古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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mission 2 孤高の花嫁

街中の魔境、発見…

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Side-デュエル 2

 いつ降ってもおかしくない空模様の下で、俺たちは他のメンバーと合流しようと移動を始めた。アーシェとラグは、確かラスファとともに行動していたはずだったんだが…? 尋ねると、いかにも女子が好みそうなファンシーな雑貨屋を見つけて入っていってしまったんだそうだ。
「合流するときは適当に呼んでくれといって逃げられた。困ったやつだよな…」
 彼のそのぼやきに俺は苦笑した。それでも結局許してしまうあたり、彼も案外甘い。とりあえず俺たちは、当の雑貨屋に向かうことにした。

 この人混みでわざわざ別行動したのは、宿を探すため。俺が中央通り、ラスファは上流地区、そしてアーチは下流地区に宿を探しにいっていたのだが、状況は芳しくない。観光大使のイベントの残り火は、まだくすぶっているのだろう。

「今さら言っても仕方ないが、ギルドもよくまあ、余計なものを作ってくれたものだ…」
「まあ、それについては全力で同意だな。フランシスの奴にとっては、この上ない幸運だろうけどな。生涯の天職を手に入れたわけだし」
「言うな…虚しくなるから」
 俺たちの言う『余計な物』とは、冒険者ギルドが半分冗談で作った観光ガイドブックのことだ。シャレで作ったはずのそれは、あっという間に世界に広がってうっかりと大当たりしてしまった。旅行案内の問い合わせが殺到したその事態に逆に焦ったのは、発行元のエルダード冒険者ギルド。今さら引っ込みがつかなくなったのか、評議会はそのまま開き直り…危険に満ちた冒険都市をイベントも見所も盛り沢山な観光都市に大改造してしまったのだ。
 本来は巨大な遺跡群の中に住み込みで調査していた研究者と、彼らを守る冒険者たちから始まったはずのエルダード。かつての謎と危険に満ちた遺跡都市は、もはや見る影もない。かくて、冒険都市エルダードに連日連夜観光客が押し寄せる、騒がしい日々が始まったのだった。

 こめかみを抑えつつ、ぼんやりと俺が見上げた先には近辺の領主のものらしい城がぽっかりと影になって浮かび上がっている。まず俺たちと関わることのない世界だ。
 まあ、ここらで話を戻そう。

「上流にも空いてる宿屋はなかったんだな?」
 話題を戻した俺に、ラスファは同意する。
「ああ、数件当たったんだがどうにも…。中には私一人なら泊めてやるという申し出もあったが、野宿慣れしていない妹たちを泊めてやってくれと言ったら叩き出された」
 「…いや、お前それ…」
 こいつ逆ナンされたことにも気づいてないな、この分じゃ。ほんと残念なシスコンだ。
「あとは下流地区に行ったアーチか。どこまで行ったんだかな?」
 「なに、最初から期待してないさ。どうせその辺で、女でも追い回してるに決まってる」
 身もふたもないラスファの言い草に、それでも俺は反論する材料を持たなかった。十分あり得ることだ。

 そこまで話した俺たちの前に、当の雑貨屋が現れた。
「こっ…コレは…」
「入る勇気、あるか?」
 嫌そうにラスファが示した先には、全体にパステルカラーの店構えで入口に人参抱えたウサギの巨大なぬいぐるみが鎮座ましました魔境だった。花を飾った窓辺には、ピンクのレースカーテンが揺れている。
「入り辛いな」
「ああ。しかも隣がいかつい武器屋だから、余計にな」
 俺はファンシーショップなるところに入る機会なんぞ、生涯ないと思っていた。入りたいとも思わなかったが。男の立場からすれば、この上ない敷居の高さにおののく。
「すまん、アーシェたちが勝手に入って行った時点で追いかけづらくてな…」
「ああ、なるほど」
 うなだれるラスファ。ぶっちゃけ、追うに追えなかったと言うわけか。

 だが、この場合入らないわけにいかないじゃないか…仕方ない。男二人、敷居が高い魔境に足を踏み入れる覚悟を決めた。
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