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mission 2 孤高の花嫁
意外なところにイベントの弊害!
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Side-デュエル 1
俺たちが拠点としている街にほど近い宿場町は、あまりありがたくない人波でごった返していた。
それもそうだろう。
昨夜の土砂降りの大雨が原因で、目的とする街を目前にしながら増水した川に行く手を阻まれているのだから。先を急ぐ人たちの中には、無理をして濁流を泳いで渡ろうとしたために地元の衛士に捕まったという冗談めいた話が後を絶たない。
見上げれば重苦しい鉛色の雲が緞帳よろしく垂れ込め、視線を下げれば荒れ狂う泥色の濁流が轟音をあげていた。俺は幾度見たかもしれない渡し小屋の張り紙を再び眺める。
『天候不順につき、渡し船は運行見合わせ中。
再開まで、しばらくお待ちください』
何度見たところで、一度貼られた張り紙の内容が変わるわけもない。俺はため息を押し殺すと、ぬかるんだ水たまりを踏みながら渡し小屋に背を向け歩きだした。宿に入るめども立たないまま、乾ききらない服がやけに冷たく感じる。
俺はデュエル。かつては傭兵稼業で身を立てる一族の出身だったのだが…思うところあって現在は転職し、エルダードに居を移している。
元傭兵というのは伊達ではない。恵まれすぎたごつい体格は、たいてい初対面の人からはビビられるのが常だ。子供の集団と向き合えば高確率で巨人呼ばわりされ、体によじ登って来られるのにももう慣れた。短い黒髪と同色の目、そして傭兵時代についた鼻先の一本傷がトレードマークだ。
俺たちは少し前にあった、大掛かりな観光大使イベントの手伝いをさせられていた。ぶっちゃけ、イベント帰りの観光客をいっぱいに詰め込んだ馬車の護衛に駆り出されたのだ。自警団組織がその業務を行うのが常ではあるが、慢性的な人手不足で冒険者からの助っ人に頼るところも大きい。興奮冷めやらない観光客を送り出すのは大変で、普段の自警団の苦労がしのばれた…。なんせ旅の恥はかき捨てとばかりに、大いに絡んでくるのだから堪らない。特に、見るからに鎧姿の俺は標的になりやすかった。
そしてその帰り道、大雨に見舞われてしまった。なんとかやり過ごして最寄りの宿場町へとたどり着いたものの…最後の川を渡る直前で、多くの人々と同じく増水した川に足止めを食らってしまったのだ。周辺には、同じように足止めを食らった商人や旅人の落胆の表情が並んでいる。ついさっきも俺は、納期に間に合わないと渡し守に食ってかかる商人を止めたところだ。
ちなみに一般人の多いこの街では、俺の体格と冒険者丸出しの鎧姿は非常に目立つ。人混みの間から頭一つ分はゆうに飛び出すガタイは、仲間たちの格好の目印と化していた。
「その様子だと、そっちも無駄足だったようだな」
雑踏に紛れて背後から書けられた声に、俺は溜め込んでいたため息で答える。
「ああ。中央通りはどこも満室だそうだ。あれだけのイベントの後じゃ、人が多いのも仕方ないか…」
振り返った先には、長い銀髪を後ろで結んだ細身の青年が立っていた。彼の名はラスファエル・バリニーズ。仲間内からはラスファと呼ばれている。
実は稀少種族として知られるエルフ族の出身で、見た目の歳の頃はハタチ前後といったところだが、実年齢は百五十才以上というから驚きだ。本来は滅多に人里に出て来ない閉鎖的な種族であることから、エルダードでも見るのが珍しい種族と言われている。気の毒なことに…おかげで一度見つかった日には、観光客の集団にもみくちゃにされるという罰ゲームのような日常が彼を襲った。今では特徴的な細長い耳をバンダナに隠してなんとかやり過ごしているようだ。目立つのが嫌いな性格のため正体を隠してはいるが、実は俺とは別の意味で目立つ存在ではある。というのも、エルフ族は男女ともに容姿端麗ということでも知られている。彼もその例外ではなく、今も多くの人が振り返って見とれているのだが当人には全くといっていいほど自覚がないあたり、残念というか損な性分というか…。
もう一雨きそうな重い空を見上げ、俺たちはため息をついた。残りのメンバーと、無事合流できるんだろうか?
