるんだよ。キミにぴったりの舞台さ。可愛い僕の恋人をいじめてくれた礼をさせてもらうよ!」
こいつ、あの悪趣味魔女の…? そういうことか。ならあえて、その招待を受けよう。崩れる瓦礫を避けて、アーチはどこかに走り去った。これで舞台は整ったということか。
私は降り注ぐ瓦礫を避けながら、すぐ下にあった階層に降り立つ。これでそれぞれ本当にサシか…異存もない。精霊魔法の使い手同士、決着をつけようか!
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