俺たちが拠点としている街にほど近い宿場町は、あまりありがたくない人波でごった返していた。
それもそうだろう。
昨夜の土砂降りの大雨が原因で、目的とする街を目前にしながら増水した川に行く手を阻まれているのだから。先を急ぐ人たちの中には、無理をして濁流を泳いで渡ろうとしたために地元の衛士に捕まったという冗談めいた話が後を絶たない。
見上げれば重苦しい鉛色の雲が緞帳よろしく垂れ込め、視線を下げれば荒れ狂う泥色の濁流が轟音をあげていた。俺は幾度見たかもしれない渡し小屋の張り紙を再び眺める。
『天候不順につき、渡し船は運行見合わせ中。
再開まで、しばらくお待ちください』
何度見たところで、一度貼られた張り紙の内容が変わるわけもない。俺はため息を押し殺すと、ぬかるんだ水たまりを踏みながら渡し小屋に背を向け歩きだした。宿に入るめども立たないまま、乾ききらない服がやけに冷たく感じる。
俺はデュエル。かつては傭兵稼業で身を立てる一族の出身だったのだが…思うところあって現在は転職し、エルダードに居を移している。
元傭兵というのは伊達ではない。恵まれすぎたごつい体格は、たいてい初対面の人からはビビられるのが常だ。子供の集団と向き合えば高確率で巨人呼ばわりされ、体によじ登って来られるのにももう慣れた。短い黒髪と同色の目、そして傭兵時代についた鼻先の一本傷がトレードマークだ。
俺たちは少し前にあった、大掛かりな観光大使イベントの手伝いをさせられていた。ぶっちゃけ、イベント帰りの観光客をいっぱいに詰め込んだ馬車の護衛に駆り出されたのだ。自警団組織がその業務を行うのが常ではあるが、慢性的な人手不足で冒険者からの助っ人に頼るところも大きい。興奮冷めやらない観光客を送り出すのは大変で、普段の自警団の苦労がしのばれた…。なんせ旅の恥はかき捨てとばかりに、大いに絡んでくるのだから堪らない。特に、見るからに鎧姿の俺は標的になりやすかった。
そしてその帰り道、大雨に見舞われてしまった。なんとかやり過ごして最寄りの宿場町へとたどり着いたものの…最後の川を渡る直前で、多くの人々と同じく増水した川に足止めを食らってしまったのだ。周辺には、同じように足止めを食らった商人や旅人の落胆の表情が並んでいる。ついさっきも俺は、納期に間に合わないと渡し守に食ってかかる商人を止めたところだ。
ちなみに一般人の多いこの街では、俺の体格と冒険者丸出しの鎧姿は非常に目立つ。人混みの間から頭一つ分はゆうに飛び出すガタイは、仲間たちの格好の目印と化していた。
「その様子だと、そっちも無駄足だったようだな」
雑踏に紛れて背後から書けられた声に、俺は溜め込んでいたため息で答える。
「ああ。中央通りはどこも満室だそうだ。あれだけのイベントの後じゃ、人が多いのも仕方ないか…」
振り返った先には、長い銀髪を後ろで結んだ細身の青年が立っていた。彼の名はラスファエル・バリニーズ。仲間内からはラスファと呼ばれている。
実は稀少種族として知られるエルフ族の出身で、見た目の歳の頃はハタチ前後といったところだが、実年齢は百五十才以上というから驚きだ。本来は滅多に人里に出て来ない閉鎖的な種族であることから、エルダードでも見るのが珍しい種族と言われている。気の毒なことに…おかげで一度見つかった日には、観光客の集団にもみくちゃにされるという罰ゲームのような日常が彼を襲った。今では特徴的な細長い耳をバンダナに隠してなんとかやり過ごしているようだ。目立つのが嫌いな性格のため正体を隠してはいるが、実は俺とは別の意味で目立つ存在ではある。というのも、エルフ族は男女ともに容姿端麗ということでも知られている。彼もその例外ではなく、今も多くの人が振り返って見とれているのだが当人には全くといっていいほど自覚がないあたり、残念というか損な性分というか…。
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